91話「ミロスまでの旅路」
ヴィアレンたち一行は、魔力で飛ぶ箒を買い、急いでポリスイナのフーラにある港へ向かっていた。そこの船に乗ってダリナーへ行き、そこから列車でミロスへ向かう。つまりエリセツアの旅を遡っているのだ。
飛ぶ箒は大陸の規則で、一本につき一人しか乗れないのでホークの緻密な魔力操作でエリセツアを箒の上に乗せて、まるでエリセツア自身が操作しているようにして飛んだ。もちろん魔力の消費は激しいので、ヴィアレンとケイディがホークに魔力を供給した。
そしてキャラミャンを出て次の日の夜、ヴィアレンたちはフーラの港に着いた。
「二人ともよく頑張ったな。今日はホテルで休むとしよう」
「うぅ、ヴィアレン、お前はしんどくないのか?魔力消費で俺今にも吐きそうなんだが、」
「魔力をほとんど使い切って歩くのはだるいけど吐きそうにはならない。それは箒で酔ったからだケイディ」
そしてその夜、ヴィアレンとケイディはベッドで横になった。しかし疲れているのにも関わらず、色々ありすぎて中々寝付けずにいた。
「ケイディは幼馴染の四人がいただろ?別れる時はなんて言ったんだい?」
「俺は一応死んだ扱いだったんだぜ?もうとっくに決別した。そう言うヴィアレンはどうなんだ?」
「僕は正直誰とも仲良くしてたつもりなんてなかったんだけどね。意外にも関わった奴らは多かったから僕に挨拶しに来たさ」
「ほんと俺たちってエリセツアさんが現れてから色々変わりすぎたよな。まるで物語に巻き込まれたみたいだぜ」
そうして二人はここ数日の様々な出来事を思い出すうちに、眠りに落ちていた。
次の日の朝、始発の船に乗るためにヴィアレンとケイディは早起きして支度を終わらせた。
「あの人はどこに行ったんだい、まさか寝坊か?さすがにそんな訳ないよな、」
「ホークさんは調停人に選ばれるほどの人だぜ?何かあったに違いない、」
そして二人はホークとエリセツアがいる部屋に急いで向かった。すると中でバタンと何かが倒れる音が聞こえた。
「大丈夫ですか!ホークさん!」
「あ、すまない、寝坊した」
ホークは寝ぼけた状態で、エリセツアをベッドに座らせ、服を着替えさせていた。しかし着替えさせたまでは良かったもののエリセツアには意識がないのでバランスを崩してベッドから落ちてしまったのだ。
「いや本当に驚いた。あの調停人に選ばれるほどの一級冒険者ホークがまさかここまで朝が弱いとは、」
「それよりエリセツアさん倒れてますよ!」
「うん、頭を打ったが治療魔法を使えば大丈夫だ」
「そう言う問題じゃないでしょ!」
そして三人は朝から騒がしく、緊張感はほぐれたが船には乗り遅れてしまった。
何やかんやで船に乗る事が出来たは良いが、問題はまだ残っていた。
「こうして私がエリセツアをおんぶしている訳だが、何と言うか、恥ずかしくないか?」
「まぁエリセツアはそんな事気にしないだろうし、いいんじゃないか?僕はそんな事よりケイディがあんな状態になってる方が気になるんだけど、」
海を見る事自体が初めてだったケイディははしゃぎながら海を見ていた。しかし、十分もすれば海を見る目にハイライトがなくなっていた。ケイディはまた酔っていた。
「この船って半日かかるんでしたよね、その間ずっと気持ち悪いままなんですか、、」
「では昼食にするか。そうすれば酔いも多少良くなるだろう」
ホークたちはレストランへ向かった。三人は席に座り、エリセツアもホークが座らせて上げた。しかしそこでケイディはある疑問を持った。
「エリセツアさんって意識不明になってから何か食べてるんですか?見た所別に何も変化なさそうですけど、水も飲んでなかったですよね、」
「確かに僕も思っていた。身体は生きてるからエネルギーは使ってるはずなのに、おかしいな」
「何を言ってる?エリセツアは食事をする必要がないからに決まっているだろ」
真面目な顔でそう言ったホークに対して、二人は意味不明だと言わんばかりの表情を浮かべた。
「私やエリセツアの様な魔女は大気中から魔力を身体に循環させている。だから別に食事をしなくても死にはしないんだ」
「でもエリセツアさんやホークさんはしっかり食事はしてますよね?あれって意味はないんですか」
「別に腹は減るさ。魔力も無限じゃないから普段は普通の人間と同じ様に飯によって身体のエネルギーを作ってるんだ。だから何もそんな極論の話をしている訳じゃないんだ」
「ところでさ、ホークは何者なんだい?エリセツアに関してもまだまだ理解出来ない部分が多いけど、君もおかしい」
ヴィアレンはホークがエリセツアを昔から知っていたと言う話は何となく聞いた。しかしエリセツアは見た目よりも多くの時間を生きている、と言う事はその秘密についてや、今朝の様に、昔はエリセツアを雑に扱える関係性の訳を聞けると思ったのだ。
「別に私の正体を教えてやっても良い。それ相応の対価は必要だがな」
「例えば?」
「エリセツアと離れ離れにならない事だ」
「どう言う意味だ、僕たちはエリセツアから離れようなんて思った事はないはずだが?」
しかしヴィアレンは気づいた。エリセツアの最初の旅の仲間は足手纏いとなって別れ、次の仲間は使命を見つけたから別れた。つまり意図的でなくとも自然に離れなければならなくなってしまう可能性もあるのだ。
「俺は絶対離れません!借りだってあるし、大事な仲間です。どこまでも着いて行きますよ。ヴィアレンもそうだろ?」
「まあ、そうだね。僕も素直にならなくちゃ行けない様だ。ルグニカの命令でエリセツアと旅をすると言う大義名分がなくとも僕はエリセツアたちと旅がしたい。だから離れないさ」
ホークは笑みを浮かべ、話す事にした。自分の本当の身分について。
「私の本名はラフテーユ。エリセツアの幼馴染の母だ。そして私とエリセツアはシローナ大陸に属さない外からやって来た人間なんだ」
シローナ大陸の外。今までティアダイン空国を中心とする先進的な国々が大陸の外を目指したが、毎回龍に阻まれ、失敗に終わった。つまりエリセツアとラフテーユは誰もが未知としてきた所からやって来た異邦人だったのだ。
それからケイディたちは話を聞き、それを受け入れ、一行はとうとう神聖ミロス学園に着いた。昼間なので学園は授業が行われている最中だった。
エリセツアをおぶったホークと、何となく緊張感があるケイディとヴィアレンが列車から出て来ると、そこには髭を生やした白髪のグランバス校長と、青色の髪に黄色の瞳の少女が待っていた。




