53話「海の魔王」
「ふうん、どうやら予想通りだったようだ。もう話すこともないし君たちには伝達使になってもらう」
「いくら幼いとは言え、我々を侮るとは何たる屈辱!死んでもらうぞ」
暗殺者たちは槍と共に私に襲いかかってきた。
「侮っているのはどっちか教えてあげよう。幼い魔法使いにしか見えない私が敵を圧倒してしまうさまを」
私は影の力を使い、素早く避け、分身を三人作り出した。そしてすかさず、四人の私が三人の暗殺者に向かって、束縛の呪いを発動した。
「『今から貴方たちは私が許可したこと以外は話してはならない』」
暗殺者たちは必死にもがいているが、これは呪いだ。力ずくで解けるものではない。私が魔法使いに見えるのも分かるし、実際魔法も使うが、私は特殊な力を使う。手の内を晒すのはあまり好きじゃないが相手が殺す気で来るなら話は別だからね。
「じゃあ聞くが何故私を殺す必要がある?」
「我々はイージェス様の命令に従ったまで。イージェス様の国にお前たちを連れて行かなければならない。従わないなら殺してでも連れてこいと言われたのだ」
「でもお前たちは真っ先に私を殺そうとしたよな?どういう事だ」
「イージェス様は慈愛に満ちた方であり、人間でさえ殺すことを躊躇う。しかし、そのせいで我々が苦しめられていたことを忘れている。だから我々の独断で暗殺すると決めたのだ」
なるほど、敵の頭は話が通じるのかもしれないな。しかし、問題は、、
「さっき『お前たちを連れていかなければ』と言ったな。つまり博士とウミオチにも同じようにしたのか?」
「博士とやらはイージェス様が捕虜として捕えろとおっしゃった。しかしそのウミオチとやらはおそらくもう死んでいるだろう。あいつに価値はないからな」
何だ、博士は殺されていなかったのか。この程度の実力ならウミオチは負けないだろうし、心配無用だな。でも捕虜と言うのはどう言うことなのだろうか、この暗殺者たちは知らなそうだしなぁ。
「エリセツア大丈夫か!!さっき、暗殺者が襲ってき、、はあ、まあそうだよな」
私を見るなりウミオチは胸を撫で下ろした。予想通りウミオチも暗殺者を撃退できたのだろう。
「ウミオチ、安心はしてられない。博士がこいつらみたいなやつに捕まったぞ。今すぐ助けに行かなければならない」
「おおそっか。俺も襲った奴らは捕まえたぜ。それじゃあ、案内させよう」
「もちろんだ。おい、お前ら。殺されたくなけりゃ今すぐお前らの国へと連れて行け」
「ちっ、、」
流石に死ぬのは恐れたのか渋々地図を開き、イージェスとやらがいる本拠地を確認することが出来た。しかし、その場所は地図上では何の変哲もない平原であり問い詰めて見ても来てみれば分かるとしか表すことが出来ないらしい。
それにしてもウミオチは思ったよりも対人戦に慣れているらしいな。正直、記憶を取り戻した私でも対人戦は少し怖い。
「おい俺たちを嵌めようとしてるんじゃねえだろうな」
「見ておれ人間ども」
そう言って暗殺者たちはよく分からない呪文を唱えると、平原に魔法陣が出てきた。これは間違いない。博士たちと見たのと似た魔法陣だ。どうやら魔力を奪ったやつとこの魔法陣を張ったやつは同一人物のようだ。
「やっぱり転送魔法か。しかしこれの張った者は相当魔法陣に対しての理解が深いようだ。もしかしてそのイージェスってやつがこれを張ったのか?」
「ああもちろんだ。我々のネフェリアルムスト王国は全てイージェス王が創造したものであり、我々は数多の眷属の一つに過ぎない」
「でもお前らは王様の命令を守ってないじゃねえか。俺らが殺さなくてもそいつに殺されるんじゃねえのか」
「あの方を何も分かってない人間め。殺されるのは我々ではなくお前かもしれないな?」
