66話「ルグニカからの依頼」
「ルグニカ様、我々の部隊が先ほどペルヴェリンの動きを確認しました。いかがなさいますか?」
「今回はちょいとばかり厄介だ。全ての部隊を撤退させよ。俺が単独で動く」
「しかし、それでは科学院とプロテクトオーダーにペルヴェリンに関する情報を譲ることになりかねません」
「いや、あいつらじゃペルヴェリンを止められん。俺はとあるやつに協力を依頼するから心配するな」
そうしてルグニカは観戦席の方を見て、ニヤリと笑った。
「おめでとうウミオチ!精霊の剣カッコよかった!」
「はぁ、とうとう出してしまった。精霊剣士って珍しくて便利だからこき使われる可能性があるって師匠が言っててさ、目立たないように今回の大会でも極力控えようと思ってたのに」
「でもこの大会はウミオチ以外にも珍しいやつがたくさんいたし、結果的にはそこまでなんじゃない?」
「確かにな。特に幽林の呪力剣とかルーサットの暗黒剣は凄かったもんな」
誰が勝ってもおかしくないような熱い展開がたくさんあって想像よりも面白かった。でもやっと初めて見たルグニカの戦いは別格だった。
「エリセツア、ルグニカって人間じゃないだろ。瞬間移動ってぐらいの速さでラーダルテールの後ろに回り込んで、柄で殴って気絶させたんだぜ?あんなの剣術大会の域じゃないだろ」
「ルグニカはモナレンの最高戦力だから負けたら国の威信が下がるんだよ。それに大陸で二人しか公表されてない特別冒険者だからね。その二つの意味の重要性を大衆に認知させるために大会に出てるんだと思う」
「何だか面倒くさい話だな」
「何だ何だ俺の話か?冒険者たちよ」
私たちが道端で話しているところに現れたのはまさかのルグニカだった。
「ほ、本物!?お、俺に何か用があんのか!でも戦うなら決勝でやるつもりだからな!!」
「ビビってるの丸わかりだよ。それで初めましてルグニカさん。私はエリセツアです。と言うか私のこと知ってますよね?」
「はっはっは!今日用があるのは一級冒険者のエリセツア、君だ。ロジやアリックから話は聞いてる。実際に見てみると噂が本当か疑ってしまうな」
「あの馬鹿にしてます?」
ルグニカの態度はデリカシーのないロジと言う感じでムカついたが、冷静になろう。まず用と言うのは、一級冒険者を強調したことを考えると任務の依頼だろうな。でも特別冒険者ともあろう人間が私を必要とするのは何故だろう。
それからルグニカは出来る限り隠密にするためにウミオチを宿へ戻らせ、私とルグニカの周囲に防音結界を張らせた。
「一級冒険者エリセツアにはある任務を依頼する。そして今回依頼する任務は君でなきゃいけない。何せペルヴェリンとの接触が多いかつ強い人間は限られているからな」
「具体的には何をすれば良いんですか?そもそもペルヴェリンが動いていることなんて私知らないんですけど、」
「俺の情報網を舐めたらいけない。昨晩一級冒険者キアット、エリセツア、三級冒険者ウミオチが第三地区予選での違和感やヴィアレンと黒魔法について会話しているのは確認済みだ」
どう言うことだ!?一体どこから聞かれていた?私は盗聴や監視には敏感で絶対にそう言うのには気づくはずなのに、
「あ、ちなみにこれはキアットに直接聞いたんだ!盗聴したとかそう言うのじゃないから安心しろ」
「ビビらせないでくださいよ。と言うかヴィアレンの話が何故ペルヴェリンと関係があるんです?」
「それは簡単だ。ヴィアレンはペルヴェリンに属している奇律二十八断章の一人だからな」
「え?」
奇律二十八断章、ペルヴェリンの幹部二十八人を表す言葉であり、神聖ミロス学園では十六位と二位が襲撃を企てていた。十六位は私の目を掻い潜って、油断していたスピリアを刺した。
つまり奇律二十八断章は私も本気にならないといけない相手だ。そんな奴らの一人がヴィアレン?
「ヴィアレンは二重スパイでな。そもそもペルヴェリンが一級試験の妨害のために、送り込んだのがヴィアレンだった。その結果、証拠がないだけで明らかに怪しいヴィアレンを俺が特別冒険者の権利で尋問した。その結果、奇律二十八断章は代表に聖なる力による拘束をされていることが分かり、それを無理やり解除し眷属化したんだ」
「あの念の為聞きますけどあなたの能力って何ですか?」
「まぁ君になら教えても良いだろう。俺はな、魔王の能力を受け継いでいる。詳細なことは言えないが俺が相手より強いと証明したら眷属化できるんだ。それでヴィアレンは現在、予選での黒魔法の痕跡を解読させてたんだ」
「何となく状況は分かりました。それで私は何をすれば良いんですか?」
ルグニカは単独でモナレンの最高戦力だと言うのに、それに加えて眷属までいるとなると、世界をひっくり返すことも出来そうだ。確かに父さんと同等の立場なら理解は出来る。
しかし、そんな彼が私を頼らざるを得ない状況って何なのだろう。
「君には科学院とプロテクトオーダーよりも先にペルヴェリンを捕縛、そして尋問してほしい」
「何故それを私に?貴方一人でも可能だと思うんですけど、」
「ヴィアレンはペルヴェリンの代表から繋がれた首輪を抜け出した状態だ。おそらく俺がやったことも気づかれ対策されているだろう。でも君になら出来るだろう?」
「どうして貴方はそこまで信頼でき、、まさか両親の知り合いですか?」
「ヒョウセウさんから聞いたんだ。娘は万能かつ最強だから困った時は頼ると良いってな。ってことでよろしく頼むぜ」
そうしてルグニカは一瞬にして目の前から消え去って行った。私は宿へ戻り、一旦考えることにした。分からない事だらけで私はウミオチに心配されたが、とりあえず明日は大会の観戦よりもペルヴェリンの動きがあるかどうかに注目しよう。ルグニカは大会に出場するからペルヴェリンもそこまで警戒しないはずだから意外といけるかもな。
そうして日が昇り、本戦の二回戦が始まった。
(ミロス学園での交流戦を思い出すなぁ、あの時は魔道具を使ったんだよな。でも今回は魔道具破りの魔道具がある可能性もあるから、私の力量次第だな。まずは敵の目的を考えよう)
「二回戦第一試合は!一級冒険者の魔剣士キアット対ギデローウィンド城の城主コルトルだ!!」




