87話「覇王ディゼルコライ」
「俺は、ガノール、ディゼルコライの意志と共にある者。そうか、覇王の戦利品と言うのはそう言うことだったか」
「ガムレくん?リーダーの私に黙って行動したかと思えば何を言っているのだね?温厚な私も怒ってしまいそう!」
「リーダー、そんなことどうだっていいぜ、とにかく皆んな聞いてくれ。どっかの神槍を手に入れた野郎は気づかなかったみたいだが、覇王の戦利品の正体を理解した」
「つまり、歴史書では語られていなかったことも知ってるんですか!」
ガムレは頷くと、語り始めた。それはまるで自分が経験した様な話し方だった。やはり黒鎌の記憶を自分の記憶に重ねられたのだろう。
かつて、黒鎌ガノールはガノールと言う戦士が使うだけのただの鎌だった。もちろんただの鎌と言っても貴重な鉱石をふんだんに使われて鋳造された、一級品だ。そしてその鎌を扱う戦士ガノールは、覇王ディゼルコライの忠実な臣下だった。覇王ディゼルコライに従う臣下の中でも特に信頼された五人の者には、特別な武器が贈られた。
「閃光の槍術士ニングには神槍、清白の剣士ソラムには神剣、純潔の弓士セイラには神弓、愛情の剣士ユスラには黒剣、そして豪傑の大鎌術士ガノールに贈られたのが黒鎌と言うわけだ」
「なるほど歴史書では最初から意志を持つ武器たちと言われていたがやはり実際はただの武器とそれを扱う戦士だったのか、」
「覇王ディゼルコライ、私はそもそも存在すら疑っていましてね、歴史書では大陸を統治したとか何だとか、どうなんですかガムレくん」
ガムレは大きく息を吸って、落ち着いてから話し始めた。
まず覇王ディゼルコライは最強だった。立ちはだかる多くの魔物や、あくどい人間たちを全て蹴散らす正に覇道、そしてそれに感化された者たちは多くやがて大陸のほとんどを掌握した。そして誰しもが彼を崇め、尊敬した。
しかし、所詮彼も人であった。強力な力を持ちすぎた故に神に目をつけられたのだ。
「俗世に干渉出来ない存在とエルフたちは言っていたが、とうとう俺様の存在を見て見ぬふりは出来なくなった様だな!」
「貴方の傲慢さは、多くの者を幸せにしましたが、その分滅ぼされてしまった者は更に多い。貴方にこの世界は狭すぎた様ですね」
「神はそんなくだらないことを喋る様な人間臭いやつだ。おい見ているか臣下諸君!神に抗う我は覇王ディゼルコライ!!俺について来い!!」
その声は遥か遠くの山を越えて臣下たちを励ました。もちろん誰も勝てるとは思っていなかった。しかし誰も臆さなかった。
覇王と臣下たちは満足していたのだ。大陸を統治する偉業を成し遂げた覇王自身も、それについて来た者も十分やり切ったと確信したからだ。
「と言うわけで覇王から特別な武器を賜った者以外の覇王含める勢力の人間は滅ぼされた。文明ごとな?」
「神が降臨、普通信じられるかどうかと言われたら到底信じられないですね。でもガムレくん、君は私と長いことパーティを組んできた。貴方を信じてあげましょう!」
「私も信じますよガムレさん。と言うか結局何故覇王の戦利品たちはこうして意志を持つことになったんですか?」
「分からないけれど、魂が武器に宿る様になっていたんだろう。そもそも二黒三神の素材と言うのも今の文明では扱えるものでもなさそうだしね」
そして私たちはギルドへ戻ることにした。ちなみに黒剣は動きを見せなかったからそのまま私が担いだ。おそらく契約するのに相応しい者がいなかったのだろう。なのでとりあえず黒剣はギルドに預けることにした。
「それではエリセツアさん!私たちは先にギルドへ報告しに参ります!!どうかお気をつけて」
そして私たちのパーティは歩いて迷宮の昇降機を目指した。実際今日は歩いて話を聞いただけで魔物を倒していなかったから、ケイディとヴィアレンに特訓の成果を見せてもらうことにした。
ケイディはさっき聞いた話が衝撃的すぎて若干集中力が切れていたが、魔物をヴィアレンと連携して難なく倒すことが出来ていた。
「あれ、やっぱりおかしいよな。こんなとこにワームなんて出るはずないし、そもそもこんなサイズのワームが出ていたらギルドが何かしら言うはずなのにな」
「そう言えばケイディと出会う前、七層に行った時もワームが大量発生してたよね?これって明らかに何かおかしいんじゃないかい」
「でもワームで助かりましたよ。ワームは魔法使いにとって相性が良いですからね。それにヴィアレンはワームが苦手なので気持ち悪そうにしてて気分が良いです」
そんな話をしながら迷宮を出ると、私たちは覇王ディゼルコライについての話を思い出して話し合った。
「エリセツアさん、正直俺にはよく分かりません。覇王って数千年以上前の人間ですよね。今日のことって神話が現実になったみたいで、、」
「僕もさ。しかしペルヴェリンではそれらは全て事実として扱っていたし疑いはしなかったさ」
「まあ信じるのは難しいだろうね。私は今までそう言う経験して来たし、別に疑う程じゃないな!」
「それはエリセツアが神みたいな強さしているからだろ、」
私は苦笑いをした。それはもちろん実際神の眷属であり神とも会話をしたことがあるから。でもまさか神が俗世に降臨したことがあったとは思わなかった。
降臨したら文明が滅ぼされると言うことはミロス学園の歴史書で読んだが、実際滅ぼされたのが覇王の時代の文明だったなんて。歴史書では度重なる魔物の襲来で破滅したとあったからポリスイナのイージェスは私に隠していたんだな。確か神についての研究は禁忌とされていたからその影響もあるのだろうが。
「ギルド長、センファから話は聞いてますよね。この布に隠してあるのが黒剣です」
「あ、ああ。まさか覇王の戦利品が二つも見つかるだなんて驚きだ、ただな、ギルドはちょいとしたことで、見ての通り大騒ぎだ」
「覇王の戦利品が二つも見つかったのに更に大騒ぎする様なことなんてあるんですか、?」
「これは完全に私たちギルドの失態だが、その、、ペルヴェリンの幹部が脱走した」
私はそう聞いた瞬間、深呼吸をした。予想はしていたことだ。ペルヴェリンと言う組織は予測不可能でヴィアレンでさえ知らない情報ばかりだから、逃げられることがあるかもしれないと、
「話を聞かせてください」