転送魔法で送られた先には空がなかった。というかこれは海の中にあるのか、、どうやらポリスイナ付近の海に結界を張り、そこからフーラと繋がっていたらしい。
「ここが我々のネフェリアルムスト王国だ。お前らのような下賤な人間が本来立ち入れる場所ではないと理解するが良い」
「海の民は皆んなそのようにプライドが高いのか?それともお前らが命を私たちに握られていることを忘れている愚か者なのか?まあどちらにせよ、愚かなことには変わりないか」
「何だと人間!貴様らなどイージェス様が手を下せば一瞬で殺されるのだぞ!」
どうやら、脅し方が甘かったようだ。そうだよな、私はウミオチのように威厳がないんだ。筋肉もないし身長も小さい。一体どうするべきか、、
「ほう、やっと会えたな。剣士と魔法使いよ。君たちがやって来てくれることを私は楽しみにしていた」
「おや?その様子を見るに貴方がイージェス王とやらのようですね」
速かった、というか気づけなかった。おそらくお得意の転送魔法か。これは厄介だな。
しかし、他の海の民に比べて優しそうな雰囲気だ。それを隠すために仮面をかけているのだろうか?
「まずは私の城で話をしようじゃないか、平和的にね。私の近くに来たまえ。転送魔法で送ってやろう」
私とウミオチは言われるがまま、ついて行くことにした。ウミオチは常に警戒しているがそこまで心配しなくても良いのかもしれない。何故ならこのイージェス王は海の民ではなく人間だからだ。
「陛下!一体どういうことです!?人間がこの国に入国することは認められていません!」
「イガールフ宰相、王は私だ。国のルールも私が決める。このことを忘れたのか?」
イージェス王は思いっきり宰相を威圧し、黙らせた。部下を黙らせるだけでなくこの様子を私たちに見せつけて王としての威厳を知らしめた。帝王学を習得し、転送魔法を使いこなす強者か。
敵に回したら相当厄介な相手だな。
「ここは客間だ。君たちはその席に座ってくれたまえ。礼儀は気にしなくても良い」
「イージェス王、私たちに暗殺者を寄越しておいてどういうつもりですか?あなたが命令していないとは言え、私たちは危険な目に遭い、博士が誘拐されているのに」
「おい!陛下に向かって何と無礼な!」
「イガールフ!!貴様は下がっておれ」
宰相はそのまま追い出されてしまった。様子を見るに私たちを相手にするのはイージェスに取っても楽なことではないと理解しているようだ。
「すまない。その博士とやらは元々私の計画にどうしても必要な人材だったんだ。あの者は類い稀なる才能を持っている。しかし私の国を探ったのも事実だ。だからあの才能をここで活かしてもらいたいと思っている」
「あなたの国について探ったのは私も関係している。それだと私やウミオチも捕まらないといけないのでは?」
「君は分からないのかもしれないが私は神の眷属なんだ。だからその、似たような者を見ると察せるのだ。そのような者を捕まえるなんて私が神に怒られてしまう」
神の眷属だと!?最初見た時から何となく雰囲気がおかしいとは思っていたが、まさかの私と同じ様な立場だったとは、、つまり私が龍王を殺したことを知ったからここまで下手に出ていたのか。
幸いウミオチはよく分かっていなそうで良かった。
「そうですか。つまり私の立場を理解しながら私の友人を誘拐したということですか?」
「忘れないで欲しいのはここはポリスイナだ。そしてシューガイゴという人間もポリスイナ出身である。この国の神の眷属である私がこの国の民をどうしようと勝手ではないだろうか?」
「じゃあ分かりました。とりあえず話を聞きますけど博士に対しては丁重に扱ってもらえますか?それと余りにも非道な扱いだったら私に敵対したとみなしますよ?」
「エリセツア、いざとなったら俺も頑張るからな。話はあまり理解出来てないがあいつが悪いんだろ?」




