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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第6章 魔女の国ゼイノカウン編
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96話「儀式のために」

「私は一回彼と目が合ったわ。あの時の彼の絶望する表情は恐ろしかった。だから男にはもう会いたくないのよ」


 そしてパラキースは魔法を使って逃げ続け、魔女の国に辿り着き、若さを取り戻した事を話した。魔女の国までの道のりは彼女にとってあまり思い出したいものではなかった様であまり詳しくは話さなかった。


「そうだったんですね。でもどうして私にこの話をしたんですか?」


「年寄りになると何でも話したくなるものなのよ」


 スピリアは納得しなかったが、パラキースはふっと笑って話を変えた。


「そう言えば大魔女はまだエリセツアを救う事は出来ないと言っていたのよね。あれは私の力量が足りなかった場合の話なの」


「どう言う事ですか?そのストレス、とかですか?」


「まあそうね。貴方たちのエリセツアに関する記憶によって私がエリセツアの魂を導くから、記憶が鮮明であればあるほどリスクは減るわ。だから貴方たちはエリセツアの話をお互いに共有しなさい」


「分かりました。エリセツアに関する記憶はしっかりイメージ出来るようにすれば良いんですね」


 話は終わり、スピリアはエリセツアを連れてパラキースに感謝し家を出た。そしてマリに言われていた旧都の空き家に三人で向かい、休む事にした。


「二人は何をしてたんですか?結構な時間経っていたと思うんですけど」


「年齢相応の話さ。僕がずっとケイディをからかってたんだ。そうだろケイディ?」


「俺はそう言うのに興味ないんだよ!確かに綺麗な人はたくさんいたけどな、」


 スピリアは察して、ケイディを白い目で見た。ケイディはそれからずっと反論し続けた。

 そして夜が明け、三人はエリセツアを家で休ませ、大魔女のいる城へ向かった。


「それで、お前たちは何しに来たんだ?」


 ジャンヌは椅子にだらっと座り、気怠そうに三人に話しかけた。


「私たちはエリセツアを救うためにどうすればいいんですか?その、エリセツアに関する記憶をイメージ出来るようになればいい事は分かったんですけど、具体的な事が分からなくて」


「あー、まじでちゃんと頭の中にエリセツアとの会話内容を繰り返せば良いだけだ。あとはエリセツアに対する感情をむき出せば良い。『エリセツア戻って来いー!!』ってな」


「本当にそれだけで良いんですか!?昨日まで今の私たちじゃ無理と言ってましたよね!」


「落ち着け。あれは小雨の魔女が不調だった場合だ。連絡を取ったら調子良さそうだったし、何も心配いらん。だから儀式も明後日ぐらいには出来るぞ」


 あまりの緊張感のなさに三人は驚き、こういうものだと納得するのに時間がかかった。

 そしてジャンヌは三人がポカンとしている間、溜まっていた書類の数々を空中に浮く三本の羽ペンで処理していった。それを見ているとスピリアは、


「じ、じゃあエリセツアを目覚めさせる儀式に必要な準備とかって何ですか?手伝わせてください」


「そうだな。儀式はレインガーデ祭壇で行うから、そこで魔法陣を構築するための魔力をあらかじめ祭壇に供給しろ。ちなみに今のお前らの魔力量じゃ十分の一にもならないだろうから、ミスって全魔力を注いだりするなよ?」


「まじかよ!俺って結構魔力多いってエリセツアさんに言われたんだぜ?それでもなのか、」


「そりゃあ、普通の人間が魂抜けしていたならばそこまでの魔力は必要ない。ただエリセツアの魔力量がどれほどのものか知っているのか?」


 三人は固まった。何故なら誰もエリセツアの魔力量の底を見た事が無かったからだ。今までエリセツアは災害級の魔法を使ってもピンピンしていた。普通それは魔力の大量出力により、一瞬で魔力が底をつき、数日眠り込んでもおかしくない程、身体に負担がかかる。

 と言う事はエリセツアは災害級の魔法を使える程の魔力出力を行っても耐えられる程身体が強く、そして身体に宿している魔力量も、災害級の魔法を少なくとも一回発動してもまだ戦える程持っている事が分かる。


「エリセツアさんって実は人間じゃなかったりしないよな?今までエリセツアさんだからって言う理由で片付けて来た事がたくさんあったけど、よくよく考えたらおかしい」


「私も、エリセツアの出身や私と出会う前についてよく分かっていませんでした」


「僕たちはエリセツアを全然知らない。それじゃあ尚更早く起こして話を聞かなきゃだね」


「よし、それじゃあレインガーデ祭壇へ向かえ。場所に関しては言わずもがなだな。あのデカい建物だ」


 そして三人は決心し、魔女の国のレインガーデ祭壇へと向かった。魔女の国を象徴するレインガーデ祭壇は六本の柱と大きな扉からなる大規模な魔法を行うための場所で、魔女の国のどこにいても見える程大きいため、魔女たちが

 本来レインガーデ祭壇は毎年、魔女の国の結界を維持するために魔女が集まり、ここで魔力を送る。それぐらいしか使い道はないが、逆にそれがなければこの千年以上、魔物に囲まれた魔女の国が維持出来なかったはずだ。


「近くで見ると、凄いですね。俺、今まで見てきた建物の中で一番大きいですよ、」


「私もです。と言うか大陸でこれより大きい建物なんてあるんですか?」


「確か儀式に必要な魔力量はエリセツアの魔力量を上回らないといけないんだったよね。これなら間違いなくエリセツアの魔力量を超えても受け入れられそうだね」


 三人は魔力を注入した。六本の柱が徐々に光り出していき、魔力が溜まっている事を表していた。

 しかし数分で三人とも膝をついてしまった。


「ほんとにこの祭壇に必要な魔力はどれだけなんですか!正直三分の一ぐらいは三人で貯められると思ってたのに!!私悔しいです」


「まあ仕方ないさ。この国は根本的に僕らが育って来た国々とは文明レベルや魔法に対する技術力が違う」


「まさに魔女の国だな。魔女が暮らすために魔女に必要なものが揃っていて、俺たちみたいな一般人には合わない」


 三人は落胆して、空き家へ帰った。そしてそれから考えを改め、儀式を行なってくれる魔女たちのために奉仕する事にした。

 次の日、城へ向かいジャンヌへ自分たちの意思を伝えるとニヤニヤしながら、儀式に協力してくれる魔女たちの住所を唱えて行った。


「合計で百人ですか、キリが良い人数ではありますが、その方々全員のために奉仕と言うのはちょっと、難しいと言うか、」


「僕がはっきり言おう。面倒くさい!無理だ!!」


 しかしジャンヌは機嫌を損ねて、黙って三人を城から追い出した。

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