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“味がしない”と捨てられた私、吸血鬼王に餌付けされてクイーンになりました  作者: 絹ごし春雨


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8話 私のために作れ

 沈黙が支配した。


ただ、食器が触れ合う音だけが響く。


しばらくして。


「……なるほど」


その一言で。


胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。


視線を上げるのが、怖い。


でも、逃げるわけにもいかなくて。


ゆっくりと顔を上げる。


リカルドは、もう一口、静かに運んだ。


味わうように。


確かめるみたいに。


「無駄がないな」


ぽつりと、落ちる。


それが、褒め言葉なのか分からない。


「余計なものを足していない」


続く言葉に、息が詰まる。


——薄い、と言われる前と同じだ。


「……すみません」


思わず、口をついて出る。


その瞬間。


手が、止まった。


「なぜ謝る」


静かな声。


けれど、逃げ場がない。


「いえ……その」


うまく言えない。


怖い。


否定される前に、先に認めてしまいたくなる。


「味がしない、と」


かすかに、言葉がこぼれる。


リカルドの動きが、止まる。


ほんの一瞬。


それだけなのに、空気が変わる。


「誰がそう言った」


低く、落ちる声。


やわらかいはずなのに。


ぞくりと、背筋が冷える。


「……昔の、話です」


それ以上は言えなかった。


リカルドは、しばらく何も言わなかった。


もう一口、食べる。


ゆっくりと、噛んで。


それから。


「くだらない」


静かに、言い切る。


「これは完成されている」


はっきりと。


迷いなく。


「君の体には、これが合う」


息が止まる。


そんなふうに言われたことなんて、一度もなかった。


「味が分からないのは、食べる側の問題だ」


淡々とした声で。


けれど、否定の余地もなく。


「選べなかっただけだろう」


その一言で。


過去の食卓が、崩れる。


「いい」


短く、告げる。


「合格だ」


その一言で。


胸の奥が、熱くなる。


泣きそうになるのを、どうにか堪える。


「……はい」


うまく笑えたか分からないまま。


それでも、頷いた。


初めて。


ちゃんと、食べてもらえた気がした。


「君は、正しく作れている」


「次からは、私のために作れ」

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