85話「調停人の仕事」
「それでこっちの兄さんは誰だい?」
「俺はケイディと言います。今はエリセツアさんと一緒に迷宮にもぐらさせてもらってるんですよ」
「魔力が多いな。スピリアと同じくらいか、そう言えばスピリアはどこに行ったんだ?」
「それについては長くなります、」
私はモナレンでスピリアと出会ってからモナレンを旅し、ダリナーで一級試験を受けて神聖ミロス学園に入学した話をした。そしてそのミロスで事件によってスピリアが死にかけたから、ミロスに残り修行をすることにしたことを伝えた。
「ははは、そうかそうか。あの子は強くなっていたが、自惚れているところがあったからな。まぁ死んでいなくて一安心だ」
それからスピリアの話で盛り上がった後、私たちは宿は戻り、久しぶりにベッドで眠った。
そして朝が来ると、ギルドから招集があった。どうやらペルヴェリンから迷宮の治安を守るための対策会議が行われるらしい。そこにはギルド長や調停人のホーク、黄金級の探索者パーティのリーダーたちが集まっていた。
「集まってくれてありがとう。特にエリセツア、あんたはこの一週間本当によく頑張ってくれたよ」
「まぁ、大変でしたからね、それで私は一週間の出来事を報告すれば良いんですか?」
「そうだね。大体は把握してるはずだが、あんたから見たペルヴェリンについて聞きたい」
そして私はペルヴェリンの幹部が少なくとも三人は来ていて、一人は逃がしてしまっていることを伝え、ペルヴェリンの脅威がどれほどの物か伝えた。
「最近、頭角を現して来たペルヴェリンはおそらく二十八人の幹部がいて、その内三人は現在ギルドが捕縛しています。一人一人が部隊を持っていて、どれくらいの規模の組織なのかは見当もつきません」
「確かドーウェン騎士団の話によると一国の組織よりも勢力はデカいとか言っていたな。本当にそんな組織が存在しているのか、私が大陸を旅している限り聞いたことないぞ」
ホークは疑っていた。確かに私も信じられないがペルヴェリンは今まで神が危険視するほどのことをやってきた事実は確かにある。神聖ミロス学園の襲撃や剣術大会でのルグニカ暗殺未遂。
どれも私がいたから防げているが、私がいなかったら防げなかっただろう。
「しかしおかしいと思わないか?君たちを魔道具に閉じ込めたり、ドーウェン騎士団を襲撃したりしたそうじゃないか。話を聞く限り計画的なものとしか思えない」
「ペルヴェリンとか言うやつらについて一つ情報を持っている。これは共有すべきだと思ったからな」
手を挙げてそう言ったのは、今までテキトーな様子だった夜明けの蒼鷹のノイルだった。
「俺たちは迷宮十一層でペルヴェリンを見たことがある」
「はぁ!?お前というやつは、どうして重要なことを先に言わないんだ!」
ギルド長はノイルに向かってキレた。探索者パーティのリーダーたちは驚いていなかったのを見る限り、日常だったのだろう。
「まぁ正直あんまり気にしてなかったからな、あれは迷宮で俺たちが覇王の戦利品に出会ってからほんの数日だった。それで普通なら迷宮の十一層にはあまり探索者はいないだろ?それに組織的だったから気になって十八層に進む途中でコッソリ話を聞いてたんだ。すると近い内に覇王の戦利品を手に入れるために幹部が十人派遣されるって聞いたんだ。それが何のことなのかはよく分からなかったが、今考えたらペルヴェリンのことだったって話だ」
「幹部が十人、、一人でも一国を騒がせる事件を起こすやつらがそこまでするのか、」
「よしギルド長。もう解散して構わない。一旦私とギルド長、そしてエリセツアとノイルに話したいことがある」
ギルド長は何となく察して、集まった探索者を早々と解散させた。エリセツアは何故このメンバーが集められたのかまだ理解していなかった。
「ホークさん。それでどうしたんです?私たちにしか言えないことなんでしょう?」
「エリセツアさんやギルド長はまだしも俺はあんたと関わりはないはずだが、」
「単刀直入に言おう。この迷宮ギルドと言う組織の中に内通者が複数いる」
「え!?」
私だけが驚いていた。どうやらノイルは自分が呼ばれたことを疑問に思っていたのではなく、何故自分が内通者ではないことをホークが確信していたのか疑問に思っていたらしい。ギルド長も何となくそう言うことなのだろうと察していたから表情を変えることはなかった。
「コホン、それで内通者は分かるんですけど複数と言うのはどう言うことなんです?」
「まず組織内に登録されている組織だったドーウェン騎士団と探索者の君たちの位置が露呈していたことから何者かが情報を流したことは分かるだろう。迷宮のどの階層に潜るのかはギルドに予め言っておく必要があり、その情報はギルドが管理しているからな。それで複数と言ったのは、情報を手にする者と伝える者がいるからだ」
「そうか、いくら何でも情報を手に入れられるギルドの職員と探索者が同一人物だったら、すぐバレてしまうからか」
「そしてペルヴェリンは迷宮に正面から忍び込めないから移動魔法、もしくは迷宮に穴を空けている。しかしそのどちらも短時間で行えないし、今やったとしてもすぐにバレる。と言うことはペルヴェリンは常に迷宮内に潜んでいる。そして食料を届ける者もいるはずだ」
それから様々な情報を共有し、これからの迷宮について話し合った。実は一ヶ月前、迷宮が不安定化したことからその時にペルヴェリンが迷宮に穴を空け、忍び込んでいたと推測されること。そして内通者は赤銅級以上の者と受付、もしくは管理職の者が内通者だと言うこと。
ホークはとても優秀だった。このシャレットと言う治安の良くない国でありながら、調停人として選ばれただけのことはある。彼女の立てた緻密な作戦はこの覇王の戦利品騒動を終わらせることが出来ると私は期待した。
「はぁあ。ヴィアレン、ケイディ、今日は何層の迷宮に潜りたい?」
「昨日もギルドから呼ばれて大変そうでしたもんね。今日ぐらい休んだらどうなんですか?」
「いや、それはダメだ。私は休む暇なんて作ったらいけないんだよ」
「何だそれ、それで僕たちのパーティが危険な目に遭ったら責任取れるのかい?」




