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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第5章 シャレット砂国編
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84話「代理調停人の仕事」

 ペルヴェリンは驚いていた。騎士団は撤退し、神槍を手に入れた一人とどこからか現れた魔法使いが二人で対峙しようとしていたのだから。


「改めて言うが私は代理調停人だ。つまりそれ相応の実力を持っている。撤退するなら今のうちだが」


「ははは。流石にこの状況で逃げる考えはないだろう。聞けば十五位がギルドに捕まったらしいが、どうやらそれが君のせいの様だね。だからと言ってあいつらと一緒にしようとしないでくれ」


「エリセツアさん、加減出来るようになりましたよね?魔力暴走起こさないでくださいよ、」


「あはは、大丈夫だって。あの時とは違うから」


 王都周辺を守る任務でエリセツアは、大規模魔法を使おうとして失敗し、そのせいで地形が変わり、スピリアのお父さん、つまりモナレンの王に少し呆れられたのだ。もちろん大規模魔法を構築するのは至難だし、魔力を大量に消費する難易度の高いもので、発動するだけで凄いのだが、明らかに自惚れていたのだ。


「ライト、あのよく分からないやつを頼んで良い?」


「任せてください」


 そして調停が始まった。ライトはマーロスと一騎打ちでぶつかり合い、どちらも必死だった。一方エリセツアは三十人いるペルヴェリンたちを一掃していた。何故なら相手の魔法使いは大したことなく、剣士も統制は取れているが決定打に欠けるからだ。


「やはり私は強いんだ。分かっただろ?私は代理調停人のエリセツアだ」


「マーロス様!作戦変更を!!」


 しかしマーロスは無視した。今目の前にいる剣士で手一杯だったからだ。元々、ドーウェン騎士団を相手することは決まっており、仮に特別騎士が戻って来ても対処出来る予定だった。

 しかし特別騎士は神槍を手にし、代理調停人まで現れたとなると、マーロスの恐れていた最悪の事態となってしまった。


「どうしてここまで我々の邪魔が出来るのだ!?魔女エリセツアよ、君は何者なんだ!!」


「俺を忘れるなよ。お前は俺たちに敵対した。お前の相手はドーウェン騎士団だ」


「ライト、伏せて、」


「え、ちょっ、」


 エリセツアは雷魔法を放った。ライトを信じ、直線上にいるマーロスを狙ったが、ライトは掠ってしまい髪と団服は焦げてしまった。

 しかしエリセツアは気にせず様々な魔法を放った。マーロスがオーラで魔法を弾いたからだ。そして走って距離を詰めて行った。


「時間魔導術、発動」


 次の瞬間、マーロスは吹き飛んでいた。マーロスもライトも何が起こったのか理解出来なかったが、マーロスは間違いなく恐怖を覚えた。


「殴られたのか、、しかしいつだ、」


 それはエリセツアにしか分からない。根源的な魔法の力でありもはやこの世界の魔法とは言えない魔導術。二つ内の一つである時間魔導術は、自分の時間を速く動かし他の人間よりも速く動けると言うものだ。

 その速さと言うのは単純な速さとは別格であり、人間が日常生活を過ごす時、毎秒二百四十回景色が入れ替わるのを認識出来るが、なんとエリセツアはその二百四十回の一回で、マーロスを魔力による身体強化で殴ったのだ。

 しかし理の誓約で、次の日が昇るまで使えないと言う神の力に等しいものなのだ。


「どうやら剣にオーラを込めすぎてみぞおちがガラ空きだったよ。大人しく捕まって」


 エリセツアは優しく言ったつもりだったが、マーロスにはペルヴェリンの代表を怒らせた時以来の緊張が走り、従わないなら簡単に切り捨てられてしまう自分の小ささに絶望し、まるで認識されたら潰されてしまう蚊の気持ちをはっきり理解した。


「エリセツアさん。気絶してますよ。こいつの気持ちは分かる、確かに今のは恐ろしかった」


「そんなに?まあいいや、ライトはこいつをギルドまで送ってくれ。私は調停人として忙しいからな」


 そしてまた私は元の場所へ戻った。ライトが無事にペルヴェリンの幹部をギルドへ預け、ドーウェン騎士団に死傷者がいないことを知って安心した。

 それから五日間、私は六件の調停を行った。しかし見つかった覇王の戦利品は「神槍」一つのみ。ほとんだの探索者パーティはやる気をなくしていた。


「代理調停人様、クローリー科学院とドーウェン騎士団、それから探索者パーティ迷宮図鑑部は手を引きました」


「そっか、騎士団は目的の物を入手したし、科学院と迷宮図鑑部も覇王の戦利品を研究することが目的だったからライトがいれば解決出来るからね。まだ安心は出来ないけど面倒事は少なくなるね」


「それで代理調停人様。ギルドによると調停人様は今日の晩には到着するそうです。なのでお疲れ様でした」


「今更来ても遅いじゃないか。私はこんなに苦労したのに、その本当の調停人は私に感謝するべきだね」


 ギルドの職員とそう話している内に、日が沈み私は久しぶりに迷宮の外へ出た。


「エリセツアさん。お疲れ様でした。俺たちエリセツアさんがいない間、特訓したんですよ」


「ケイディ、よく頑張った。確かに魔力の制御の質が上がってるね。ヴィアレンに手伝ってもらったの?」


「よく分かりましたね。あいつが俺の背中に手を当てて魔力制御の感覚を掴ませてくれたんです」


 エリセツアは少し驚いていた。自分の思っていたよりもヴィアレンと言う人間は、人に対する優しさを兼ね備えていたからだ。いや兼ね備えていたと言うよりヴィアレンと私の影響か?

 理由は何であれ、仲間たちが仲良くなってくれたことをエリセツアは純粋に喜んだ。


「君がエリセツアだね?」


「え、はいそうですけど。何故私の名前を?」


「代理調停人だったろう?多くの人間が君の名前を知ってるはずさ」


 私に話しかけた帽子を被ったその女性は何だか嬉しそうにしていた。私は感じ取った。この人は間違いなく私に関する何かを知っている、油断ならない相手だと。


「それであなたは誰なんですか、見たところどこかの国の魔法使いの様ですが私に何か?」


「私は調停人の一級冒険者ホーク。まあ君には調停人として感謝しなければならないからね」


「ホークさん、どこかで名前を聞いた気がするんですが、、あ!そうだスピリアの師匠だ」


「あの王女のことか。スピリアと言う名前も私が付けてあげたんだ。王妃に依頼されて弟子にしただけの関係だったが、あの子との日々は面白かった」


 やはりスピリアの師匠は依頼されてたんだな。普通なら王女に近付くなんて出来やしない。失礼があったりでもしたらどうなるか予想もつかないからだ。

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