73話「迷宮観光」
「大丈夫だよ。魔法団もいるし、四割の騎士たちは残ってるんだ。その代わり、夜空騎士は連れて来てしまっているけどね。それより王が求める秘宝を手に入れなくちゃいけないんだ」
「それギルドの人も言ってました。秘宝って何なんです?」
「知らずに来てたのかい?秘宝ってのは覇王の戦利品だよ。それがあれば国家の威信になるし、何より王子が欲しがっているんだ」
スピリアのお兄さんが欲しがっているのか、正直私も少し興味がある。何故ならイージェス王が言っていた大陸に大きな影響を与えた五人のうちの一人の覇王の物だからだ。
そしてザクスと別れて私たちは迷宮の入り口へとやって来た。
「君も覇王の戦利品を狙うのかい?」
「いや本来の目的を忘れてしまってはいけない。別に必要な物でもないし、そもそも個人が手に入れられる物じゃないと知っているからね」
「ちっ、迷宮の規則知っていたのか」
しかし、実際はシューガイゴ博士の様に勝手に貴重な物をそのまま持ち去る人もいる。力を持った人ならそう言うことも出来るという暗黙の了解だ。
それにしても私の揚げ足を取ろうとしたのか?どこかでやり返してやらないと気が済まないな。
「赤銅級探索者様ですね。何階層へ向かわれますか?」
迷宮の入り口は極めて厳重で、契約書を書かされたりする。まあ安全の保障がない場所へ行かせるのだから自ら責任を持つべきと言う考えなのだろう。
「一階層でお願いします」
「い、一階層ですか?そこはもう探索され尽くしてまして入手出来る弱い魔物しかいませんよ?」
「いや観光が目的なので大丈夫です」
「は、はぁ、分かりました。それでは行ってらっしゃませ」
今のところ昇降機が作られた階層は十一層までで、上級探索者たちは階層をスキップする。つまり十一層までは昇降機が壊される心配がない、管理できる階層なのだ。
そうして私たちは一階層への昇降機に乗って、その広い異世界に足を踏み入れた。
「おぉ、すごい。確かに地下に行ったはずなのに空が見える。これは魔力で光源を作り地上を再現しているのか」
私は景色に圧倒されていたが、どうやらヴィアレンも同じらしい。しかしそれを認めたがらない様子だ。
「ふっ、たかが景色ごときに何感動してるんだい?」
「良いじゃないか。それよりもこの広い大地を駆け巡りたい。行くぞ!」
私は久しぶりに全力疾走をした。迷宮と言ってもここはクリア済みでまだクリアされてない十八層の様にボスとなる危険な魔物はいない。そして地形は複雑になっておらず、遭難することもないのでまさに初心者向けの場所だ。
「何で僕がこんなことを、、」
「ヴィアレンも行くぞ!魔物に襲われるかもしれないからな!」
「ここには雑魚しかいないだろう」
そうして、一階層の景色を堪能した後、その調子で更に下の階層まで進んだ。
「なるほど六層はダンジョン形式になっているのか。しかし、流石に人が増えて来たな。水晶級は一番人数が多いだけある」
石炭級は一層、白鉄級は二、三層、水晶は四、五、六層を探索出来る。
「ここの魔物は最大で二級レベルがいる。後衛は後衛らしく引っ込んでくれるかな」
「分かってるさ。でも二級程度の不意打ちで私がやられるとでも思ってるの?まあ心配してくれてありがとね」
「勘違いするな。ルグニカからの命令だから仕方なくやってるんだ。君が死んだら僕も命令を遂行出来なかったとして死ぬからね」
「照れ隠し分かってるって。ここの景色は変わり映えないしとっとと進もう」
しかし、適当に進んでいたせいで少し迷ってしまった。それは私たちだけでなく、私と同い年ぐらいの五人で構成されたパーティもそうだった。
「オレワ、ちょっと休憩しようよ。ケイディが疲れてる、」
「うるせぇなワイカ!着いてこられねぇ方が悪いだろ」
「そうだぞ。俺もメジャミもまだ行ける」
「メジャミもヨーデスも無理してるでしょ。今日はもう十分頑張ったよ」
なるほど、ワイカと言う女の子はケイディを庇っていて、オレワとメジャミとヨーデスと言うやつは気にせず前に進みたがってるんだな。こんなんじゃ危険な目に遭ってしまいそうだが、、
「滑稽だね。弱者は」
「私たちには関係ないし、行こう」
こう言うのは自分たちで解決するしかない。おそらくケイディと言う少年はパーティを抜けるだろう。しかしそれは仕方のないことだ。着いて行けず足を引っ張る方が悪いのだから、、
そうして後味が悪いまま六層を抜けた後、宿に戻ることにした。
「ヴィアレン。私はこれからバザールに行くけど、どうする?」
「バザールって何?危険なところじゃないなら着いていかなくても良いんだろう。僕は寝る」
「分かった。じゃあまた明日」
そして私はキャラミャンで楽しみにしていた事の二つのうち、迷宮ともう一つであるバザールに行く事にした。
バザールには珍しい魔道具が売ってあり、他にはない一点物もあるそうだ。
「レットはたくさんあるから絶対欲しい物は手に入れてやる!」
「身につけるだけで幸せになれるネックレスや金運が上がる仮面があるよぉ!!今ならなんと五千レットぉぉ!!」
ああ言う気分が上がるだけの根拠のない物は必要ない。私がミロス学園で作った、物質を別空間へ送り、時間を止めて保存する魔道具は容量に限界があるから余計な物を入れたら後に後悔することになる。
「そこのお嬢さん待ちな」
「え、私ですか?」
私は変なお婆さんに話しかけられた。顔を隠していて明らかに怪しい。占いとかされるのか?
「あんたを占わせてくれ。代金は良い。頼む」
一回二千レットとは、ぼったくりにも程があるでしょ。でも無料で良いから占わせてくれって、もう意味分からない。
「今ぼったくりだって思っただろ?」
「あはは、、」
「あんたは私が占いたいんだ。少し見させてくれ」
新手の詐欺か?私はそんな不安を抱きながらお婆さんの指示に従い、占われた。
「もう良いでしょうお婆さん。私占いとか信じないタイプですから、」
「あんた、大陸の外からやって来ただろ?」
「え!?」
私はあまりの衝撃に驚きが隠せなかった。このお婆さんには何が見えたんだ?何故私が大陸の外からやって来たと分かったんだ?
「私はね、人をじっくり見るとその人の運命が見えるんだ」
「もっと話を聞かせてください」
「これは私が名付けた運命占術と言うものだが、人は運命に縛られていて、その人の未来は運命値で決められている。それであんたを見た時一瞬、運命値がとても低く見えたんだ。じっくり見たら今まで見てきた中で三番目に低かったよ」
「低かったらどうなるんです?やっぱり不幸になるんですか?」




