97話「奉仕活動」
三人は仕方なく、名簿にある百人の魔女の住所を訪ねることにした。
「最初はどうしますか?お二人が選んでください」
「やっぱりここは優しそうな魔女の所に行きたいよな。俺は平穏の魔女トリーヤさんが良いな」
「はは、ケイディにしては良い考えじゃないか。まずはそうしよう」
「あのこれって全部行かなきゃいけないんですから関係ないのでは?」
二人はそう言うことじゃないだろと言いたげな表情でスピリアを見た。スピリアは疑問の表情を浮かべた。
「平穏の魔女トリーヤさん。いらっしゃいますか?奉仕するために参りました!スピリアです!!」
するとドアから出て来たのは髪がボサボサで、明らかに怒っている表情の魔女だった。
「あん?お前らが最近来たガキどもか。私に奉仕はいらん。名前の通り平穏が好きなんだ。平穏を崩しうるお前らなんて邪魔でしかないんだよ!!」
そう言ってバタンとドアを閉められた。するとスピリアは分かりやすく落ち込んでしまった。スピリアは今まで故郷のドーウェンでも、ミロス学園でもいつも褒められてばかりで怒られた事はなかったからだ。
「手間が省けたじゃないか。名簿にチェックをしてくれケイディ。なあ君も落ち込んでないで早く次だ」
「それで良いんでしょうか、私たちはエリセツアを救ってもらう立場なのに、」
「はぁ!?あの魔女は平穏が大事だって言ってたじゃないか。僕たちが何かやってやろうとする方が逆効果なんだよ」
「まあまあ、スピリアさん落ち込まないで。正直百人もいるんだから一人一人にじっくり構ってたらいつまでも終わらない」
しかしスピリアは落ち込んだまま、次の魔女の家へ向かう事にした。ケイディはスピリアに選んでもらう事にして、幸福の魔女マイラの家に行く事にした。
「おーほっほ!貴方たちは奉仕に来てくれたのね!ならばこっちに来て。私を崇める教会があるの。その名もマイラ教よ!信徒はラトルちゃんとレソルちゃんしかいないけど、」
「貴方、、たちも、マイラを崇めますか、?」
「信徒、が、、全部で五人、嬉しい、、な、」
そこには意志の魔女ラトルと自立の魔女レソルもいた。二人も儀式に参加してくれる魔女であり、ケイディとヴィアレンは一気に三人に奉仕できる事に喜んだ。
「わ、私たちはマイラさんを崇めれば良いのですか?」
「そう!!私を信じれば貴方たちを私が救うの!金銭の奉仕とかはいらない、私を信じる事で私が救うの!!」
「スピリアさん、信じましょう!ヴィアレンを見てください。もう手を握って祈ってますよ!!」
「そう、ですね。はい!信じます!!」
スピリアは難しい事を考える事を諦め、ただひたすらに魔女たちが求める事を行う事にした。
そうしてその日は二十人の魔女へ奉仕する事が出来た。夜になって三人は共に食卓でご飯を食べる事にした。
「にしても大魔女はいつ儀式を行うつもりなんだろうな。この国の魔女たちって城以外だと皆んな暇そうにしているし、正直大魔女も考え事ばかりして何もしてなかったよな」
「確かに、私が思うに伝達魔法とやらでジャンヌさんは普段仕事してるんだと思います。だからこそ人と接する時にコミュニケーションを取る事を意識しないのでしょう」
「でもそれにしたって儀式の予定を僕たちに教えてくれないのは変じゃないか?僕たちの奉仕が終われば儀式とやらをやってくれるのか、」
三人は悩んだが、結局食事が終わるまで疑問は消えず、ジャンヌに聞きに行ってもまた追い出されそうなのでとりあえず奉仕活動に専念する事にした。
そして五日間が経ち、百人の名簿全てにチェックがついた。
「新都と旧都に住んでる奴らは楽だったけど、森林地帯に住んでる奴らは遠いし、性格も独特で本当に面倒だったね、」
「紅茶の魔女ティルイさんとか、俺に何度も紅茶を淹れさせて来て疲れたぜ。まあそのおかげで紅茶マスターになれたけどな」
「ケイディさんはまだまだですよ。私でやっと一人前なんですから、ケイディさんはせいぜい紅茶見習いです」
三人は奉仕活動が終わった事を伝えるために城に向かっていた。その過程で魔女たちの愚痴や今までの奉仕活動を共に振り返っていた。
そしていつの間にか距離は縮まり、気兼ねなくよく話す仲になっていた。
「き、貴様ら、もう奉仕活動終わったのか、」
「はい!私たち五日間とっても頑張ったんですよ!」
「それで大魔女。いつ儀式を行なってくれるんだい?僕たちはそろそろ我慢出来ないけど、」
「はあ。儀式ってな、面倒くさいんだよ。この国の、魔女は助け合わなければならないとか言う面倒な法律のせいで私は必ずエリセツアを助けなければならない。でも期間は決められてないし、いつだって構わない!!」
ジャンヌは不貞腐れて机を殴った。しかしそこでケイディが前に出て怒った。
「俺たちは真面目なんですよ!!今の俺たちは余裕そうにしてるけど、本当はエリセツアさんが目覚めてくれない今の状況を我慢してるんです!どうかお願いします!!」
ジャンヌもスピリアもヴィアレンも、思わずケイディを見てその思いの強さに心を動かされた。
「すまない、私は外界の奴らの気持ちを忘れてしまっていた。確かに大事な誰かがいなくなるのは恐ろしいな。分かった、儀式は明日行おう」
三人の表情は明るくなり、互いを見合わせ、喜びを分かち合った。エリセツアが心神喪失状態になってからまだ、一週間と少ししか経っていない。しかしその間の三人は表には出さずとも気が気でいられなかった。
だから三人はやっとエリセツアを救える事でホッとしたり、嬉しくなったりして、ただただ喜んだ。
落ち着くと三人は明日の儀式のために準備をするため大魔女の部屋をあとにすることした。
「にしてもケイディとか言ったか。さっきの発言は貴様がエリセツアに懸想している事が実に分かりやすい発言だったぞ!」
「エリセツアは手強いですよ。恋愛とは無縁みたいな人ですからねー」
「真面目に想ってるんだねケイディ。ははは頑張りなよ!」
「うわああ!!皆んなして俺をからかわないでくれよ!!」
そうしてケイディの想いが露呈してしまった後、儀式が行われる次の日の昼までケイディはからかわれ続けた。それもそのはず、魔女の大半は恋愛話が好きで恋愛とは絶縁している身であっても興味は尽きないのだ。




