86話「二つの黒」
エリセツアは呆れた目でヴィアレンを見た。ヴィアレンは一級冒険者で、ケイディもしっかり強くなってきている。それなのにヴィアレンは私を頼ろうとしているのは単純に面倒だからだ。
「別に十一層より下の油断出来ない区域に行こうとは行ってないのに、まあいいや。九層で宝箱探しをしよう。あそこは宮殿があって気に入ってるんだよね」
「ではこうしませんか?今日は俺とヴィアレンに戦闘を任せてください。俺たちの成長を見て欲しいです」
「え、面倒くさい、」
「良いね!そうしよう!」
そして私たちは九層にやって来た。九層は代理調停人の時に来た事があり、木々がところどころに生え、少し地形が盛り上がった場所に宮殿がそびえたっている常に曇り空の階層だ。
しかし油断は出来ない。敵は様々な生き物が骨となったアンデッドであり、厄介なのが出現するタイミングが分からないこと。
「エリセツアさん。戦闘を任せて欲しいとは言いましたけどもしもの時は助けてくださいね、」
「やれやれだ、僕たちが特訓した成果を見せるどころか弱気になるなんて、それに足元を見てごらん?」
ケイディが足元を見ると、足に手の骨が巻き付いていた。地面からアンデッドが襲い掛かろうとしているのだ。
「は、え、ちょっと!!俺どうすりゃ良いんだ!」
「魔法でどうにかすれば良いんじゃないの?私だったらそうするけど、、」
「何言ってんですか!!それじゃ俺まで魔法食らいますって!!ヴィアレン!おい、エリセツアさん助けて!」
するとどんどんケイディは骨の手に引っ張られていった。ケイディはエリセツアと同じぐらい非力であり、自分の力じゃどうしようもなかったのだ。
「俺埋まるって!!おいヴィアレン!エリセツア!!助けろよおい!死んだら恨むからな!!」
「僕はやだよ。こんな得体の知れない骨、気持ち悪い、」
「ぷははははは!焦りすぎだってケイディ。ぷっ、ははは!ちょっと、面白すぎて、」
エリセツアは杖を構えたが、ツボに入ってしまい上手く狙いが定められず、魔法を放てなかった。
最終的にヴィアレンが仕方なく骨の手を引き離して、ケイディは死にかけた顔をしていた。
「久しぶりに死を実感しましたよ、」
「普通に笑えないことになっていたのに、よくもそこまで笑うことが出来、、っ!」
ヴィアレンは咄嗟に顔を隠したが、どうやらさっきのケイディの様子を思い出して笑ってしまった様だ。
辺りにいるいくつかの探索者たちは怪訝な目で私たちを見つめていたが私たちは全く気にしなかった。
「おやおやおや?エリセツアさんじゃあないですか?私のこと、覚えてますぅ?」
「あ、確か雷鳴烈火隊のセンファだったよね」
「良かったですぅ。覚えていただいて実に光栄。この私こそが迷宮で三番目か四番目には実績を持っているパーティ雷電烈火隊のリーダー!センファでございます」
「ケイディと言います!俺センファさんには憧れてたんです。握手してください!」
代理調停人をしていた時、雷鳴烈火隊と他国の一級冒険者が争っていて、その時に私が調停を行ったのだ。その結果仕掛けたのは一級冒険者の方だと分かり迷宮への立ち入り禁止が言い渡された。ちなみに発言はしなかったものの、ギルドの会議にも参加していた。
そしてその調停の時の事でセンファにはとても感謝され、友人となったのだ。
「ほほほ。エリセツアさんの仲間は実に優秀な目を持っている。そちらのフードの少年も強そうですよ!」
「はぁ?僕は君みたいな変なやつに評価されたくないんだけど、」
「な!?エリセツアさん、彼はホントーにあなたの仲間なのですか?」
「実はそうなんだよね、ヴィアレンは別に悪いやつではないんだけど、コミュニケーションが下手だから、」
ヴィアレンはセンファの明るすぎる性格が苦手な様だ。しかし彼女は責任感が強く、盗賊の様な服を着ているのは、いざと言う時に仲間を守れる様に動きやすくしているからだ。
「リーダー、、速すぎだって。仲間の俺たちを置いてかないでくれよ、」
「おうガムレとフリスとスヒテも来ましたね。ほら、自己紹介をしなさい!」
「分かった、分かった。俺はガムレだ。エリセツアさん、また会ったな」
そしてフリスとスヒテも挨拶を済ませて私たちはしばらく行動を共にすることにした。ケイディがさっき、アンデッドの骨に捕まったのもあってケイディが勝手に一緒に行動したいと懇願したのだ。
共に歩き始めて二時間が経った頃、ぽつぽつと生えていた木ではなく、一本一本が大きくて太い区域に入っていた。そこには木に擬態する魔物がいたが、雷鳴烈火隊と私たちの戦力の前では相手にならなかった。
「エリセツアさん。あそこに何か落ちてませんか?剣みたいな何か、いや剣だ。それも真っ黒の剣です」
ケイディの発言に雷鳴烈火隊と私とヴィアレンは足を止め、思わず強く反応した。そう、覇王の戦利品の一つ、黒剣かもしれなかったからだ。
ケイディの様な普通の探索者たちはあくまで覇王の戦利品とまでしか情報を持っておらず、それが二つの漆黒の武器と三つの神々しい武器だとは分からないのだ。
「センファ。あっちに黒鎌も落ちている。一旦冷静になって考えよう」
「分かってますぜ、エリセツアさん。明らかに何者かの罠、しかし覇王の戦利品たちは意思を持つと聞きました。ここで寝ているだけなんじゃあ、」
「雷鳴烈火隊の皆、一旦聞いてくれ。私たちはそこまで覇王の戦利品に執着していない。しかし明らかにあれは罠だ。そこで私が近づいて確認しに行こう」
「いいや別に信じてない訳じゃないが、俺も確認してみたい。と言うかあの鎌を見てると引き寄せられるんだ、」
ガムレはそう言うと、段々と近づいて行った。ガムレは探索者の中で個人としては人気が高く、頭も良い。そして何より強い。槍使いとしてオーラを習得し、実力はウミオチやライトにも引けを取らないだろう。
「大丈夫ガムレさん?」
「危険な感じはない。ただ繋がりを感じるんだあの鎌に。まるで俺自身があそこにいるような、」
エリセツアは察した、これは運命だ。神槍がライトを選んだ様に、意志を持つ二つが引き寄せられる。黒鎌とガムレは共に契約を望んでいるのだ。
そしてガムレが黒鎌の目の前に立つと黒鎌がそれに答える様に空中に浮き、ガムレの脳内に記憶を送った。そしてガムレは黒鎌を掴み、口を開いた。




