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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第4章 ポリスイナ水上国編
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56話「海の国と私の未来」

 イージェス王との歴史についての話を終え、王はシューガイゴ博士とウミオチにもイージェス王の目的をある程度話した。


「つまり?イージェス王は神の眷属だからそんなに強いってことなんだな、」


「神の眷属と言うのは聞いたことある。でもそれが本当であればこの国で最も偉い方であり魔力をどうしようがこの方の勝手なんじゃありませんか?」


「だが私はそうは思わない。確かに神の眷属はこの国の神に認められたからそうなっていて、実際に海の民たちを引っ張っているし王としては優秀だ。でもそのために人間の生活を不自由にするのは違うと思うんだ」


 そうは言っているが、実際にこれが間違っているのか正しいのかは私には分からない。フーラの人たちや海の民は皆んなそこまで不自由な生活を送っていないし、このままでも良いように見えるが私が言いたいのはそう言うことじゃない。


「エリセツアさん、君の言いたいことは分かる。神の眷属は俗世で最も神に近いから、基本的に人間の文明に干渉するのは御法度だという暗黙のルールと言いたいのだろう?」


「じゃあ分かっているなら何故そんなことをしたんです?」


「それは私が他の神の眷属たちよりも長く生きてきたからだ。君たちになら話してやろう。私は『不老不死の呪い』によって死ぬことの出来ない一万年を生きる人間だ」


 そう聞くと、ウミオチはポカンとしていた。博士は不老不死という言葉に反応し、興味を持っていた。しかし、私は危機感を感じていた。

 不老不死、、そんなものは存在しない。して良いはずがない。この世界のルールを崩してしまうから。


「エリセツアさん。話すべきことはもう全て話したのだ。君は察しが良いから私の気持ちは理解してくれるだろう」


 この国は不安定なもの同士が上手く重なって平和がある。それは長く生きてきたイージェス王の努力の賜物だろう。私は神の眷属という大きすぎる立場の価値観を勘違いしていたのかもしれない。

 しかしそれは仮初の平和であり、不安定要素が一つでも増えれば一瞬にしておかしくなってしまう。私の杞憂であれば良いことを願っている。


「じゃあしばらくの間、ここを監視させてください。博士が満足いくように生活出来るかどうか、この国がポリスイナに悪影響を与えないかどうかをね」


「実は最初からそのつもりだったんだがな。魔物たちの暴走のせいで言うタイミングがなかったのだ。ウミオチくんと博士も部屋を貸してやろう」


 次の日から私たちはこのネフェリアルムスト王国を偵察することにした。イージェス王が住み、私たちと数週間泊まるこの神秘的な城はアラントランキャッスルと言うらしい。その下には白と水色の家が鮮やかで綺麗に並んでいる。城門は魔物たちの侵入を防ぐために全方向に設置されており、門には何重もの扉があるらしい。


「ウミオチ、どこか正直この国どう思う?」


「エリセツア、俺こんなの初めてだぜ。この国は綺麗すぎるんだよ」


「まるで夢の世界に来てしまったような感覚だ。イージェス王が大事にするのも納得できる」


 海上からの太陽の光は届かずとも魔力による擬似太陽があり、空気はどこかからか繋がっている海上と常に入れ替えているから人間にとっても過ごしやすい環境なのだ。そして何よりこの国を囲っている泡のような結界はイージェス王が創り出した自立型の生命らしい。

 神の眷属が生命を創造できてしまうということは私にもできるということか、、恐ろしいな。


「エリセツア、俺なりに考えたんだけどさ、博士のおっさんがここを気に入ったんならそれ以外は現状維持でもいいんじゃないか?ポリスイナに今更魔力が戻っても混乱を生むだけだろ」


「ウミオチ、ポリスイナとこの国は完璧のように見えて脆いんだ。その証拠に昨日、魔物たちが襲撃をしてきた。あれは魔力の密度が不安定が故に起こることだ。魔力が多い場所に向かってしまう魔物の本能によるものだからね」


「じゃあエリセツアはどうするべきだと思ってるんだ?」


「この不安定な状況で変化しようとしたら逆にネフェリアとポリスイナが危機的状況に陥りやすくなるだろう。正直これ以上はイージェス王がどうにかするだろうし私は干渉しない方が良いと思ってる」


 あくまで私は旅をする魔女だ。その過程で神の眷属という身分を手に入れたに過ぎない。一国を揺るがすほどの事件は神の眷属が干渉するべきとは分かっているが、氷の神は何も言ってこないから私は関係ないんだ。


「ま、ネフェリアとポリスイナに緊急事態が起こったら私もちょっとは何かするよ。今は観光を楽しもう」


「それもそうだな!よし、次は城下町で昼飯にしようぜ!」


 それからと言うもの私はウミオチのおかげで純粋に観光を楽しむことができた。たまには楽観的になるのも悪くないのかもしれない。というか常に楽観的だった方が幸せなのかもしれない。


「エリセツアー、本音を言えるなら俺は肉が食いたい。魚しかないんだよここ」


「しょうがないな。確かストックがあったはずだ。これは私がダリナーで買った鶏肉を香りのする葉っぱで包んだ料理だ。名前は覚えてないのが残念だが相当美味しかった。特別に上げよう」


 実はダリナーまで使っていた食材を乾燥させて長持ちさせる魔道具は肉や料理には使えなかったから、自分で改良して全ての食べ物を保存させる方法を考えた。

 その結果、母さんのくれた懐中時計の別空間に何かを保存するという空間魔導術と時間魔導術の応用がヒントとなり、私なりに工夫し、乾燥させて長持ちではなく時間を止めて保存するという方向性に変えた。


「まさかこんな小さなバッグが別空間に繋がってるなんて誰も思わないだろうな」


 ミロスで暇してた間に作りあげたこのバッグ。母さんのような魔力という物質ではない物を保存させる代物はできなかったが、私のでも十分凄い。


「ありがとなエリセツア、、もしゃもしゃ、美味い!!」


「まだまだウミオチは子どもだったな。私は考えることが多すぎて大事なことを忘れてしまうのが悪いくせだ」


「そういうエリセツアは見た目の割に大人びてるって言うか一人前って感じがして凄いぜ。今まで何してきたんだよ」


「そっか、この国に来るまでの話をまだしてないんだったな。いいよ。私は最初、モナレン王国のペルファ村から旅立ってね、、、」


 それから私の冒険の数々を聞いたウミオチはとてもワクワクしていた。まだ一年も経っていないのに私は色んな経験をした。きっとこれからもそうなるだろう。

 ダラダラしていては人生がもったいないな。

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