83話「夜空騎士ライトと神槍」
「貴様たち、まさかペルヴェリンとか言う我々の王太子を殺そうとした組織か?」
「あー、そんなこともあったっけ。私は関与してなかったし知らないけれど生きてるならそれで良かっただろう」
ザクスは目の前にいる者が人間には思えなかった。見た目は二十代にも四十代にも見え、奇妙な雰囲気を漂わせていたからだ。
「そうか、ならば我々が貴様らを攻撃する口実が出来てしまったな。行くぞ!ドーウェン騎士団の名にかけてこの邪悪な組織を捕縛するぞ!!」
ペルヴェリンは約三十人に対し、ドーウェン騎士団はドーウェンに残った一部の者と単独行動している一人を除いて七十人いる。常識的に考えて騎士団に軍配が上がると思われたが、案外そうでもなかった。
「一人一人が団員よりも強い、と言うより慣れているな。一番強いのはやはり貴様だな」
騎士団長であるザクスと、ペルヴェリンのマーロスは互いに剣をぶつけ合った。ザクスはオーラを解放し、素早く間合いを詰めたがマーロスは軽くいなしてしまった。
そしてマーロスは高く飛び、天井を蹴ってザクスに飛びかかった。
「なんだと、貴様もオーラ剣士だったのか。それも青よりも更に濃い紺色のオーラを持つ剣士、」
剣士のオーラには人によって色が変わる。例えば火剣アイルゴーンは赤色で、騎士団長ザクスは青、ウミオチことジェイミーは精霊の力もあって桃色のオーラを持つ。
オーラは色が濃ければ濃いほど熟練したことを示し、オーラによる強化された剣はより鋭く、より頑丈になる。つまりマーロスはザクスよりもオーラ剣士として負けていることを意味する。
「君みたいな肉体が全盛期で優れた剣士を打ちのめすのが私は好きでね。考え事してないで早く剣を交えようじゃないか」
ザクスは悩んだ。王の命令でここに来ているからには、易々と引き下がれる訳がない。しかしここで団員たちに死傷者が出てしまうのも許せない。
「降参する。神槍は譲るから見逃してくれないか」
「はぁ?やはりモナレンは平和ボケしてるようだ。今更引き返せる訳ないだろ」
「っく、!!合理的に考えろ!貴様たちも命令でここに来ているなら命令の遂行が第一だろ!」
「あまり勘違いするなよ。私たちにとって一国の組織など脅威に値しない。君たちがどうしようが主導権がこちらにある」
段々とドーウェン騎士団は押され始めていた。洞窟内には団員たちの悲痛な叫びが蔓延り、ザクスは焦っていた。しかしどうすることもできなかった。ザクスは団長としての器がまだなかったのだ。
すると、額に汗を浮かべるザクスの肩に誰かが手を置いた。そしてザクスを安堵させた。
「大丈夫か団長。まさか俺が単独偵察してる間にこんなことになっていたとは思わなかった。すまない」
「ライトか、助かる、あいつは任せても良いか?」
そこに現れたのは遠征しているドーウェン騎士団の中でただ一人単独行動が許され、ザクスたちと別行動していた「夜空騎士」の称号を持つ騎士団の特別な騎士、ライト。
彼は十代でありながら騎士団に所属し、オーラを手に入れている。黒髪に白色の特別な衣装を纏ったその姿はドーウェンの民たちの憧れとなっている。
「結界を張っていたはずなのに、私にバレずに突破して来るとは、やるねぇ、」
「おいお前ら、人を痛めつけて楽しいか?」
「でも君には興味が湧かないんだ、すまないね。失せてくれないかな?」
「お前がどう思おうと知ったことじゃない。俺は俺のしたいようにする」
ライトは剣を構え、間合いを詰めた。その目には完全な殺意が込もっており、マーロスにはとても十代の少年には思えなかった。あまりの驚愕で一瞬怯んだが、体勢を立て直そうとした。
しかしライトは隙を与えなかった。ひたすらにマーロスに剣を振り、思わずマーロスから余裕が消え去った。
「何故だ、何故ここまで重く速く剣を振れる?一体何をすればあんな国から化け物が生まれるのだ、」
「お前には分からないだろうな」
するとその時、結界で自らを守っていた神槍は突然動き出した。それはライトへ向かって飛び、思わず両者とも戦いを止めた。
ライトは剣を構えたが、神槍はライトの前で止まり、お辞儀をするような動きをした。
「これが覇王の戦利品か、自我でも持っているのか?そして俺に使って欲しそうにしているな、」
ライトはニヤりと笑みを浮かべた。そして、それを手に取った。その瞬間、ライトの脳内に神槍の記憶が流れ込み、どのようにして扱われてきてどんな相手と戦ってきたのか理解した。
「な、貴様まさか、契約したのか?」
「どうやらそうらしいな。にしても不思議だ。槍の扱い方など知らなかったはずなのに剣と同じぐらい扱い方を身体が理解している」
「そうか、文献通りだと契約は君が死ぬまで続くだろう。つまりここで死んでもらうしかないと言うことだ」
マーロスは口調を変えていなかったが、とてつもない怒りを纏ったオーラを解き放った。そのせいで圧倒的な圧力でペルヴェリンと騎士団の人間は皆膝をつき、苦しんだ。
しかし、ライトは余裕の表情があった。
「確かに覇王の戦利品を手に入れた君は強い。しかしここは結界が張られてるんだ。内側にいる人間は私がオーラを解放してしまえばどうなると思う?」
「そうさせる前に俺がお前を止める」
「ちっ、クソガキが、」
二人の目が殺気に満ちた瞬間、とてつもない爆発音が聞こえた。それは結界を正面から破壊した音だった。
「今から誰も動くな。私は代理調停人エリセツア。これ以上争うのならば武力行使するぞ」
「あ、エリセツアさんじゃないですか。久しぶりですね」
「あれ、特別騎士ってライトだったの?」
「モナレン以来ですね。あの時から俺は強くなりましたよ」
実はエリセツアとライトには面識があった。モナレンをスピリアと旅していた時に王都周辺に魔物が現れ、それを討伐する時冒険者と騎士団が協力したのだ。
「団長、撤退してください。負傷している者も多いので急いだ方が良いですよ」
「確かにそうするべきだな。お前ら!!撤退だ!!」
「エリセツアさん。俺は残った方が良いですか?」
「うん。相手に強い剣士がいるっぽいから相手するのは面倒なんだよね」




