70話「決勝と吸血の歯波」
「ほう、これは過去一かもな。それじゃちょいと力を出してやろう」
するとルグニカは剣を紫色に光らせた。どうやら高密度の魔力を剣と一体化し、ウミオチの剣を受けるつもりらしい。つまりルグニカは魔剣士なのだ。
「まるであんたの前じゃ俺の剣受けようが木の棒振られて受けようが違わねぇ気がするぜ」
「今度は俺の番だな。火剣の小僧よりも俺は速いぜ。ついてこいよ?」
そう言うとルグニカは一瞬でウミオチの背後に回り込み、剣を振った。ウミオチはギリギリで反応し、かわしてみせた。
しかしルグニカの剣は止まる事を知らずまたウミオチへと向かった。
「ほお、何とか受け流したか。やるじゃねぇか」
「はぁはぁ、こんだけ感覚研ぎ澄まして反撃する隙が全くねぇ!」
ルグニカはその時驚いていた。目の前にいるたった十五歳の少年に対して妥協していない剣で切ろうとしたにも関わらず、受け流しただけじゃなく諦めの表情を浮かべるどころか笑っていた。
一体どんな人生を送っていたら圧倒的な格上の存在にこんなメンタルを保てるのだろうとひたすら疑問に感じていた。
「おいおっさん。試合中に考え事なんて剣士失格だぜ」
「まじかよ、」
そしてルグニカは確認した。目の前にいる少年はゾーン状態に入っている。自分の実力が一個人の調子で変わるようなことはないと知ってはいるが、少し恐ろしくなっていた。
「しゃあねぇ。必殺技ってのはカッコいいけどよ、一度見せたら次使う時、盛り上がんねぇから隠しときたいんだよな」
「やってくれよおっさん。そうじゃないと俺は満足出来ない」
「出てこい純黒大剣、それと竜斬刀に絶対剣、漆黒刀。こんなもんでいいだろ。俺は剣に触れずとも扱うことができる。それも複数だ」
ルグニカは魔王の力を持っている。魔王は呪いの生みの親であり呪いは本来、事象に変換される。それも細かすぎるものは出来ない。しかしルグニカはその呪いの力そのものを操り、剣を操作することができる、つまり手が増えるみたいなものだ。
「俺の五つの剣を見極められるかな?」
「無理に決まってるだろ。そう来るなら距離取るぜ」
ウミオチは準決勝でのオーラと精霊の力を感じてみてその感覚を忘れないようにしていた。そして直感的に操作出来ると察した。
「剣聖絶花、改め、剣聖絶花斬!!」
ウミオチは飛び上がり、大きく剣を振り上げ、剣そのものでぶつかることをやめ、光の斬撃を放った。
「実に天晴れ。でもまぁこれで終わりだな」
ルグニカは満足した様子で光の斬撃を止めてから、地面に着地したウミオチの背中に剣を向けた。
「さすがに強えわ。降参!!」
会場は圧倒的なルグニカに興奮して、大きな盛り上がりを見せた。しかし、その瞬間何者かが動いた。
「勝者はルグニカだぁ!!!でもここで死んでもらうね」
なんと実況がルグニカの暗殺者である「吸血の歯波」だったのだ。恐ろしい速さで切り掛かって来たので、油断していたルグニカは反応が遅れた。
「は?」
ウミオチには理解不能だった。何故なら突然ルグニカに死の宣告が来たと思ったら物凄いスピードで実況が襲いかかって来て、、
それをエリセツアがギリギリで止めたからだ。
「やっぱりこのタイミングだった。『吸血の歯波』だったよな、お前の作戦は全部読めてる」
「誰です貴方。ルグニカ並の脅威指数を感じます。分かりました、部下たちに告ぐ。魔女とルグニカを何としても排除しろ」
「ウミオチ!!引っ込んでろ!!こっからは私たちの役目だ」
すると、キアットやアイルゴーン、イースドランなどエリセツアが個人的にもしもの場合に協力をお願いしていた人たちが戦闘体制になった。
「余りにも速すぎますね。てっきり主催側しか懸念していませんでしたが、まあ対象の暗殺さえ成功させれば問題ありません」
観客たちはパニックになったが、幸い主催側が丁寧に観客を誘導していった。会場にいる「吸血の歯波」の部下たちはエリセツアの協力者たちによって、民間人への危害を加える隙を与えなかった。
「ルグニカさんも体制立て直しといてください。私がやります。水雷混合魔法『エレクトロストリーム』」
私は素早く魔法を使って、吹き飛ばした。その速さは常人の比べものにならないほど速く、そして協力だ。
「手応えがないな。ここまで弱いのか?」
「これは作戦失敗ですね、、しかし一矢報いたいと思います」
「残念、自然魔法『アイヴィプラント』」
私は今まで魔法で全力を出してこなかった。出したのはスピリアが刺された時ぐらいだろう。自分の力をひけらかすと面倒になると言い訳をしていたが、記憶を取り戻して考え方を改めた。
敵には隙を与えず、迅速に制圧する。これからはそうしていかないといずれ痛い目に遭うから。
「ルグニカさん、拘束しました。これで任務は完了ですか?」
「流石だな。いや待て、自爆する気だ!!」
「これで一矢報いましたよ」
「吸血の歯波」は事前に仕込んでおいた聖なる爆弾で自らを爆発して、消えてしまった。
「ごめんなさいルグニカさん。あいつは自爆したと見せかけて直前で逃げ出してました。追いかけた方がいいですか?」
「いやもう良い。この目で確認できたんだペルヴェリンって組織がな。それより残党はどうなっている?」
すると残党たちは協力者たちに拘束され、身動きが取れなくなっている。メルニークはイースドランに捕まえてもらった敵に説教していた。
「こいつらは組織を裏切ろうとした瞬間聖なる力で心臓が止まるようになってます。くれぐれも注意して下さいね」
「ああ分かった。皆の協力助かった!!未知の組織からの脅威は去ったぞ」
ウミオチはポカンとしていたが、私が任務を終えてホッとした様子を見ると安心して笑顔になった。
こうして波乱の剣術大会は幕を閉じた。
「ふあわぁあ。そっか、今日は大会が終わったからポリスイナを出る予定だったんだ」
私はナイガトピンに来てからずっとお世話になった宿に感謝して、ウミオチと共に外に出た。
「エリセツア、、」
「おい待て、悲しくなる前にまずはここで関わった人たちに挨拶しに行こう」
「うん、」
落ち込むウミオチの気持ちを押し切って私は色々な人たちの所へと引っ張っていった。




