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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第4章 ポリスイナ水上国編
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69話「宿屋での語り」

「貴公の噂は最北のラゴスハインにまで届いている。その力と私、どちらが勝るのだろう、」


「はっはっは!面白えじゃねえか。その自信は誇っていいぞ。今までの奴らはどいつもこいつもどこまで善戦出来るかぐらいしか考えねぇ下らないやつばっかだったからな!」


 結果はロガヘミュの圧倒的な敗北だった。オーラによる冷気を纏わせウミオチやアイルゴーンにも勝るとも劣らずのその剣は、ルグニカに届くことはなく、瞬間移動と言ってもいいほどのルグニカの速さと力強さに猛攻を受け、そのまま倒れて終了した。


「ジェイミーくーん。決勝進出おめでとう」


「凄かったぜ!ジェイミー。やっぱり俺が認めた剣友だぜ」


「それわざとやってるだろ。ウミオチで良いって。そっちの方がもう慣れたし、」


 疲れ切ったのと、明日の決勝を考えなければいけないことのせいでエリセツアとキアットのからかいに付き合う体力はなく、ウミオチはヘトヘトでやどのベッドに横になった。

 そして、決勝大会のために更に強化された安全を守るための結界が張られるのと決勝進出者の身体を休めるために一日の期間が空いた。


「おはようウミオチ、いやジェイミーと呼んだ方がいいのか?君に決めてもらおうかな」


「はあ、もう疲れたんだよ、呼び方は好きな方でいいぜ。でもウミオチの方がもう慣れたしそっちの方がいいかもな」


「分かったウミオチ。それで今日はどうするの?久しぶりに一緒に朝ごはんを食べようか」


 大会が始まってからは、出場者は朝早くから集合しないといけないため、マイペースな私はウミオチを見送ってから一人でダラダラ支度をしていたのだ。


「今日の宿飯はスパゲティか!スパゲティと言えば俺たちが初めて会った時に奢ってくれたのもスパゲティだったな」


「大好物だったよね。確か師匠の影響なんだっけ?」


「ああ。師匠の得意料理がスパゲティしかなくてな、その影響で自然とスパゲティが好きになったんだ」


「そう言えば俺と師匠の関係性って今まで話したことなかったよな。丁度いいし聞いてくれよ」


「分かった」


 私はスパゲティの最後の一口を飲み込んだ後、口を拭き、ウミオチの話に集中した。


「俺って元々小さい村で生まれたらしくてな、丁度俺の生まれてから数日後に魔物に襲われたらしい。それで村は燃えて運よく一人で生き残ってたらしい」


 ウミオチはその状況を覚えておらず、家族を失った悲しみも知らないため、何も気にしていない様子だった。


「そこにたまたま師匠が現れたんだ。師匠は当時、リースェナ帝国って所に騎士として雇われていて煙が上がっていること知った国が師匠を送り出したらしい。そこで俺を見つけて、養うことを決めたんだってさ。でも国は小さな村が滅びたこともそこの住民が皆死んだことも気にしなかったんだ。そして師匠が国を出て、山で俺と一緒に暮らし始めたんだ」


 リースェナ帝国、私が知る限りそんな国は存在しないはずだがウミオチが言っていることが嘘とも思ない。とりあえず流し、話に集中することにした。


「そして物心ついてきた頃に俺は剣聖ユージオの英雄譚を見たんだ。それに憧れて木の棒を振り回してるとな、師匠がそこで俺を弟子にしてルーブローズ剣術を学ばせようとしたらしい。それから師匠は厳しくなったんだ。それまでと雰囲気や表情は同じな癖に口調が怖くなって修行内容も一日一万回素振りや魔物と無理やり戦わせたりで無茶苦茶だったんだ」


 ウミオチはその日々を辛そうに語る反面、過去を懐かしんでいて楽しそうだった。


「その生活が十三年続いた半年前、嵐が来たんだ。それに合わせて、魔物たちもたくさん現れて俺と師匠はひたすら斬り続けたんだ。そこで俺は精霊の加護を受けて覚醒した。最終的に嵐も収まり魔物たちも森へ帰っていったんだ。でもそこで俺と師匠はぶつかった」


 ウミオチはよっぽどその記憶が悲しいのかとても苦しそうな表情をしていた。


「師匠!俺も精霊の加護を受けたぜ。これでユージオや師匠みたいになれるよな!」


「ジェイミー大丈夫か!?怪我をしてるじゃないか!すまないジェイミー、お前を守り切ることができなかった、」


「気にするなって師匠、それより精霊の加護だぞ!褒めてくれよ」


「うぅ、今すぐ治療をするから家に戻るぞ、」


 師匠は精霊の加護よりも俺の怪我に目がいっていたらしい。それも今思えば腹が貫かれてたんだから当たり前なんだが、精霊のおかげで修復が早く、三日後には完治した。しかし、そこで師匠は初めて弱いところを見せ、そのまま落ち込んでいた。


「なんだよ師匠!俺はもう強くなったんだ!!落ち込む必要なんてないだろ!!」


「でも私はお前が心配なんだ。分かってくれ」


「ふざけんじゃねぇ!!弱い師匠なんて見たくねぇよ。もう出てってやる!!」


 そしてウミオチは剣を持って飛び出して行き、三日三晩走り続けた。気付けばダリナーにいてそこで傭兵となって稼いでいた頃、ポリスイナで剣術大会があることを知ったらしい。


「大変だったんだなウミオチも。師匠とは仲直りしたくないのか?」


「もちろんしたいさ。俺は師匠が大好きだ、他の誰よりも。人生で一番大切で一生一緒にいたい。だからこそなんて言えばいいのかわからないんだよ」


「その言い方だとまるで師匠へのプロポーズみたいだな。じゃあ再会したら、そのままその言葉を伝えたらいいと思うよ」


「みたいじゃなくてプロポーズなんだよ。年齢だって十五しか離れてねぇし、、って師匠が女だって言ってなかったよな」


「ええ!」


 それから夕方まで宿の街並みが見える席に座り込み、お互いのそれまでの人生について語り合った。

 そして決勝の日が訪れた。


「とうとう本日は決勝!!!戦うのはまさかの番狂わせの精霊剣士ウミオチと、またもやモナレンのギルド長ルグニカだ!!」


「エリセツアと一緒にいた少年がまさか本当にここまで上がって来たとはな。まじで面白え」


「あんたが最強だって事は知ってる。でも俺だってな、アイルゴーンやキアットたちの気持ち背負ってんだ。そう易々と負けられねぇよ」


「試合開始!!」


 ウミオチは最初からオーラと精霊の加護を解放し、ルグニカへ向かっていった。その目はルグニカや観客誰しもがたった十五歳の子どもとは思えず、息を呑んだ。

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