第19話『光りましたねぇ。』
第19話『光りましたねぇ。』
次の授業の日、机の上には見覚えのある箱が置かれていた。
リリナは椅子に座ると、まだ何も言われていないのに箱へ目を向けた。
「覚えていましたか?」
「もちろんです」
イスターニャが蓋を開ける。
中には七つの石が並んでいた。
「今日は約束どおり、リリナ様の適性を調べましょう」
「お願いします」
少し楽しみにしていた。
自分にも母やイスターニャのように、何か使える魔法があるのだろうか。
「前にもお話ししましたが、適性がある石に触れると反応します」
「なければ何も起きないんですよね」
「ええ。その通りです」
イスターニャが一つ目の石を取り出した。
「まずは火です」
リリナは石へ手を置いた。
しばらく待ってみる。
けれど、何も変わらない。
「何も起きませんね」
「火の適性はないようですね」
次は水だった。
同じように触れてみるものの、こちらも静かなままだ。
「水もですか」
「そうですね」
三つ目は土。
これにも変化はない。
四つ目の風へ触れても、やはり何も起きなかった。
「また何もありませんねぇ」
思わず口からこぼれる。
楽しみにしていた分だけ、少しくらいは残念だった。
「まだ三つありますよ」
「そうでした」
イスターニャが次の石を手に取る。
「次は光です」
リリナの目が石へ向いた。
「先生と同じですね」
「ええ」
差し出された石へ、そっと手を置く。
その瞬間、石の内側に淡い光が灯った。
「……あ」
これまでとは違う。
何の変化もなかった石が、今は確かに光っている。
「光りました」
「ええ」
リリナは驚いて手を離した。
すると光は消える。
「消えました」
「もう一度触れてみてください」
言われた通りに、もう一度手を置く。
淡い光が戻った。
「本当に私が触ると光るんですねぇ」
何度見ても不思議だった。
イスターニャは石の様子を確かめてから、リリナを見る。
「リリナ様には光魔法の適性がありますね」
「光魔法……」
前に見せてもらった、イスターニャの手のひらの光を思い出す。
「先生と同じ魔法を使えるんですか?」
「同じ系統の魔法を学ぶことはできます」
「学ぶことは?」
「適性が分かっただけですからね」
「ああ」
すぐに使えるわけではない。
それは前にも聞いたことだった。
「まだ二つ残っていますよ」
「忘れるところでした」
光る石ばかり見ていた。
次は強化。
リリナが触れても何も起きない。
最後の召喚も同じだった。
「これで全部です」
机の上には七つの石が並んでいる。
反応したのは光だけだった。
「私は光だけなんですね」
「そうですね」
リリナは光の石を見つめる。
「お母様の強化は使えないんですねぇ」
「適性がありませんからね」
「先生の光は使えるかもしれない」
「きちんと覚えれば、ですね」
やはり簡単にはいかないらしい。
けれど、それでがっかりする気はなかった。
歩くことも、話すことも、この身体では一つずつ覚えてきた。
魔法だけ何もしないで使える方が不思議なのかもしれない。
「先生」
「はい」
「私にも教えてもらえますか?」
イスターニャは少しだけ目を細めた。
「光魔法をですか?」
「はい。せっかく使えるかもしれないなら、やってみたいです」
「分かりました」
それだけだった。
大げさに喜ばれることも、何かを勧められることもない。
「ただし、最初からあの光が出せるとは思わないでくださいね」
「そんなに簡単じゃないんですか?」
「簡単なら、教える必要がありませんから」
「それもそうですねぇ」
リリナはもう一度、光の石へ触れた。
淡い光が指の下に灯る。
今はまだ、石を光らせることしかできない。
自分の手のひらに光を浮かべる方法も知らない。
(私にも使えるようになるんですかねぇ)
リリナは小さく光る石を眺めながら、次に教わることを楽しみにした。




