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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第6章 魔女の国ゼイノカウン編
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92話「神聖ミロス学園の校長」

「師匠!エリセツアは大丈夫なんですか!!」


「久しぶりだなスピリア。心配する事はない。あいつなら治すあてがあるだろうからな」


 ホークはグランバスに信頼の眼差しを向けた。普段はほとんど瞳を閉じているグランバス校長も瞼を上げ、頷いた。


「まずは中に入りたまえ。長旅疲れたじゃろう。特にそっちの少年たちは、」


 エリセツアを背負ったホークと、グランバスは重要な話があるからと、三人を置いて校長室に行ってしまった。

 そしてその間、校内を自由に歩き回って良いと言われたヴィアレンとケイディは黙って歩み始めた。そんな神妙な二人を見兼ねたスピリアは話しかけた。


「お二人はエリセツアと旅をしてるんですか?と言うか貴方、確かヴィアレンさんですよね。私のこと覚えてますか?」


「ああ。一級試験の時に合格した同期だ」


「何だか丸くなりましたね。そちらの方は名前、教えていただきますか?」


「俺はケイディです。あなたの事はエリセツアさんからたくさん聞いてます。よろしくお願いしますスピリアさん」


 スピリアはケイディを見ると、何を思ったのか、顔をまじまじと見始めた。ケイディは自分の臭いが気になるのかもしれないと離れたが、スピリアが考えていた事はそんな事ではなかった。


「ケイディさんでしたっけ?仮面を付けてる事は分かってます!本当の素顔を見せてください」


「そう言えばそうだ。ケイディは自分が生きている事をキャラミャンで隠すためにマスクを被ってたんだからもう必要ないんじゃないかい?」


「そうだな。でも恥ずかしいな、」


 スピリアはケイディを警戒していたため、ケイディが外さないといけない空気になってしまい、仕方なく仮面を外した。その姿はもはや元のケイディをよく見ていなかったヴィアレンにとっては、初めてと言っても過言ではなかったからヴィアレンは目を見開いていた。


「物凄い違和感だ。と言うかマスクって髪型まで変わってたんだね」


「これからはこれが本当の俺、ケイディだ。何だか久しぶりだぜ。じゃあ改めてヴィアレンとスピリアさん、よろしく」


「こちらこそよろしくお願いします」


 三人が親睦を深めている頃、グランバスとホークは眠るエリセツアを見ながら話し合っていた。


「こんな形で会うとは思っていなかったが、互いに全く違う身分になっていて、驚いた。十年振りか?」


「そうだ十年だ。と言うか君は口調まで変わってるじゃないか、ホーク。僕は元気にしていたが、そっちは?」


「私は一級冒険者って言う楽な身分で生きてるさ。と言うか今は楽しく話す時間じゃないだろ?グランバス校長」


「そうだな、、まずはエリセツアがこうなった経緯について教えてくれるか?」


 ホークはキャラミャンでのペルヴェリンとの抗争を詳しく話した。そしてその時にエリセツアが「色彩幻現」と言う力を使った後、そうなった事を伝えた。


「そう言えばエリセツアがこうなるのは二度目だが、前回の治し方ならば君に出来ない、何故自分なら救えると言ったんだ?」


「そう書かなきゃこんな遠くまで来てくれないだろ?僕はこんな身分だから下手に動けないし、せいぜい高速で手紙を君たちに届けるぐらいしか出来なかったんだ」


「確かにな。それでどうする、、アリエとヴィオラを探すか?」


 エリセツアの母アリエ。今は友人であり、エリセツアの幼馴染の親、ヴィオラと旅をしている。そして以前、エリセツアがこの状態になったのを救ったのだ。


「それは難しいだろう。この大陸にいるのならまだしも、あの二人は根っからの自由人。遠いどこかを旅しているに決まってる。探すのは不可能だ」


 ホークはそう聞くと、苛立ちを覚えた。自分たちの子どもを旅に出させるのはホーク自身も同じ立場だが、いざと言う時に一緒にいられないのは違う。


「エリセツアが心神喪失状態なんだぞ!?あいつらに責任感と言うものはないのか!」


「落ち着いてくれ。彼女たちを庇う訳じゃないが、今回はエリセツアにも責任がある。だから僕には良い案があるんだ」


 グランバスがその案を話すとホークは黙るしかなかった。自分たち親は基本的に子どもの望む事に介入しないのが、五家で決めたホークたち親としてのルールであり、そうするしかなかったからだ。

 そして忙しいホークは仕方なくまた旅に出た。そしてグランバスはスピリアたちを集めて言った。


「君たちにはエリセツアを救うために魔女の国へ行ってもらいたいんじゃ。儂は身体がもう下手に動かせんし、ホークさんも忙しいからのぉ。スピリアも同行してくれるか?」


「爺さん、まず魔女の国って何だい?僕はそんな場所聞いたことないんだけど」


「言葉の通り、魔女しかいない国じゃ。シローナ大陸の西にある魔界の国の一つじゃがな」


「魔界ですか!あそこって人は住めないはずです。魔物や特殊な種族しか生きられない地だと本に書いてありました」


 魔界とは大陸の西方の事を言い、それ以外のポリスイナやシャレットは現界と呼ばれる地域に存在する。魔界は人間では開拓出来ないと判断され、別の世界だと定義されているのだ。

 スピリアは驚き、ヴィアレンとケイディはそもそも大陸の国がどの様に構成されているのか知らないのでポカンとしていた。


「なぁに。実際は人間じゃ手出し出来ない程の魔物が蔓延っているだけじゃ。それに魔女の国は結界に守られておるからな」


「でもそもそも何故そんな遠く離れた地に行かなければならないのですか?エリセツアはどうやって連れて行くんですか?」


「スピリア落ち着きなさい、安心しろ。じきに分かる。すぐに行く事が出来る様に同行者がいるんじゃからな」


「スピリアさんたち、私が一緒に行くの。この図書館の司書であるマリは魔女の国から来たの」


 図書館司書マリ。彼女の正体は魔女の国から派遣された魔女だった。エリセツアは学園にいた頃、よく一緒に図書館で話していた。


「よし。今から出発じゃ。若人諸君、エリセツアを頼んだぞ」


「い、今からですか!?待って下さい、準備しなくちゃ」


 スピリアは急いで準備をした。ヴィアレンとケイディも覚悟を決めて、新たなる冒険に足を踏み入れるため、互いに励まし合った。


「グランバス校長、安全確認は出来ました」


 ヴィアレン、ケイディ、スピリア、マリの四人は転送魔法の魔法陣の上に立った。距離は今までエリセツアが旅した場所より更に遠い魔女の国。負担も大きいため、グランバスは覚悟を決めて魔力を込めた。

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