72話「迷宮探索者」
拝啓、父さんへ。私はミロス学園を出た後、ポリスイナへと向かいました。行く途中では精霊剣士のウミオチと出会い、共に冒険者の任務をたくさんこなしました。そしてポリスイナの神の眷属に会ってネフェリアルムスト王国に招待されたり、大陸の強者が集まる剣術大会にウミオチが出て準優勝したり、楽しかったです。
「それとたくさん疑問が見つかったから、聞いとこう。あと幼馴染たちの情報も聞いておこうかな」
私はこうしてゆっくりと歩きながら、遠いシャレット砂国まで進んでいる。ポリスイナを出ることは出来たがまだシャレットの最東端である草原地帯だ。箒に乗って行けば早いのだが、そうしないのには理由がある。
「はぁ、面倒くさ」
「ちっ、僕のことか?僕だってこんな面倒に巻き込まれたくないんだ」
なんと私の後ろの歩いているのは一級冒険者であり、ルグニカの眷属となった元奇律二十八断章の一人、ヴィアレンだった。こんな状況になった経緯は一日前の明け方に遡る。
ウミオチと別れ、数日が経った私はシャレット砂国まで行くために博士の箒を使って進んでいた。そんな日々の中、たまたま森でキャンプをした。そして夜が明けると何者かが私の近くにいた。
「誰だお前は!」
咄嗟に杖を構えた私は、黒いローブを纏った怪しい人物に魔法を放とうとした。するとあまりの反応の速さに驚いた敵は顔を見せ、悔しそうな顔をしていた。
「僕だ、ヴィアレンだ。ルグニカに言われて仕方なく来たんだ。まさか君とまた会うことになるとはね、」
話を聞くと、ヴィアレンはアリックのような他のルグニカの眷属と相性が悪いらしい。それでどうするか悩んだ結果、現在一人の私に前衛がいた方が良いだろうと言う事でヴィアレンと共に旅をしろ、と命令されたらしいのだ。
「これ面倒くさい奴を押し付けたいだけじゃないか、」
「ちなみに君が断っても着いていく。着いていかないと命令に反した眷属の縛りで死ぬからね」
「なるほど眷属化と言うのは意思を支配するのではなく事象によって行動を制限することで支配するのだな。まぁ別に良いよ。邪魔にならなければ」
そうして、今に至るのだがこのヴィアレンと言うやつは本当に旅の仲間に向いていない。
私は箒で飛んでいるのに対し、ヴィアレンは箒を持っていないから、走った。しかしそこまで体力がなく、すぐに息切れしてまた悔しそうな顔をしていた。夜ご飯の時には、食べ物を持っておらず、私に渋々ねだった。
「まあ戦闘面は全部任せられるし良いか。別に急いでる訳でもない。うん、問題はなし」
「ちっ、しかしこれも食料のため。対魔物戦は好きじゃないのに、」
食料を与える代わりに働かせることにしたのだ。そうして数日かかり、やっと目指していた迷宮都市キャラミャンに辿り着いた。
「おいエリセツア、ここにはどう言う目的で来たんだい?」
「そりゃあ、迷宮とやらを探索するためだよ。噂によると不思議な景色が広がっていて現実とは思えないらしいからね」
「ってことは僕もそれに着いていかないといけないのか?」
「当たり前でしょ?もしかして迷宮都市でぐーたら出来ると思ってたなら大間違いだよ」
それにしても昼間とは言え街は騒がしいな。聞いてた話よりも多くの人がいる。
「エリセツア、宿に泊まりたいなら迷宮探索者として登録したら確実に泊まらせてくれるとこがあるらしい。そこに行くぞ」
「迷宮探索者?何それ普通の冒険者と違うの?」
「ここはギルドはギルドでも迷宮ギルドと言う大陸冒険者ギルドの特別支部があるんだ。ルグニカから聞いてなかったのか?」
ルグニカはどうやら私の行き当たりばったりな性格を読んでいたようでキャラミャンの情報をヴィアレンに教えていたらしい。道理で得意げだ。
「じゃあまずはその迷宮ギルドに行こう」
そうして私たちは迷宮ギルドへと向かい、中で登録をしようとした。どうやらここでも等級があるようで下から石炭級、白鉄級、水晶級、赤銅級、白銀級、黄金級、白金級の七つがある。等級が細かく分けられているのは迷宮の行くことの出来る階層を制限するためらしい。しかし荷物持ちが必要なパーティもあるため、付き添いであれば深い階層へ行くことも出来るらしい。
「お二方両方共、一級冒険者ですか、やはりあの秘宝を狙いに来たのですか?」
「ん?私たちは迷宮探索がしたくて来ただけなのだが、」
「あ、すみません、個人の目的の詮索をするのは御法度でした。一級の方が来るのは珍しいことでして、、それで一級冒険者は赤銅級からのスタートとなります」
「やった!これなら最初から色んなところを探索出来るぞ」
私は喜んでいたが、ヴィアレンは面倒くさそうにしていた。しかし気になるのは周りの反応だ。焦っていたり嫌悪の表情を浮かべる者がいた。どうやら歓迎はされていないな。
「ヴィアレン、明日からは迷宮に潜るぞ。そして今日からの宿代は自分で払ってね」
「分かってるさ。それで何階層から入るんだい?ちなみに赤銅級の行ける最下層は十層だけどね」
「言ったでしょ?迷宮には不思議な景色が広がってるらしいの。だからお宝を探したり、魔物を倒すのは二の次で一層から景色を眺めに行くぞ」
「えぇ、、」
次の日、宿の窓から外を見ると、昨日よりも騒がしくなっていた。ヴィアレンと共に外に出て様子を見ると、
「ドーウェン騎士団!?どうしてこんなところに、」
すると馬に乗っていたドーウェン騎士団の団長であるザクスが私を見て近づいて来た。
「エリセツアさんじゃないか。こうして話すのはモナレン王国以来だね。ヴァリエ様の件は耳に入っている。大変だったようだね」
私は剣術大会でザクスとウミオチが戦っていたから久しぶりではないのだが、よくよく考えたら騎士団長なのに国を出て剣術大会に出るのはおかしいな。
「この遠征に来る途中で剣術大会に出たのだけれどね、君やヴァリエ様と同じぐらいの少年に負けたんだ。世界は広いね」
「あはは、、」
何だかむず痒い。それにしても遠征か。なら納得いく、モナレンはシャレットからポリスイナを通った先にある国だから遠征ついでに剣術大会に出ていたのか。
「にしてもなぜ騎士団がここにいるんです?ドーウェンは放っておいても良いんですか?」
ドーウェン騎士団はドーウェンを守るための組織なのに遠征とは、矛盾している。




