64話「本戦と裏」
予選の結果が出た次の日、とうとう本戦が始まろうとしていた。
「今年も各国からとてつもない猛者たちが集まったぞー!!!第一試合の一級冒険者の魔剣士キアット対ペットルー傭兵団団長ゾラストームは一時間後だ!!」
「俺が最初かよ。ウミオチ、俺はお前と戦うまで負けねえからな。っておい、聞いてんのか?緊張で固まっちまったか?」
「ん、あぁ大丈夫だ、問題ないぜ。それより相手はあのゾラストームか。傭兵やってた時に噂で聞いたことがある。傭兵の中だったらトップクラスに強いらしいぜ。頑張れよ」
やっべぇ今日の俺、全然集中出来てねぇな。俺の剣術は集中力がねぇといけない。
ウミオチは自分の頬を叩き、冷静になった。
「ウミオチくんだろ君の名前。俺のこと覚えてる?」
「火剣!?俺があんたに会った時名前は言ってなかったはずだが?」
「実は一昨日の試合、君の仲間のエリセツアと一緒に見てたんだ。その時に名前を教えてもらったんだよ」
「エリセツアとあんたが?あいつは顔が広くてすげぇな。でもあの火剣が俺みたいな剣士に何のようだ?」
ウミオチはアイルゴーンの剣士として漂う強い圧に対抗し、睨みつけた。
「いや君たちの関係性からして付き合ってるのかなって思ってからかおうとしたんだが、どうやら効き目は薄いな。まあそれもあったが、君の剣術が気になったんだ」
「ロナウゲートに聞いたぜ。この世にはもう本物のルーブローズ剣術が存在しないらしいな。でも俺は自分の剣術が本物だって信じてるぜ」
「疑っているんじゃないんだ。剣士ってのは最強の剣術に憧れるものだ。だから君の今まで見てきた中で最強の剣術を剣を交えて感じてみたい。だからこの大会で当たらなかったら個人的に僕と模擬戦してみないか?」
「それ今言うことかよ。ちなみに返事はまだ出来ないぜ。エリセツアに聞いてみないといけないからな」
そう言うと、笑みを浮かべると火剣アイルゴーンは赤いマントを靡かせ、去っていった。
(もしかして俺が集中出来てねぇから、和ませようとしてくれたのか?)
その頃、エリセツアはメルニークとイースドランと共に試合の開始を待ち侘びていた。
「あなたの『踊るオルゴール』は凄いわね!こんなのどんなに珍しい宝石よりも価値があると思うわ!」
「北方の国々では魔法の一般化がまだまだ進んでいませんから珍しいでしょう。しかしモナレンやダリナーの都市にある魔道具店には結構あると思いますよ」
「魔道具店と言うのもあるのね。いつか私たちの国でも店が出て欲しいわ?いっそ私が魔道具店を開いて見ようかしら」
「メルニーク様、アーチウムでは平民の魔法使用は禁止されています。現実的ではないと思いますよ」
イースドランはそう冷静に告げると、メルニークは深く落ち込んだ。彼女は民を大事に思う人間であり、それは貴族も平民も差はない。エリセツアはそんな彼女のちょっとした夢が叶ってほしいと願った。
「それでは第一試合!キアット対ゾラストームの戦いが始めるぜ!!ルールは簡単。降参するか戦闘不能と判断された方の負けだ!」
「キアットー!!!頑張れー!!!」
私は珍しく大きな声でキアットを応援した。キアットは冒険者としての先輩で、大して仲が深いわけでもないがスピリアと三人で雨の中バーベキューをしたのは大事な思い出だ。スピリアのことを聞かれた時は説明するのには時間がかかってしまったが、いつかまた三人で会えたら良いと思った。
「じゃあ私たちもキアットさんを応援しましょうか。それにイースも同じ魔法を使う者として応援するべきよ」
「私はメルニーク様が応援する者を応援します」
(イースドランさんはメルニークさん一筋なんだな)
「試合開始!!」
会場の大きな盛り上がりの中、本戦第一試合の魔剣士キアットと傭兵ゾラストームの戦いが始まった。
「ふはははは!!手加減はしねぇぜ魔剣士。オーラ解放!!」
「早速オーラ使いかよ。相当やるみたいだが俺だって負けねぇぜ?氷風よ、剣に纏え!!」
その次の瞬間、熱いオーラを纏った剣と冷気を纏った剣は共に大きな力を放ち、互いの剣と共にぶつかり合った。それによって起こされた風は会場中の観客も思わず目を瞑ってしまうほどだった。
「魔剣士との戦いは初めてだが、おもしれぇじゃねえか!これが大陸最大の祭りなんだな!!」
「気づいたか!この大会は剣士として参加せずにはいられないほど心が踊るものなんだ!まだまだこれからだぜ!!」
実力は拮抗したが、持久力はキアットの方が上で、最終的に第一試合はキアットが勝った。会場は一試合目からクライマックスでエリセツアたちもハイタッチし合っていた。
そして騎士団長や放浪戦士、侍と言った様々な名のある剣士たちが戦って行き、本戦初日は終了した。
「どうだ俺の本気は?ウミオチ、エリセツア。褒めてくれても良いんだぜ?」
私たち三人はキアットの勝利を祝うために私とウミオチが泊まっている宿で乾杯した。二人は大会のせいでよく話しかけられるため、こうして、こじんまりと祝うことになるのは残念だな。
「凄かったぜキアット!魔法と剣、両方とも強いなんて最強じゃないか!」
「確かに剣に魔法を纏わせる技術も凄いが、何よりも魔法の手数だ。剣術に合わせた魔法を組み合わせるなんてとても器用だ」
私は単純にキアットを尊敬した。剣と魔法、二つは一般的には相対するものでどちらかを極めると言うのがセオリーなのに二つとも学び、それを生かすことが出来ると言うのは、流石一級冒険者と言ったところだ。
「そうだ。こっからは真面目な話になるんだがお前らこの大会の空気感がおかしいことに気づいたか?」
「確かに主催側の人間はバタバタしてたよな?」
「それに忘れてたんだけど、キアットの予選での戦いもおかしかったよね」
「この雰囲気は一級試験の時の事件と似てる感じがしてな。共通点を探したんだが、一つ見つけたんだ」
一級試験での八体多かった魔物。ギルドは犯人を突き止めようとしたが、結局手掛かりは見つからず、被害も出なかったので流されてしまった。
「キアット、そもそも似てる感じってどう言う意味なの?直感?」
「一級試験って言ったらエリセツアとキアットが出会ったってやつだろ。話聞く限り関係なくないか?」
「あの予選の後、気になったから第三地区の俺が襲われた場所を見に行ったんだ。すると黒魔法の痕跡が見つかったんだ」




