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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第4章 ポリスイナ水上国編
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65話「ウミオチの本気」

「俺魔法とか詳しくないけど確かあんま良くないって言われてる魔法だよな?」


 黒魔法、それは呪いと近しいものであり、効果自体は同じだ。ただそのエネルギーとして使われるのが魔力なだけだ。

 しかし黒魔法を使う者はとても少ない。魔法を扱う者として黒魔法は倫理に反し、邪道とされているからだ。そして私が使い方を知らない魔法でもある。


「まさか、ヴィアレンがいたのか?」


「そうだ。一級試験では監視の目から逃げ切り、倒された魔物の痕跡からヴィアレンだと断定され合格したエリセツアと同期の一級冒険者。あいつも黒魔法を使っていた」


 当時の事件は、生きた魔物を召喚し、操れる黒魔法があることから黒魔法使いヴィアレンがギルドと私たちが疑った。しかし全く証拠がないため、事情を聞かれて終わったらしい。


「当時の私が実力を読み間違えたのか。そもそも性別さえ私が読めなかった」


「エリセツアにそこまで言わせるなんてまじでどんなやつだよ。なんかやばいことになってくるんじゃねえのか?」


「今回の大会の様子を見る限りクローリー科学院と大陸プロテクトオーダーが何かに備えているのは間違いないだろうな。まあもし何か起きてもここには強者が集まってるし第三者がどうにかできる者でもないけどな」


 そうして私たちは気を取り直して乾杯した。正直私がかなり懸念していた。実力を読めない者と言うのは魔法使いとして記憶を取り戻す前の私が勝てない相手という証拠になる。しかもあの時点でも私はかなりの力を持っていた。

 もしやヴィアレンは特別冒険者と呼ばれる人たちほどの者なのかもしれない。

 そんな不安を抱えながら眠り、次の日のウミオチの試合が始まろうとしていた。


「君だけのルーブローズ剣術を研究させてもらうぞ少年!!」


「アイルったら、大人気ないわ。それにもうちょっと周りを意識してよね?」


「メルニーク様、こいつを追い出しますか?」


「気遣いありがとうねイース。けれどそこまでしなくてもいいわ、あはは」


 本戦の一試合目も一瞬で終わらせたアイルゴーンはメルニークたちと一緒に観戦をしていた。相変わらず真面目で冷静なイースドランと調子に乗ったアイルゴーンはどちらともメルニークを困らせていた。


「それでは砂漠のガーディアン、ナーツ対ルーブローズ剣術のルーキー、ウミオチの試合が始めるぞー!!!」


 ウミオチはこの時、迷っていた。純粋な剣術だけでは相手に勝てるかどうか分からなかったからだ。剣の力は剣術だけではない。魔力やオーラ、影の力など様々な力をと並行して使うことが出来る。その中でもウミオチが今まで隠してきた秘技がある。


「試合開始!!」


 ナーツとウミオチは合図と同時に駆け出しぶつかり合った。速さは互角だが、ナーツの力の方が強くウミオチを弾いてしまった。


「聞いたことあるぜ、その力は聖遺物によるものだろ?」


「物知りな坊やだね。女ってのはね、どうしても身体能力が男よりも劣ってしまうんだ。だからこそ私は鍛錬し、足りない筋力を聖遺物で補ったんだよ!」


 人間の強さは身体の外側の強さと内側の強さの掛け算で決まる。外側である筋肉や骨を鍛えることで基礎的な身体能力を手に入れ、内側である魔力やオーラと言った実体のないものの操作力を高めることで魔法やオーラを使うことができる。

 だからこそ外側のみ、もしくは内側のみしか鍛えない者よりもそれらを両立した者が強くなれるのだ。


「もったいぶらないで坊やも本気を出したらどうなんだい!手加減してるのが丸わかりだよ!」


「分かったぜ見せてやるよ俺の本気!」


 するとウミオチは剣を目の前に掲げ目を瞑り、何か唱え始めた。


「エリセツアさん。少年は何をしようとしているの?何か願ってるみたいね」


「私もウミオチから聞いた訳ではありませんが、何となく予想していて、それが今確信に変わりました。あいつは精霊の加護を受けています」


 今までウミオチと過ごしていて、違和感に感じだことが多くあった。最初会った時、ウミオチは何故か犬に吠えられ海に落ちてしまった。今考えればウミオチが落ち込んでいたことで精霊たちも不安定化し、人よりも精霊に敏感な小動物が反応した事でウミオチは海に落ちてしまったのだろう。そしてワイバーンを討伐しようとした時、ウミオチは森に入る前からワイバーンの殺意に気づいていた。あれも精霊の加護による感覚強化の影響だ。そしてナイガトピンに来る時に私はウミオチに抱っこされたがウミオチの体温は温かかった。常人ではあり得ないし精霊による身体保護だったのだろう。

 そしてあいつの構え、あれは幼馴染の一人であるスピカと似ていた。スピカは精霊術師で精霊の力を使う時に杖を構えてウミオチと同じようにしていたから。


「花の精霊たちよ。剣に宿りたまえ」


 剣は光りだし、フローラルな香りが会場を包み込んだ。そして剣は鮮やかな桃色へと変化し、ウミオチの表情は覚悟を決めたようだった。


「あれが少年の内なる力。精霊剣士をこの目で見るのは初めてだよ」


「本当に凄いです。私はウミオチを過小評価していました」


 真の力を解放したウミオチは試合を観戦していた参加者たちに緊張感を走らせ、対戦相手のナーツは手が震えていた。


「ルーブローズ剣術『誇り高き椿』」


 ウミオチのその剣は堂々と物凄い速さでナーツへと向かい、それまで攻めの姿勢しか見せなかった彼女が咄嗟に防御してしまうほどだった。


「くっ、なんて威力だ、、こうなったら引くに引けないようだね!」


 ナーツは聖遺物の力を完全解放し、ウミオチの攻撃に耐え切る事に専念した。


「お姉さん、この勝負もらうぜ!!」


 ウミオチは更に剣技の出力を上げ、ナーツの防御を押し切った。


「試合しゅうりょーう!!勝者ウミオチ!!」


 会場は更に盛り上がり、見ていた観戦者たちは立ち上がって叫びだした。


「ほお、あいつはアイルゴーンと並ぶ、いやそれ以上のポテンシャルがあるな。ふふ、今年も楽しめそうだ」


 そう会場のてっぺんから腕を組み、見下ろしていたのモナレンのギルド長ルグニカだった。


「はぁあ。それにしても俺としたことがせっかくの大会なのに、仕事があるとはな」


 するとその後ろからルグニカの部下であるアリックが率いる部隊が現れた。

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