57話「いざ中央地域へ」
数週間ウミオチとネフェリアを観光して博士とも話した結果、博士はこの国に留まり私は魔力のことを黙認することにした。
そしてポリスイナに戻る日になった。
「エリセツアさん。次会うのはきっと百年に一度ある『神の宴』という神の眷属の召集会議だ。次は四年後にある。きっと知らないだろうから覚えておくと良い」
「そんなの初めて聞きます。どんなものなんです?」
「主なのは百年間で起こった出来事と大陸の未来についての会議だ。自分で確認しなくても氷の神が教えてくれるだろうから安心したまえ。旅の邪魔にはならん」
他の国の神の眷属に会えるのか、そしたらフローラにも再会できるんだな。そう思うと楽しみになる。それに氷の神はミロス学園での一件以降、沈黙を貫いているし、「神の宴」が近づくと流石に話しかけてくれると思うから、久しぶりに会話をしてみたいな。
「というか地上に戻るための魔法陣はどこにあるんです?」
「私がわざわざ行くつもりのない地上のために魔法陣を作ると思っているのか?私が直々に送り出してやろう」
それから私はウミオチを呼び、博士と別れのあいさつをすることにした。博士はもう研究室を用意してもらい、研究に没頭しているらしい。
「何か発明したら私に教えてください!私は冒険者なのでギルドに手紙を送ってくれたら届くと思いますから」
「分かりました。リボルバー型の箒のようなロマンのある発明は共感してくれる人に教えるのが一番ですからね」
「博士。短い間だったけど俺は博士が好きだぜ。これからも元気にな」
そしてこのネフェリアルムスト王国という不思議な国と別れる時間となった。海の民たちとの仲はある程度良くなり、この国の生活を知ることができた。しかし、まだ分からないことがある。
「イージェス王、最後に一つ聞いてもいい?」
「『不老不死の呪い』についてか。エリセツアさんはそれを聞いたときから神妙な顔をしていたからな」
「バレてたのか、」
「教えてやろう。これは私の過去、まだ私が人間のルムストとして生きていたときのことだ」
イージェス王は意外にも詳しく教えてくれた。そしてその話はおそらく一万年以上前だった。
イージェス王は昔、大陸で魔法使いだった。しかしそれは今の魔法形態である術式を使うものでも直接魔力を変換させるものでもない、サークル型魔法だった。サークルとは心臓に刻まれるもので段階があり、そのサークルの数が多いほど強い。ちなみに私は小さい頃にその話を聞いたことがあったから理解しやすかった。
サークル型魔法は魔塔という四つの組織が管理していた。それも大陸規模だ。そこで青の魔塔に所属していたルムストはある時、上司であった塔主の研究に参加していた。それは永遠の命の研究だった。その過程で塔主に実験段階の『不老不死の薬』を服用させられたルムストは、禁忌を犯した罪で他の塔が問題視した結果、塔主に裏切られ魔塔を追い出されてしまった。そして大陸を彷徨った末に出会ったのが海の民だった。彼らは最初、警戒していたが数日何も飲み食いしなかったルムストを哀れみ、食べ物を与えた。それから関係を築き、最終的に今の形となった。
「別に私は海の民が私に優しくしてくれたからと言って人間を恨んでいるわけではない。あの忌々しいネフェリアが全て悪いのだ」
「つまり、この国の名前は憎む人と自分の名前を忘れないようにするためなんですか?」
「いいや、昔の私とネフェリアは結果は酷くても確かに共に永遠を研究していた。だから永遠に続いてほしいと言う意味を込めてこの名前をつけたのだ」
イージェス王は自分のために生きている訳ではなく誰かのために生きている。それに何の意味があるのか私にはまだ分からないが、多分それが生きている意味なのかもしれない。
「じゃあ送るぞ。また会う日まで」
「ありがとうございました。また会う日を楽しみにしてますよ」
「イージェス王は悪いやつじゃないのは分かってるからな。ありがとうな」
そうして、イージェス王は詠唱もなしに魔法陣を一瞬で描き、それは光りだした。
気づけば私たちはネフェリアルムスト王国に入るときにいた、フーラから徒歩数分の平原だった。
「今は昼時だな」
「ふぁー!久しぶりの日光だぜ。やっぱり俺は日の元で生きるのが合ってるな」
とりあえずすることもないので、一旦フーラに戻ることにした。昼飯をパパッと済ますと、これからのことについて話し合った。
「ここはポリスイナの東端だからね。次は中央地域に行こうと思う」
「ああそれが良い。それでフーラを出るのはいつにするんだ?」
そこで私はふと疑問に思った。ウミオチは何もしたいことがないのか?最初、イルゼ港からフーラへ向かう船で出会った。しかしそもそも家出とは言え、わざわざ国を出るのには理由があるはずなのでは?
スピリアとの旅は最初どこまでも続くと思っていたが、今は学園で私の旅での足手纏いにならないように勉強している。
ウミオチはもう気を置けない友人だ。それが別れる理由になったら嫌だな。でも聞かなきゃいけない。
「なあウミオチって何でポリスイナに来たんだ?」
「ん?エリセツアってそんなことに興味あるのか?」
「いやまぁ、何となく気になってさ、」
「最初は師匠と会いたくなくて遠くに行きたかったんだ。そんな時、ポリスイナでは一ヶ月後に大陸の強者が集まる剣術大会があるって言う情報を聞いた。だからその剣術大会に参加してみようかなって」
別れる理由にはならなそうで良かった。でも待て、一ヶ月後に剣術大会がある情報を手にしたと言うことは、もうすぐなのでは?
「ウミオチ、それっていつあるんだ?」
「え?明後日だぞ」
「は?ちなみにその大会ってどこであるんだ!?」
「それは大陸の中でもレイピアの歴史が最も古いと言われているポリスイナ屈指の剣術都市『ナイガトピン』だ。確か中央地域にあったな」
私が行きたかった中央地域で良かった。距離的にもそこまで遠い訳でもないが問題は残っている。
「フーラからナイガトピンへ行くには山脈を越えなければならないんだ。その山脈と言うのも割と険しい。どうするつもりだったんだ?」
「それなら心配ないぜ。体力はあるからな。それにエリセツアだって魔力がなくても飛べるんじゃないのか?」
「博士から借りたリボルバー型箒でしょ?そもそも箒って高低差が激しい場所には向いてないから結局歩かないといけないんだよね」
「じゃあ俺がエリセツアを背負ってやるよ。見た感じ軽そうだしな」
あまりのデリカシーのなさに若干引いたが、山育ちにそれをどうこう言うのはしょうがないことだ。それに私は小柄で軽いのは事実だ。
「はあ、私を舐めすぎだよ、」
そして私たちは次の日、約一ヶ月近く過ごしたフーラを旅立った。




