71話「ウミオチの決意」
「いつかアーチウムに来てくれたらおもてなしするわエリセツアさん!」
「ありがとうございますメルニークさん。イースドランさんやアイルゴーンさんも」
「ああ!そっちも冒険者として頑張れよ!」
「昨日の貴方の魔法は大変興味深かった。アーチウムに来てくださったら是非とも魔法を学びたい」
三人は何故か暗い雰囲気のウミオチを察して、
「貴方は凄いわ!悔しいけれど私の友人を倒したのよ。もっと自信持ってくださいね!」
「俺は君のルーブローズ剣術が本物だと思ってる。これからと剣の修行に励んでくれ」
「アイルゴーンをボロボロにしていただいてスッキリしましたよ」
「そうだな。ありがとう」
そしてルグニカの所にもあいさつに行った。
「エリセツア。今回のペルヴェリンの目的は俺の暗殺だけではないと思うんだが、君はどう思う?」
「予選での黒魔法。あれに関してはやはりキアットを狙ったものなのでしょうか?」
「今のところ、あの魔剣士坊主がペルヴェリンと関わったのは一級試験ぐらいだからな。もしかしたらペルヴェリンとは別なのかもしれない」
どうやら他の地区予選では黒魔法の痕跡は見つからなかったらしい。つまりキアットだけを狙った何者かによる妨害だ。
「まあキアットにも色々あるんでしょう。大陸を行ったり来たりしているし、何かしら心当たりはあると思います」
「そうだな!それじゃお前らじゃあな。俺は忙しいからもう行くぜ」
「おっさんとの試合楽しかったぜー!」
「またいつかー!」
そして最後にキアットに会いに行った。キアットはどこかの国の金持ちから依頼を丁度受けていて、報酬について話し合っていた。
「おうお前ら!もう国を出るのか!ここには良い人たちが多いぜ。楽な依頼で儲けれそうだ」
「切り替え早いですねキアット先輩。私は金があるのでもう国を出ますよ」
「キアット、お前との予選楽しかったぜ!」
「お前も頑張れよ。そうだこれやるよ」
するとキアットは懐から指輪のアクセサリーを取り出した。
「これは兄弟の証だ。お前は強いしこれから有名になるだろうからな、お前との繋がりを証明しておいたら後々役立ちそうだからやるよ」
「下心しかねぇじゃないか。まあありがたく受け取っておくぜ」
「じゃあもう私たちは行きますから。またどこかで会いましょう」
「じゃあな!上手くやれよー!」
そうして私とウミオチはナイガトピンと外を繋ぐ橋まで歩き続けた。互いに今までの思い出を話し合い、ひたすら笑った。
「そろそろ私たちも別れのあいさつをしようか」
「エリセツア、、やっぱり俺寂しくなるぜ」
そう、私とウミオチが共に旅をするのはここまでだ。こうなってしまうのにはロナウゲートから聖剣を預かった時にまで遡る。
「聖剣に秘められた秘密、それは呪いがかかっていることだ。勇者が魔王を倒した後、勇者は持っていた力が完全に消え、そこらの凡人になってしまった。それはおそらく魔王を倒したことで神が勇者に与えた力を返してもらったからだろう。しかし、勇者が使っていた剣は違った」
「どういうことだ?」
「勇者が使った剣には勇者の力が蓄積され、同時に魔王の血肉に触れた剣でもある。そして勇者が村へ戻る帰り道で喪失感や絶望感、様々な感情が勇者によって与えられた。そうなると剣は普通ではなくなる」
「つまりそれが聖剣になったってわけだな。でもそれがなぜ俺に渡したい理由になるんだ?」
私はそれを聞いている間、一つ思い出したことがあって、思わず尋ねた。
「確か聖剣って剣聖が使った剣だって聞いたんですけど剣聖と勇者は同一人物ではないですよね?」
「そうだ。つまり過去、聖剣を使った者は二人いるんだ。だからこそユージオに最も近い君に渡したいんだよ」
「別に俺は聖剣なんて欲しくねえよ。それがなくたって俺は強くなれるし、そんなもんに頼りたくない」
「違う。この剣にはユージオの記憶もあるんだ。それはユージオが呪いを解かなければならない使命を持ち、生涯解呪を試み続けたが結局解けなかった。理由は明確ではないが剣聖にしか解けず、解かなければならないものなんだよ!」
ロナウゲートはユージオがどれほど本気だったか証明するためか、ウミオチに必死に訴えかけていた。
「分かったよ。じゃあ聖剣を持たせてくれ」
そう言ってロナウゲートは恐る恐るウミオチに聖剣を渡した。どうやらウミオチが聖剣の記憶を見てしまうことが申し訳ないらしい。
そしてウミオチは聖剣を握り、ボーッとして膝をついた後、涙を流した。
「こんな重荷をおっさんに背負わせる訳にはいかない。これは間違いなく俺しか出来ない。そして自分の力だけでやらなくちゃならない」
「何を見たんだウミオチ?」
「ユージオの最期だ。解呪を俺に頼んでいたんだ間違いなく。でも解き方は分かった。だからエリセツア、俺は一人で行かなくちゃならない。旅を一緒にできないんだよ」
ウミオチはまるで勇者と剣聖になったようだった。自分のやるべき事のためなら命だって賭けられる。そんな強い人間になっていた。
そうして今に至る訳だが、いくら強い使命があっても別れ際には寂しくなってしまうらしい。
「私だってウミオチとまだ知らない場所を見たいと思っていた。でもそんな私の個人的な理由で過去の偉大な二人の英雄の願いをじゃますることは出来ないんだ」
「エリセツアだって余裕ぶってるけど、寂しそうじゃねぇか!」
「心配しないでくれ。私は切り替えが早いんだ。きっと別れた後でもすぐ旅のことを考えてるさ」
これは強がりではなく本当だ。実際リンやスピリアと別れた時もポリスイナのことを考えてワクワクしていたし、、
まあ列車で少し目が潤んでいたのは秘密だな。
「これからきっとウミオチには様々な壁に当たると思う。でもその分、良いことだってたくさんある。例えば橋の端っこから私たちを見て、今にも泣きそうな顔をしているお姉さん。何かジェイミー君には心当たりがないのかい?」
「し、師匠!?」
ウミオチはその瞬間、ジェイミーという私と出会う前の年齢相応の少年に戻っていた。
「すまなかったジェイミー。迎えに来るのが遅かったな、」
「ごめん師匠、こんな遠くまで探しに来させちまって。でも俺また強くなったんだ、使命も背負った。そして何よりあそこにいる魔女エリセツアに出会ったんだ!」
「そうかそうか、じゃあこれまでの冒険譚を聞かせてもらえるか?」
完全にウミオチは師匠に夢中なようだ。それじゃあ私は邪魔にならないように、もう行くとするかな。
「待ってくれエリセツア。きちんと別れの挨拶をしよう」
「今ウミオチと話したら泣きそうになるんだ。早く行かせてくれ、」
「エリセツアは俺が見た中で最高の魔女だ。そして俺もいずれ最高の剣士になる。だからいつか使命を果たしたら師匠と一緒に会いに行くぜ!」
「あぁ、そうだな。私もその時を楽しみにしてる。だからずっと元気でいろよ!」
そして私は橋を渡り切って、流れる涙が見られないように急いで博士の箒に乗って、飛び去った。
こうしてポリスイナ水上国での終え、また一人となってシャレット砂国へと旅立つのであった。




