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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第5章 シャレット砂国編
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89話「エリセツアの難敵」

 一般人や建物、魔法に対する耐性を持っていなかったり強い意志がない者は石となり、安全が保障される結界。

 つまりこの都市の中で動けるのはペルヴェリンの幹部、そしてホークが結界に認識させなかった人間だけだ。


「我々幹部以外は石になっているな、しかしあの魔法使いは魔力をほとんど使い切ったはずだ。つまり敵はギルドの中にいる奴らとあの魔女だけだ」


「エリセツア、私もある程度は戦えるが期待するな。まあ心配は無用だがな」


 するとギルドの大きな扉が開き、戦闘態勢の仲間たちが私の後ろに現れた。そこには神槍を持つライト、黒鎌を持つガムレを始めとする、夜明けの蒼鷹や雷鳴烈火隊の探索者パーティやヴィアレン、ケイディ、ギルド長までもがいた。

 そしてセンファだけは特に殺気立っていた。


「フリス、スヒテ、そんな人は私のパーティにいなかったのに。まさか貴方たちの組織の方だったとはね」


 そう、雷鳴烈火隊のフリス、スヒテが探索者の中に紛れ込んだ内通者だった。見事に探索者ギルドの全員を騙したフリス、スヒテ、ヌヤは昨日捕縛された。しかしそのせいで仲間を大事に思うセンファは混乱し、自分を騙したペルヴェリンに深い怒りを向けた。


「魔女に気をつけろ、相手は十二人だ、人数で負けているが私たちの方が個人としての実力は勝っている」


 ペルヴェリンの幹部たちはマーロスを疑っていた。何故なら各国の秘匿されて来た歴史にしかない夢煙邪術や影の力、使役したワームで探索者たちを妨害して来た実績で余裕があり、様々な魔道具で自身の身体を強化して、普段の数倍強くなっているのにも関わらず、勝てる気がしていなかったからだ。


「俺は序列低いからあのガキの魔法使いとヴィアレンを担当しよう」


「テラ、貴様と言うやつは!まあ良い。では俺があの魔女を相手しよう。マーロスが一瞬でやられたと聞いた時は驚いたが、俺は魔法使いなんぞに負けん」


「ダーヒ、決して驕るなよ」


 しかし幹部の中の数人は相手の雰囲気を気にしなかった。序列二十六位のテラは以前、エリセツアとヴィアレンとケイディを魔道具に閉じ込めた張本人だ。そして序列七位でありエリセツアを相手しようとするガタイの良いダーヒと呼ばれた戦士はオーラを放っている。


「行くぞ!探索者の意地を見せろ!!」


 ホークの合図と共に一斉に探索者たちは飛び出した。エリセツアはダーヒに氷魔法を放ち、遠くへ飛ばした。


「俺が割ることの出来ないほどの密度の氷、流石今まで組織と敵対して来ただけはある」


 エリセツアは箒の上に立ち、速度を上げダーヒに雷魔法を放った。


「雷魔法『ストロングボルト』」


「ははは!!この程度か!俺に魔法は効かん」


「魔法への耐性が高いな。かと言って物理攻撃への耐性も高い。負けはしないが勝つのも難しいな」


 ダーヒは地面を蹴って空中のエリセツアに飛びかかった。しかしエリセツアは軽々と避け、淡々と詠唱を唱えて行った。もちろんダーヒには目眩し程度にしかならず絶えず襲いかかってきた。


「呪いの主を讃え、力を借りる『鈍化』」


「ぐっ、体が少々重くなったな。しかし関係ない、貴様俺が殴ることしか能がないと思っているだろう」


 するとダーヒはそれまで自身をオーラで保護していたが、そのオーラを手に集め私に向かって放った。


「は、速!」


 私は咄嗟に影の力を使い、地面の影に隠れた。幸い避けることは出来たが、また手の内を晒してしまった。魔法も呪いもあまり効かないと言うことは聖なる力を使うべきだが、この大陸でその三つも使える者はおそらく私だけでありそれが知られれば今よりも面倒に巻き込まれる。


「ははは!マーロスは所詮油断しただけだったなまるで逃げるネズミだな!!」


「勘違いするな。私はお前にビビっているんじゃない。勝つ方法を考えているんだ」


 私は悩んだ。その気になればこの男を殺すことなど容易であり、その方法はいくらでもあるが代償があり、使う気になれない。


「あー、そうだ。別にお前をホークさんたちから引き離したんだから災害級魔法も使えるんだった」


 威力はその名の通り、災害級。モナレンでの失敗が若干記憶に残っていていつも躊躇ってしまうが、今は関係がない。


「災害級水炎魔法「熱湯砲」」


 私は魔力で構成した大量の水に熱を加え、ダーヒに到達するまでの速度を重視した。並大抵の魔物ならば身体がくだける程の威力だろう。


「はあああ!!!!!」


 ダーヒは私の魔法を受け止めた。若干押されてはいたが受け切ったのだ。私はまた悩んだ。戦いから意識を遠ざけ、代償を出さずに自分が出せる最高の攻撃を考えた。

 そして先程のホークの戦う魔法使いにはとっておきがあると言う発言を思い出した。魔法使いには得意な属性魔法があり、ホークの場合は一般魔法がとっておきとなる。では私はどうか?属性魔法は全て同じ水準で一般魔法は戦闘に応用出来るほどのものを知らない。


「そう言えば私の魔法使いとしての取り柄は魔力が多いと言うことだったな」


 魔法使いにとって魔力が多いことは確かに良いことだ。しかし出力はその者の実力次第なのでケイディの様に魔力を多く余らせてしまっては戦闘でのアドバンテージは少ない。つまり私の魔法の出力を上げれば良いのだ。


「これこそが私の魔法だ」


 ダーヒは直感した。今目の前に現れたとてつもないエネルギーの前では自分はちっぽけな存在なのだと。エリセツアのその魔法は、もはや詠唱によるイメージ構築も必要なくただ純粋な魔力の塊をぶつけるだけだった。


「これは正真正銘俺の負けだな!」


 ダーヒは正面から受けた。もちろん無傷でいられるわけないが、拳をぶつけたのだ。腕の骨はボキボキに折れ青くなり、ダーヒは白目を剥いて気絶した。おそらくもう戦える身体には戻れないだろう。しかし私は気にせず、去った。

 その頃、ホークたちは作戦通り戦うことが出来たおかげでペルヴェリンの幹部たちは必死の表情を浮かべていた。


「皆んな!おそらくペルヴェリンは自爆する術を持っている。制圧しても油断するな!」


 ホークの呼びかけにヴィアレンとケイディは緊張した。何故ならもう「魔道の詳人」テラを戦闘不能にしていたからだ。


「なるほど、ペルヴェリンはこのままでは負けてしまう様だな」


「そうだね。僕はペルヴェリンから抜けて正解だったよ。こんな敗北ばかりの組織に価値なんてない」

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