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婚約破棄された社畜令嬢、追放先の村でのんびり善行通販していたら、人狼の最強執事に溺愛されて捨てた国は自滅しました  作者: 月神世一


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EP 7

PV爆発! 届き続ける恩恵と、裏ギルドからの密書

ポポロ村の広場は、朝から魔導保冷コンテナの搬出入で活気づいていた。

「オリヒメ様! 南のルナミス帝国との国境にある『貧困地帯スラム』の診療所から、感謝の魔導通信が入りました!」

村のギルド窓口で働く若い職員が、興奮した様子で私に報告書を手渡してくれた。

「これまでは高価すぎて手に入らなかった新鮮な『陽薬草(疲労回復・解熱作用のあるハーブ)』が、ポポロ村のコールドチェーン網のおかげで、安価で大量に届くようになったと! おかげで、流行り病で苦しんでいた子供たちが何十人も助かったそうです!」

「まあ……! それは本当に良かったです」

私は報告書を受け取り、胸の奥が温かくなるのを感じた。

私がゼロスの『兵糧攻め(買い占め)』に対抗するために導入した魔導コールドチェーンは、単なる「村の利益」を超え、これまで物流の限界で苦しんでいた広域の人々の命を救い始めていたのだ。

前世では、どれだけ残業しても「会社の売上」という無機質な数字に変わるだけだった。でも今は、私が考えたインフラが、誰かの笑顔や命に直接繋がっている。

『ピロリンッ!』

その時、私の胸ポケットで『エンジェルすまーとふぉん』がけたたましい通知音を鳴らした。

慌てて画面を開くと、女神カグヤからのダイレクトメッセージだった。

『【超絶速報】オリヒメちゃん! 貴女が作ったコールドチェーンが周辺の村々を救ったことで、ゴッドチューブのPVが歴史的爆発を起こしてますわーっ!!』

画面には、カグヤがペンライトを何十本も束ねて振り回し、「オリヒメちゃん最高! これぞ本当の勇者ヒロイン!」と叫んでいる動画が添付されている。

『ワイズの三流ざまぁ配信なんて完全に息してませんわ! この莫大なPV還元ポイント、全部オリヒメちゃんの口座にブチ込みますから、さらに村を良くしちゃってくださいませ!』

「すごい……ポイントの上限が、また桁違いに跳ね上がってる」

私が画面の数字を見て絶句していると、背後からリバロンがそっと覗き込んできた。

「……神をも狂喜させる、貴女の無自覚な『善行の連鎖』。貴女はただ、村を守るために次の一手を打っただけなのに、結果として数え切れない人々を救済してしまうのですね」

リバロンは感嘆の息を漏らし、私の肩にふわりと手を置いた。

「あの成金勇者が、金で人を支配し、他者を蹴落とすことでしか自分の価値を証明できないのとは対極にあります。貴女は、誰をも傷つけず、ただ『善きこと』を成すだけで、全ての盤面を支配していく」

彼の手のひらから伝わる熱と、耳元で囁かれる甘い声に、私はまたしても心臓をドキンと跳ねさせた。

「り、リバロンさん……そんなに褒めないでください。私はただ、できることをやっただけで……」

「いいえ、もっと褒めさせてください。貴女のその美しい魂を、私はこの先一生、誰よりも近くで賛美し続けると決めたのですから」

(また……っ! 最近、本当にストレートすぎる……!)

