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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第5章 シャレット砂国編
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82話「動き始める各々」

 ノイルからの評価は多分下がっているのだろう。魔法使いのマイルが魔力を温存しているのに対し、私は常に魔力を消費して箒に乗っている。

 正直私の魔力はとても多いし、いざと言う時は保存した魔力がある。魔力切れを最後に起こしたのが思い出せないくらいだ。まあそれを知らないノイルからしたら迷宮を舐めている人間としか思えないのだろうが。

 それから三時間ひたすら進み続け、ようやく十五層に到着した。


「ここからはあんたにも頑張ってもらうぜ。そして俺はお前らと違ってそこまでの体力はないから休むことが必要だ。エリセツアさんには俺を守りながら戦って欲しい」


「いくら何でも自分を守りながらやれって、エリセツアさんに負担がかかりすぎるし、ノイルも危ないでしょ?」


「黙れマイル。エリセツアさんには互いの命を預ける戦場と言うのを知ってもらう必要がある。そのためにこうするしかないんだ」


「大丈夫だ。でもノイルは何か勘違いしてないか?私は君たちを守りながら最前線まで行くことなんて容易だよ」


 迷宮に出てくる魔物たちはあくまで一級に認定されるか、夢を見せる魔物の様に何か特殊な能力を持っている魔物ぐらいしか出てこない。もちろんそれでも危険だが油断さえしなければ負けることはない。

 まあ十層から下は一級の魔物が群れになっていたり、階層の空間が探索者が行動しにくかったり、難易度は明らかに上がっている。


「エリセツアさん!前!」


「ああ、分かっている」


 マイルが私に知らせる瞬間から私は杖を構えていた。私は魔法を学ぶ時に重要な事を三つ習った。それは相手の動きにいち早く気づき反応する速さ、相手に自分の魔法を認識される前に魔法を放つ速さ、そして相手に適した魔法を放ったり相手の行動を読んだりする思考の速さだ。

 そう、魔法使いが一人で戦っていくために必要なのは速さなのだ。そしてそれをきつく教えられた私の速さはこのパーティの誰よりも素早く反応出来るだろう。

 そしてエリセツアは雷魔法を使い、襲ってくる三体の魔物を一撃で屠った。


「ほう、これがあんたの実力なのか。なあ俺たちのパーティに入らないか?」


「嫌だね。私は忙しいんだ」


「おいリーダーが誘うなんて初めての事なんだぞ!それでも断るのかよ!?」


「ガレオン、やめておけ。さっきのを見ただろ?俺たちごときじゃ相手してもらえないんだ」


 どうやらアルムは私の何かに気づいたらしい。おそらく雷魔法を使った瞬間、私の魔力制御がぶれて隠している魔力が認識されたのだろう。


「私は代理調停人だ。だから覇王の戦利品の騒動に収拾がつくまで誰の味方にもならず、平等に接する」


「はは、若いのに流石だよ」


 そしてその日の迷宮探索で大した報酬は得られず、その日は解散した。

 明日からは本格的に調停人の仕事として探索されている迷宮内で問題が起こった時に駆けつけならければならない。迷宮ギルドの職員たちが迷宮を周り、大きな組織同士がぶつかったら私がその場所に向かうのだ。

 今のところ危険性があるのはクローリー科学院やドーウェン騎士団、それから探索者パーティの夜明けの蒼鷹や迷宮図鑑部、雷鳴烈火隊。そして何よりも危険なのはペルヴェリンだ。この他にも多くの人間がぶつかり合う可能性がある。


「エリセツアさん。事が起こったら職員たちが駆けつけます。どうかよろしくお願いします」


「分かりました。任せて下さい受付さん」


「エリセツアさん!俺とヴィアレンも応援してるんで頑張ってください。まぁあいつはまだ寝てますけど、」


 調停人は危険な仕事であり、圧倒的に強くなければならない。それも組織同士がぶつかり合うとなったならばまとめて災害級魔法を放つことになるだろう。どうか平和的にことを終わらせたら良いな。

 そう身構えてはいたが、その日ギルドの職員たちが私を呼ぶことはなかった。しかし私はいまいる五層から帰ることは出来ない。何故なら迷宮は常に誰かが冒険しているからだ。行方不明となる者も少なくないが迷宮で寝泊まりして、夜滞在することも無いわけじゃない。


「にしてもヴィアレンとケイディは私に会いに来てはくれないのか、寂しいな、」


 その頃、ヴィアレンとケイディはひたすら実戦経験を積んでいた。


「ケイディ、僕たちは本来前衛じゃない。エリセツアもそうだ。それでもあいつは圧倒的な強さを持つ。何故か分かるかい?」


「確かヴィアレンの元同僚のやつと戦ってる時、一瞬で間合い詰めてたよな。多分身体強化魔法を使ってると思った。それとエリセツアさんは常に周りが見えている。常に魔力探知をしているんだろうな」


「そうだ。特に魔力探知は前衛がいない僕たちにとって必須になる。しかしそのためには常に展開し続ける集中力が必要だ。あと身体強化魔法は大事だがあの時のエリセツアは身体強化魔法を使っていなかったと思う。魔力の発生が感じられなかったからね」


 実はエリセツアはこの時身体強化魔法を使っていた。しかし時間魔導術と並行して使っていたので他人から見たら瞬間移動したようにしか見えなかったのである。


「エリセツアさんって話聞く限り魔法以外にも何かしらの力を持ってるよな。ヴィアレンは黒魔法があるとして俺も魔法以外に何かしらの力を手に入れたいぜ」


「何言ってるんだ。君の魔法はまだまだ未熟だ。まずは魔法の技術を磨いてからだね」


「分かってるって。はぁ、」


 そしてエリセツアが動き出したのはその次の日の朝だった。ギルドの職員が魔道具による信号を送ったことで遠くからでもエリセツアに事が起こったと知らせられた。


「それで何層に行けば良いんですか?」


「八層です!結界が張られていて外部から邪魔出来ないようになってます。なのでどこの勢力が争っているのかは確認出来ていません」


 その頃、洞窟の階層である八層ではペルヴェリンとドーウェン騎士団が争っていた。


「待ってくれ。我々は騎士であり自ら争うことは望んでいない。話し合いで解決しないか?」


「こうして覇王の戦利品の一つである神槍が見つかった今、話し合い?先にこの神器を手にした方が勝つというルールのゲームの方がよっぽと効率的に終わるだろう」


「君たちは何者なんだ、?迷宮内での争いは御法度なはずだ。だからこそ我々も平和的に解決しようとしているのに何故争おうとする」


「それは大義のためだ。到底騎士には理解出来ないと思うがね。ついでに自己紹介をしておこう。奇律二十八断章序列五位、紺輝の濃愚マーロスだ」

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