52話「巨大な魔法陣のせい」
「エリセツアさーん!箒はちゃんと上手く機能してますかー!」
「最高です博士!リボルバーも付いてるから魔法を使わなくても戦えるなんて天才ですよ!」
「エリセツアってこんなやつだったか?」
私は今、ポリスイナの森の上を自由に飛んでいる。実は博士の作った箒に初めて乗ったのは私だったらしい。博士は魔法使いではないので箒に乗ることが怖く、上手く機能するか不安だったから、こうして私が自由に飛んでいるのが嬉しいようだ。
しかし、ウミオチは呆れている様だ。
「じゃあそろそろ真面目にやるか。魔力感知、視覚化!」
そうすると、私の視界は真っ暗になり、魔力しか感じられなくなった。これが魔力視覚という、一部の魔法使いが使える魔力感知を視覚に移動させるという珍しい技術だ。
「やはり、この地域一体には特定の魔力がこもった石がたくさんある。石を媒体にして魔力を吸っているのは間違いないだろう、しかし分からないのは吸われた魔力が移動する先だ」
それを確認すると、一旦地上に戻り、博士たちに説明した。
「てっきり、石同士が連携をして何処かに集まっていると思っていましたがそれも違いますね」
「うーん、何か魔力をどっかに転送したりしてるんじゃないのか?媒体がそこまで出来るかは分からないけどな」
「転送、転送か、、あ!もしかして」
私は気づき、また飛んで石の位置を確認した。そして確信した。石の位置はどこか規則的に置かれていた。その形はとある物に似ていた。
「これは、今は存在しないとされている転送魔法陣じゃないか、」
そのことを博士に伝えると博士は何やら考え込んだ。ウミオチは相変わらず眉をひそめたまま、私たちを見つめていた。
「私は魔法陣について少ししか勉強してません。しかし、物質の転送魔法陣は明らかに古代の力ですし異質だと分かります。何よりこの国全体規模の魔法陣ですか、、」
「ここまで来ると神技ですね。この魔法陣をいくら大人数でやろうとしても正確な陣形を描くのは不可能だ。しかもこの魔法陣は術者の特徴が表れているから単独で行われている」
「なあ俺たちってさ、とてつもないくらい重要な世界の秘密を解き明かそうとしてるんじゃないか?」
ウミオチの言う通りだ。これを解き明かした時、この大陸には大きな変化が起きてしまうだろう。私が思うにこれを行った者がいるとするならば神だ。実際に私が神の眷属であるから、神と対面して感じた、あれは人間という種族の完全なる上位互換という感じだったから、
氷の神に詳細を聞いてみたいところだが、私は出来る限り自分からは質問をしないことにしている。神は大陸の全てを知っているだろうし、旅の面白さが欠けてしまう。
「このことについては私たちだけの秘密にしておきませんか?この件はあまりにも常軌を逸している」
「なんだよ博士、なんだか俺たちが禁忌を犯したみたいじゃねえか。俺は何もしてないし何も知らないぜ」
「博士、私の父はこの大陸について詳しいです。確実に信頼できる人物なので手紙を送って助言を貰おうと思います」
「あぁ君ほどの人の父なら信頼出来るだろう。では何か分かったらもう一度この場所に来てくれるかい?」
そうして私は博士と別れ、フーラへと戻ることにした。ウミオチは思っていたような戦いが出来ずに不満気だったがその反応は予測していた、スピリアもそうだったから。
帰ったら飯を奢って楽しい話でもしたら、忘れてくれるんだ。
「エリセツア飯うまかったぜ!明日からも任務頑張ろうな!」
「ウミオチってほんとに単純だね。簡単に騙されやすそうだ」
「そん時は騙したやつをボコボコにすれば良いんだよ」
私はそんなくだらない楽しい話をして、油断しそうになっていた。忘れてはいけない。今日あったことは間違いなく巨大な魔法陣を張った者に気づかれている。
もしかしたらあっちから近づいてくるかもしれないことを視野に入れておこう。
「エリセツア、今日はこの二級レベルのゴブリン倒しに行こうぜ」
「ああ分かった。他にはないか?」
「ああ、魔物討伐の任務はこれで最後みたいだ」
私とウミオチは博士と別れた後、フーラに戻って昔からある魔物討伐の任務をコツコツと終わらせていた。
「あれから一週間経つけど、博士は元気にしてるかなー。俺にとって二人目の友だちだから大事にしたいぜ」
「じゃあ明日は様子を見に行ってみようか」
私たちは一週間かけて長年解決されてこなかった強い魔物の討伐任務を全て完了したため、ポリスイナで一番の冒険者パーティとなっていた。もちろん一級討伐任務も含まれていたので報酬はたんまりと出た。これならしばらく困らない。
その分、ポリスイナの様々な場所を巡るための列車代に相当レットが取られてしまった。ウミオチの分のレットも私が管理していたからウミオチは列車にどれだけ値段がかかるか理解していなそうで、殴りそうになった。
「箒さえ使えれば代金は浮いたのに、、」
「ん?何か言ったか?」
「いいや別に、」
そうしてゴブリンの強化個体の討伐任務もあっという間に終わらせた。それにしてもやはり私の目に狂いはなかった。ゴブリンの強化個体を相手に動きを完全に見切り、一度も攻撃を喰らうことなく首を取ってしまった。
「私が出る幕はなかったな」
その夜、私はウミオチとの夕食を済ませた後、夜風を浴びにフーラの中でも人気の少ない風車の塔にいた。
「ポリスイナでも上手く私はやれているのだろうか?久しぶりに本気を出さないといけないようだからな」
そう言うと、エリセツアの背後を黒い影が襲ってきた。暗殺だ。
私もそれに合わせて、素早く杖を構えた。
「少女よなぜ我々に気づいた?」
「お前らはこの国に魔法陣を張った者の手下だな。悪いが質問に答えられるほど私は寛大じゃない。それよりそっちから奇襲してるんだから私の質問に答えてくれたって良いだろう。お前たちは何者だ?」
「我々は偉大なるイージェス様に仕えるノトリア海守隊だ。どうせ言っても分からんだろうが」
どうやら海の民が関わっているらしい。海の民はその名の通り海に住む種族だ。人間と体格や性格は変わらないが、人間と違うのは呼吸が必要ないことや岩よりも硬い全身の鱗だ。
しかし、どういう事だろうか。海の民は陸で活動出来るはずがないのに。
「というか何で私がこんな目に遭わなきゃならないのか教えてもらいたい。出来れば平和的に生きたいのでね」
「それは貴様たちが我々の魔法陣を解析したからだ。あれを知ってしまったからには殺すしかなくなってしまう」




