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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第4章 ポリスイナ水上国編
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67話「甘くない現実」

「エリセツアさんどうしたの?元気がないようだけれど話を聞きましょうか?」


「今から話すことにはあまり質問しないで欲しいんですけど、この大会を妨害する組織がいるとしたら何が目的で何をするのでしょう、」


「なるほど、私が想像出来るのはこんなに大きい大会だから自分の組織を世に知らしめるとかかしら。けれどそんなことをしてもここには大陸中の剣士が集まっているし、すぐに正義感の強い剣士や主催の人たちが捕まえてしまうと思うわ」


「じゃあもし、この大会で何かが起きたら手を貸してくれませんか?」


「えぇもちろん!悪いやつは大っ嫌いなの。だからしっかりイースとアイルに頑張ってもらうわ」


 確かにここには様々な国から強者が集まっている。しかし、奇律二十八断章の「無光の魔剣」は見た限りアイルゴーンと同格の強さを持っていた。正面から戦えばアイルゴーンに軍配が上がるが、影の力による気配のない状態は相手に出来ない。

 そうしてその日はペルヴェリンの動きを確認することは出来ないまま二回戦は終了した。


「ちくしょう!こんな所で負けちまうなんて、お前との約束を守れなかった俺が情けない!」


「キアットは頑張ったと思うぜ。お前の分まで俺が頑張るからさ、とりあえず飲もう」


「どんまいキアット。今夜は泣いてもいいぞ、」


「絶対泣いてやらねぇけど悔しい!」


 キアットは負けてしまった。油断をしていた訳ではなく正面から戦って負けてしまったのだ。大会のレベルは高い。ウミオチでさえモナレンのドーウェン騎士団団長ザクスと戦い半刻の激闘の末、降参させて勝つことが出来た。

 そして私は今日試合の後、キアット含む本戦の敗退者たちにペルヴェリンが何かしら大きい動きを見せる可能性があることを伝え、もしもの時に協力してくれることを約束してもらった。ペルヴェリンは間違いなく大きな事を起こす準備をしている痕跡があった。賭けではあるが戦力を用意はしておいた方が良いだろうから。


「大会はとうとう準々決勝までやってきたぁ!!第一試合はコルトル対アイルゴーンだ!!どちらもオーラ使い。白熱すること間違いなしだ!!!」


「アイルー頑張ってー!!私たちが応援してるわよ!!」


「メルニーク見ててくれよ。『火剣』の名に賭けて絶対に勝ってやる」


 メルニークたちが応援する場所にエリセツアはいなかった。その頃エリセツアはナイガトピンの時計塔の上にいたのだ。


「おっ。あそこにもペルヴェリンらしき奴らがいる。あの配置からして動き出すタイミングはまだ先だな。それにしてもペルヴェリンと私には因縁があるのだろうか。旅に出てから散々関わってきたな」


「ほう、どうやらペルヴェリンの下っ端どもはこんな幼い魔女にバレるほどボケたのだな」


 音もなく、突然現れたのはフードで顔を隠した灰色の髪が垣間見える少年にも少女にも見える怪しげなやつだった。


「お前はヴィアレンだな。こうして話すのは初めてだな。ルグニカから何か連絡があるのか?」


「前会った時とはまるで別人だな。まぁそれはいい、あいつからお前に伝えたい情報というのは捕縛するやつについてだ」


「誰が動いてるのか分かったのか?」


「奇律二十八断章『吸血の歯波』序列は十位だ。奴は組織の中でも部下の数が圧倒的に多い。そして今回の目的はおそらくルグニカの暗殺だ」


 ルグニカの暗殺?それならルグニカは自身の身を守るのに専念すれば殺されることなどないだろう。もしや特別冒険者と言う立場が事を複雑にしているのだろうか。


「つまりその十位と部下を捕縛すれば良いんだな。あと前から気になっていた事があるんだが、」


「何だ?でも答えられることは限られるよ」


「ペルヴェリンという組織は一体何が目的で行動しているんだ?王子の暗殺や一級試験の妨害の共通点が分からない」


「詳しくは答えられない。でもこれだけは言えるのはペルヴェリンは世界の均衡を守るための組織だと言うことだ。それを壊そうとする者は徹底的に排除する、そう言う組織だ」


 つまり今回の暗殺はルグニカが均衡を乱すほどの存在だからと言うことか。そして王子の暗殺や一級試験の妨害、ミロス学園の襲撃も具体的には分からないが均衡を守るための行動、今の私には全く理解できないな。


「じゃあね一級冒険者エリセツア。これから僕と関わることはないだろうけどね」


 そうしてヴィアレンは時計塔から飛び降り、私が下を見た時にはもうその姿はなかった。それにしてもヴィアレンのルグニカに対する忠誠心はあまり感じられなかった。眷属にするというのはそう言う物なのだろうか、正直私からしたらあの少年が裏切る可能性は大きいと感じた。

 まぁ性別も力の底も見て理解することはできた。きっと正面から戦っても負けることはないだろう。当時の私が見て分からなかったのは、見る気がなかっただけなのかもな。


「『吸血の歯波』か。そいつの姿が確認出来ないと言うことはまだここに来ていない、それか何者かに変装しているのかもな、」


 情報のおかげで大分安心することは出来たが、まだまだ懸念点は多い。私がここまで時間をかけてしまっていると言うことはまだまだ実力不足ということだ。


「準々決勝第四試合勝者はまたしても圧倒的!!ルグニカだぁ!!!」


 夕方になると準々決勝は終了した。残ったのはまたしてもアイルゴーンとルグニカ、しかしウミオチが懸念していた夜灰凡はラゴスハイン一番の剣術天才ロガヘミュに敗れた。そして準決勝に上がる最後の一人はウミオチだった。


「エリセツアー、俺の活躍途中から見てただろ。俺すげぇ頑張ったんだぜ?」


「すまない任務があって。でも本当に凄いじゃないか。正直本戦に上がれたら良いかなぐらいに考えてたのに、」


「ありがとな、俺はこれから負ける訳にはいかねぇ。ロナウゲートに言われた事のためにも決勝まで上がってやる!!」


「明日はしっかり見ているから精霊と一緒に頑張ってね」


 私はウミオチには何も気にせず試合に集中して欲しかったので何も伝えなかった。本当は戦力は多ければ多いほど良いのだが、多すぎて敵にバレてしまっては元もこうもないし、ウミオチはまだ子どもだから未知の敵と戦わせたくない。スピリアの時は私の記憶がなかったせいで危険性を忘れてしまっていたけれど、本来命を賭けるほどの戦いに若人を巻き込んでいいはずがないんだ。

 私は他の同年代やそれ以下の年齢の剣士や魔法使いとは違う。大人だから仕事は責任持って取り組まなきゃな。

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