私が顔を真っ赤にして俯いていると、「ちょっとオリヒメ! リバロン! またイチャついてる場合じゃないよ!」と、キャルルが血相を変えて村長室に飛び込んできた。

「キャルル、どうしたの?」

「ルナミス帝国の裏ギルドの元締め、ゴメスって奴から、ポポロ村宛てに『密書』が届いたんだよ! 超特急便で!」

キャルルが乱暴に机に叩きつけたのは、禍々しい黒い封蝋が押された羊皮紙だった。

「裏ギルドの元締め……? なぜ、そんな人物からポポロ村に?」

私が怪訝に思いながら封を切ると、中には簡潔な、しかし衝撃的な内容が記されていた。

『ポポロ村の責任者、オリヒメ殿へ。

貴村の素晴らしい物流システムに、深い敬意を表します。

さて、貴村を脅かしている「勇者ゼロス」という男について、有益な情報を提供いたします。

あの男の資金源は、ワイズの裏口座からの【不正な横領(借金)】です。

彼は先日、当方の酒場にて、自らの口でこの事実をペラペラと自白いたしました。

この情報をどのように使おうと、貴女の自由です。

――追伸:当ギルドは、ゼロスのような空虚な偽善者よりも、貴女のような確実に利益システムを生み出す天才と、良好な関係を築きたいと望んでおります』

手紙を読み終えた瞬間、村長室に静かな衝撃が走った。

「……なるほど。あの男が湯水のように使っていた金は、自らの『マネー』のスキルが生み出したものではなく、神の裏口座から勝手に引き出したものだったと」

リバロンが冷ややかな声で手紙の内容を反芻する。

「つまり、あのピカピカの鎧も、厚底のブーツも、そして商人たちを札束ビンタで買い占めたあの莫大な資金も、すべて『他人の金(借金)』だったということですね」

「しかも、それを自分でペラペラ自白しちゃったって……。もしかして、あのバカ、どこかで『ずっ友ロコシ』でも食ったんじゃないの?」

キャルルが呆れたようにため息をつく。

(……キャルル、大正解よ。アナステシア世界で嘘がつけなくなる危険食材。間違いないわ)

「オリヒメ様。この情報が全大陸ギルドに知れ渡れば、ゼロスは『勇者』の権威を完全に剥奪されます。さらに、神の口座から横領した借金だけが残り、彼は社会的に完全に破滅するでしょう」

リバロンが黄金の瞳を細め、私を見つめた。

「いかがなさいますか? この情報を、大陸の商業ギルド連合へ通報しますか?」

私は手紙を見つめ、静かに首を横に振った。

「……いいえ。私からは何もしません。私が手を下さなくても、彼は勝手に自滅します」

「ほほう?」

「ゴメスという商人は、裏ギルドの元締めになるほど強かな人物です。彼はこの手紙を私に送ると同時に、すでに大陸中のギルドネットワークに『ゼロスの資金源は嘘だ』という噂を流しているはずです。私が動くまでもなく、彼への信用は今、この瞬間にも音を立てて崩れ去っています」

私は前世の社畜経験から、会社の『信用』がどれほど脆く、一度地に落ちれば二度と復活できないかを知っていた。

「それに、ゼロスは今頃、自分の買い占めた物資が腐り果てたことで、さらなる焦りに駆られているはず。……追い詰められた彼が、最後に取る行動は一つしかありません」

私の予想通り、その日の夕刻。

ポポロ村の平穏を切り裂くように、焦燥と狂気に満ちた叫び声が、村の入り口から響き渡った。

「オリヒメェェェェッ!! 出てこい、このアマァァッ!!」

夕闇の中、分厚いシークレットブーツを泥だらけにし、ピカピカだったはずの聖騎士の鎧を乱したゼロスが、血走った目で私を探して村へと乱入してきたのだ。

「俺の、俺の計画が……! ギルドの連中が、俺の資金源を知って手のひらを返しやがった! あの裏ギルドの親父め、俺を裏切りやがって!!」

ゼロスは狂ったように剣を振り回し、周囲の商人たちを威嚇している。

「……来ましたね」

私は静かに立ち上がり、村長室のドアを開けた。

「オリヒメ様、いけません。今の奴は完全に正気を失っています。私が……」

リバロンが私を制止しようとしたが、私は彼を真っ直ぐに見つめ返した。

「大丈夫です、リバロンさん。私は逃げません。私が作ったこの村の平穏を、あんな偽善者の足掻きで壊させるわけにはいきませんから」

私は毅然とした足取りで、広場へと向かった。

偽善勇者の薄っぺらい仮面が剥がれ落ち、彼がその「見下した因果」によって借金地獄へと転落する、完全なる自滅ざまぁの最終幕が、いよいよ開こうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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