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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第4章 ポリスイナ水上国編
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62話「ロナウゲート」

 エリセツアたちや観客たちは姿の見えないロナウゲートに疑問を抱いていた。あれほどの神々しい剣が目立たない訳ないからだ。

 それは参加者たちも同じだった。


「少年。俺はもうある程度戦えるようにはなった。でもまだあいつが出てきていない」


「聖剣使いだな。火剣が抜けた今、一番の脅威は間違いなくそいつだ。でも何故まだ大きな動きを見せていないんだ?」


「おそらくやつは聖剣を予選に持ち込んでいない。狙いは優秀な成績を持っているやつだ。火剣が勝ち逃げした今、狙われるとしたら誰だと思う?」


「そう言うことか!燃えるぜ。キアットは休んどけよ」


 そう、聖剣使いロナウゲートは自慢の聖剣を使わずに予選を突破しようとしているのだ。そうする理由をまだ誰も理解出来ていないが、その場合の予選を突破する方法なら簡単だ。


「魔剣士キアット!!やっと見つけたよ。今年は聖剣を使わずとも君を倒してしまう!」


 住宅街の家の屋根から突如現れたのは、予想通り、聖剣を持っていない、聖剣使いだった。


「聖剣使いロナウゲート。俺はキアットと手を組んだんだ。残念だが俺が相手になるぜ」


「誰だ君は?井の中の蛙とはこう言うことだな。まだ世界を知らない子どもは聖剣がないからと言って僕に勝てるとでも?」


「はは言ってくれるぜ。お前に聖剣があっても俺の方が強い!ルーブローズ剣術、秋桜の愛情」


 ウミオチの剣、ルーブローズ剣術はその名の通り剣聖ユージオの剣術だ。その剣の伝説は今でも語り継がれ、二百年が経った今でも多くの剣士が学ぶ様な、王道の剣。

 それはウミオチの性格とは真逆で冷静で美しさを持つ。まるで秋桜が咲く青空の様な穏やかさの中、突如として吹く、激しい風だ。


「ガキだからって舐めてると痛い目見るぜ?」


 ウミオチは一瞬で屋根まで飛び、ロナウゲートの懐に入り込んだ。


「やるね、評価を改めるべきだった。君を敵を脅威と見なそう」


 ロナウゲートもすかさず抜刀し、剣を塞いだ。


「聖剣使いなのに刀も使えるのかよ。流石に大陸規模の猛者たちはレベルが違うな」


「君こそ、その若さで相当なものだ。そのルーブローズ剣術は今まで見てきたものとは全く違う。もはや本物のルーブローズ剣術と言われても信じてしまうよ」


「は?そりゃあ俺の剣術は本物だ。まだ剣術に体が追いつけないせいで未熟だがな」


「おや?君はよっぽどの世間知らずと見える。かつて大陸最強の剣士ユージオの剣術は誰にも受け継がれていない。つまりこの世でルーブローズ剣術と呼ばれるものはユージオに憧れた者たちの儚い夢なんだよ」


 ウミオチはその時、深く考えた。自分の信じた人の使う剣術は自分の使う剣術とは異なるもので教えてくれた師匠もまた、間違っていた。あまりの衝撃で思考が停止しそうになった。

 しかし、ウミオチは強かった。ロナウゲートが攻撃を仕掛けてくる時には思考を放棄し、目の前の相手と向き合った。そして自分の信じるルーブローズ剣術で戦うことを決意した。


「ルーブローズ剣術、鳳仙花」


 ウミオチの使うルーブローズ剣術には八個の型がある。その内、唯一の反撃技である「鳳仙花」は目を瞑らなければならない。なぜなら自分の持つ剣と向かってくる攻撃の二つのみに集中するからだ。

 しかし、一般的なルーブローズ剣術はそれをしない。だからロナウゲートは仕掛けた時にふざけているのか疑った。その一瞬の気の迷いが生じた時にはもう遅かった。

 ロナウゲートの剣がウミオチの間合いに入った瞬間、ウミオチの剣は三回刀を切った。


「な、んだと、、」


「刀は使い物にならなくなった。怪我させない為にはこうするのが手っ取り早いからな。降参しろ」


「そうか、所詮俺は聖剣の力で浮かれていた凡人に過ぎないのか。君たちの勝ちだ」


「は!?少年が勝ったのか!まじか!」


 呑気に体を休めていたキアットは思わぬ展開で腰が抜けてしまった。


「最後に良いかな?僕の名前はロナウゲート。聖剣使いと呼ばれている。君の名前は?」


「ウミオチ。ルーブローズ剣術の使い手だ」


「そうか、分かったよ。良かったらこの予選が終わったら僕と一緒に飲みに行かないかな?」


「まだ酒は飲んだことないけど、良い機会だし飲んでみようかな。分かった!いいぜ」


 そしてロナウゲートは降参を選んだのでテレポートしていった。その時、試合開始から三時間が経過していた。

 一方その時、エリセツアたちのいる観客全員がどよめいていた。


「あの少年が使っていた剣術こそが本物のルーブローズ剣術に違いない。あれほど完璧な剣術は見たことがない」


 アイルゴーンはそこまで言うけれど、私は剣術の深さをよく知らないし興味もそこまでない。だが、確かにウミオチの動きは美しかった。そして私の思っていた通りの剣術だった。

 純粋な剣と己の力のみで戦う。それこそが私の知っている剣術だからだ。


「私の連れはもしかして強いですか?」


「あぁ。ポテンシャルは俺以上だろう。俺みたいにオーラを発現させたら大陸に名を轟かせるだろうな」


「じゃあ昨日私たちが助けてあげる必要なかったのね。何だか上から目線だったかもしれないし、謝りたいわ」


 メルニークさんたちはウミオチの剣捌きに驚いていた。確かにあの年齢では普通、剣術の基本知識を覚えるぐらいがやっとで実戦で使うなんてとても出来ないだろう。けれど私は任務で何度も見ていたし、元々周りの近い年齢の友人たちは皆んな普通ではなかったから感覚が変わっている。


「キアット、俺たちはやれるまでやり切るぞ。目指せ予選一位通過だ!」


「そうだな、目標はでかい方が良い」


 そうして二人は次の朝が来るまで奮闘し、多くの敵と戦っては休み、会場を沸かせた。その結果予選で倒した人数二十七人という中々の記録を打ち立てた。

 しかし誰もが、ロナウゲートに剣術で勝ったウミオチと言うルーキーに注目していたせいで気づく事が出来なかった。魔剣士キアットが集団で狙われていたその理由に。大会の裏ではペルヴェリンが動いていることを突き止めているクローリー科学院と大陸プロテクトオーダーは協力し、脅威に対し慎重にになっていた。

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