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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第5章 シャレット砂国編
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78話「夢と魔道具の敵」

「考え事していたせいだね。それより他の探索者はいないのかい?これじゃあ攻略どころじゃないだろう?」


 しかし、周りに探索者は見当たらなかった。ヴィアレンは何となく察した。探索者が階層に見当たらないことなどあり得ない。つまり自分たちがイレギュラーな状況に陥ってしまっていると。


「そもそも今いるここはおそらく空間を歪ませることでまるで廊下が無限に続く様に錯覚させている。つまり十一層ではないどこかにいる」


「何故そんなことになるんだ?と言うかそれってとてもヤバいんじゃないか?」


「あぁそうだ。僕たちは狙われているのかもしれない」


 エリセツアやヴィアレンと言う強者を一瞬で眠らせ夢を見させる者がいて、空間を歪ませ外への脱出方法が見つからないこの状況。二人には焦りの気持ちがあった。


「さっき二人を眠らせたやつってヴィアレンでも勝てるのか?」


「正直分からないさ。でも今は油断していないからね。でも普通に考えて少し油断した隙に僕を眠らせたなら常に監視されていると考えて良いだろう」


(さっきの夢はすぐ夢だと気づけたから目覚めることが出来たけど、エリセツアは何故起きないんだ?夢と疑っていないのか?)


「俺一つ考えたんだけどさ。ここって空間が歪んでて、完全に異空間なんだろ。つまり本来の迷宮とは別の場所にいる。それなら昇降機でここに送ったやつが犯人なんじゃないか?」


「それが分かった所で、、いや待てよ。ここはもう迷宮の中ではない。かと言ってどこかでテレポートされた訳でもない。僕たちはいつこの異空間に閉じ込められた?」


 ここに入る時、三人は迷宮の管理人に十一層に行きたいと伝え、契約書を書いた後昇降機に乗った。そこまで誰も違和感を感じなかった。


「昇降機から降りた瞬間エリセツアが倒れた後、ふと周りを見ると、この廊下にいた。思えばその時がおかしかったんだ。そう言う階層だと考えさせられる様に誰かに謀られた」


「だったらこの十一層自体が誰かに操られたのか?」


「いや、こんな歪んだ空間が大きいはずがない。僕たちは入れ物に入れられたんだ。伝説の魔法が施された魔道具にね」


 伝説の魔法とはエリセツアが言う一般魔法であり特許を持つ者か一級冒険者しか使ってはいけない。しかしそもそも一般魔法を学ぶ方法が使う者でさえ分からない。使えるようになった瞬間忘れる様になっているのだ。だからこそ伝説であり、使う者は数えるくらいしかいない。


「僕の知識だと小さくなる魔法にイメージ空間を具現化させる魔法があればその魔道具が使える。そんな物があったら、大陸が騒ぐ大事だろうけど、」


「ならその魔道具を壊せば出られるってことだな」


「もし仮にそれで外に出てもこの魔道具を管理しているやつがいる。夢を見させる者のことも考えると長時間閉じ込めることが目的みたいだな。でも何故そんなことをする必要があるのか、、」


 ヴィアレンは今まで追い詰められたことは一度しかなかった。それは一級冒険者試験で魔物を召喚し、任務を終わらせた後、国を出ようとした所でルグニカに突然襲われた時だった。

 その時でさえ油断と驕りからの敗北だったのに対し、今は油断もしていないのに未知から攻撃を受けている。このことはヴィアレンに恐怖と言う感情を与えるには十分だった。


「そんなこと考えても仕方がないだろ!今はキャラミャンに戻ることを考えよう」


「まさか僕が君に諭されるなんてね。生意気だが、成長したのかな。良いだろう、僕がこの魔道具を壊して外へ脱出させる。でもそしたら僕はまともに戦えない」


 ヴィアレンは成長したケイディを信じることにした。そしてそれまで対立することが多かった二人は覚悟を決め、協力することにした。


「黒魔法で空間を切ればこの空間から脱することは出来ると思う。でも詠唱が必要だから僕を守るんだ」


「俺だってエリセツアさんに魔力の扱い方は学んだんだ、あとはイメージするだけだ。任せろ」


 そしてヴィアレンは目を瞑り魔力を集中させ、詠唱を始めた。その瞬間、ケイディは一瞬の魔力の揺らぎを逃さなかった。


「お、お前だな。二人を襲ったのは、まさか魔物じゃなくて人間だとは思わなかった」


「、、、ちっ、」


 その者の着るローブは魔道具であり透明になっていた。それでも視覚や、ローブでの移動をしやすくするようにするための足元や顔が少し露出していた。


「距離を取ったら魔法使いに取って有利になるんだ。特にこんな廊下が無限に続くだけの狭い空間だったらな。水魔法『ハイドロストリーム』!」


 ケイディは敵のいる目の前に向かって勢いよく魔法を放ち、避ける方法がないほど規模を大きくした。それはケイディに取って負担がとても大きいが格上の相手にダメージを与えるには十分だった。


「な、いない!部屋の中に入ったのか?」


 ここはあくまで作り出された空間なため、扉の中の部屋とこの廊下は別空間なのであった。

 そしてケイディは敵が入ったと思われる部屋に杖を構えながら近づいた。


「風魔法『アネモトルネード』!!」


 部屋に向かって放ち、これもまた避けようがないように部屋全体に魔法を広げた。これは普通の魔法使いよりも魔力が多いケイディだからこそ成せる戦い方であり、これはエリセツアから教わったのだ。

 するとその瞬間、空間にヒビが入る音が聞こえ、ヒビに何もかもが吸い込まれて行った。


「ケイディ、僕の手を掴め!」


「無茶言うなよー!!」


 二人は元の十一層に放り出された。エリセツアはヴィアレンが守ってくれていたおかげでいまだにだらしない顔で寝ていた。


「久しぶりだね『黒死の童面』まさか君たちだけで脱出出来るとは想定外だ」


「君と僕は久しぶりと言い合うほどの仲じゃなかったと思うけど『魔道の詳人』テラ。それに『悪眠の沼霧』ネルだったよね。君たちが僕のところに来たと言うことは消すためかな?」


「暗殺に幹部を二人も使うわけないじゃないか。それに君は大して組織の情報を握っている訳でもない。今回の任務に邪魔だから時間を稼ぐためさ」


 ヴィアレンの目の前にいるのはペルヴェリンにいた時の同じ幹部であった序列二十六位の「魔道の詳人」と十五位の「悪眠の沼霧」だった。しかしヴィアレンがその二人と対面したのは一年前に行われた幹部会議の時の一度きりであり、見た瞬間に思い出せないほどの関係性だった。


「どうせ今回の任務も失敗に終わる。この一年間、暗殺任務しか成功が出てないしペルヴェリンに未来なんてないよ」

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