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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第4章 ポリスイナ水上国編
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51話「凄い博士」

「はっは!君は面白いことを言うね。確かに私が科学院を追放されているからよくない人間に思われるかもしれないが法律は守るさ。それより私のことをおっさんではなく博士と呼んでくれ。まだ三十歳なんだよ」


「博士?追放されているのに博士を名乗ってもいいのか?」


「君は私の凄さを分かっていないようだ。そちらのお嬢さんは何となく分かっているだろ?魔法使いの様だしね」


「ポリスイナの未来に関わる研究ってもしかして魔力の研究?」


 ポリスイナ南東に位置するこの場所は魔力探知が得意な人間にとっては違和感でしかない。魔力が多いし、何故かその魔力を扱いづらくなっている。

 つまりこの場所で研究をしていて、この国の未来に関わる研究ということはこの国の魔力の秘密を研究しているという結論に至るわけだ。


「正解だ。やはり君はその年齢にも関わらずに魔法使いとして百点だね」


「シューガイゴさん。この魔力の異変についてはどのくらい分かっているんだ?」


 私が敢えて名前で呼んでいることに彼は嫌な顔をしたが、やっと成果を発表できることに嬉しくなったらしいからすぐに笑顔になった。


「君ほどの才能を持った人間が私の研究に興味をもってくれてとても嬉しい!では特別に無料で教えてやろう。何とこの国の魔力は何百年か前までは普通に存在していたという結果が出た。しかし、とある日をきっかけに魔力がこの場所の地下深くに吸われてるんだ」


「なるほど、ある日をきっかけってことは何者かが意図して魔力を吸収し続けているってことと言うわけか。でも何百年もそれを続けていると言うのが分からないな。膨大なエネルギーが溜まっているだろうし、そんなのを悪いことに使ってしまえばこの国、いや大陸全体に影響を与えられるだろうな」


「え、それって超やばくないか?博士はそんなの放っておいて何で呑気にいられるんだよ」


「いやいや、魔力を数百年分蓄えてたら流石に溜まった魔力が探知出来るだろう。しかし私が地下を探知しても濃い魔力は検知できない。つまり消費され続けていると考えていいだろう」


 私としたことが、あまりにも単純な考えすぎだった。私が旅を始めて気づいたことはこの大陸の人間の強さには差がありすぎることだ。一級冒険者と二級冒険者には実力差がありすぎるし、ペルヴェリンの幹部の様な敵はもっと強い。

 もちろん自己愛が過ぎると言うわけではないが私はとても強い。少なくとも旅を始めて私の脅威になり得る人物はいなかった。

 それよりも今はこの状況について考えなければ。数百年前にこの地で何が起きていたのか、人間の文明はあまりにも不安定で変動が激しいから答えを導き出すのは至難だ。


「ではシューガイゴさん、あなたはこの国の魔力をいじっている者に心当たりはあるんですか?」


「私はあらゆる可能性を視野に入れている。国全体に影響を与えられるような力を持つ者は今もこの世界には結構な数いるだろう。エリセツアさん、あなたもその一人だ」


「なるほど、よく分かってるじゃないですか。確かに私でも苦労して長い時間を使えばこれが出来なくもないです」


 父さんも同じ様なことを言っていた。ギルドが特別冒険者と表す人間は大陸に影響を与える可能性がある。私だったら魔力を集めるためにとてつもなく広い魔法陣を貼ったり、ポリスイナ各地に媒体を置き、そこから徐々に魔力を吸い取ったり出来る。もちろん数十年はかかるが。

 あ!そうか、そういうことだったのか!


「シューガイゴさん、おそらくこれを行った者は今私が持っている魔力がこもった石を使ったんだと思います。これは本来、道端に落ちているような物じゃない。おそらく意図して設置された物だろう」


「つまり、魔力がこもった媒体を利用してできるハイレベルな魔法だな。ルーナに留学していた時に学んだ技術だ。しかし確認する方法が分からないな。一個ずつ媒体を探していては途方もない」


「なぁ、俺には何がなんだかよく分からないんだが、エリセツアが持ってる石がこの国にたくさんあるかもしれないってことなんだろ?」


「そうだけどウミオチは何か知ってるの?」


 ウミオチは何だか困ったような顔をしているが、一体何を考えているのだろうか?


「エリセツアは魔力に敏感だっただろ?じゃあさ、高いところから魔力がある物体を見分けることとかって出来ないのか?」


「いくら何でもこの国は広いんだよ。彼女が凄い人間とは言えさすがに無理だ。まあ考え方は面白いと思うぞ」


 博士は意外にもウミオチに優しかった。おそらく根は良い人なんだろう。それよりこの国全体を見るか、いや、もしかしたら何とかなるかもしれない。


「シューガイゴさん。この国は魔力がとても薄いからこの国全体を見渡せるぐらい高いところに行けばギリギリ魔力探知で見分けられるかもしれない」


「君たちは頭が硬くないか?何もこの国全体を見渡さなくてもこの地域一体に魔力の媒体があるかどうか確認すれば良いだろう。こんな小さな石を媒体にするのだったらたくさん必要になる。すぐ近くにもあるはずさ」


「博士は頭が良いんだな。エリセツアも頭が良いと思っていたけど思ったよりなんだな!」


 何も言い返せない、、どうして私は効率的に考えられないんだろうな、


「とりあえずこの地域を見渡せるぐらい高い場所に行けば私が確認してみせるだろう。シューガイゴさん、あなたはあのワイバーンの様に空を飛べる魔物を育てたりしてないんですか?」


「居るにはいるがそんなことをしなくても私が開発した空を飛べるリボルバー型箒があるんだ。箒と言っても魔法使いが使うような魔力を使った物じゃない。必要なのは炎だ」


「リボルバー型箒だって!?しかも魔力を使わないってどう言うことなんだ!」


 私はポリスイナに来て一番の興奮を見せてしまった。私は箒で飛ぶのが好きで、この国に来て乗れていないことに寂しさを感じていた。しかし、久しぶりに乗れるとなると我慢出来なくなったのだ。


「え、エリセツア、お前ってそこまで箒が好きなんだな。まあ服装からして意外ではないけど」


「これはね、私の作品の中でもかなり傑作でね。若い頃、シャレットの迷宮を探検した時に偶然手に入れた炎のコアを組み込んでいるんだよ」


「でも炎のコアって相当貴重な聖遺物ですよね。確かシャレット砂国って貴重な物をダンジョンで発見したら寄付しないといけないみたいな規則があったような、」


「ん、ん!まあ細かいことは良いじゃないか。どうせ追放されている身だし失うものはないんだよ」


 きっと記憶を取り戻す前の私だったらこの箒を使わずにすぐにポリスイナ警備隊に通報していただろう。しかし、今の私は法律なんて気にしない。


「やりましょう博士!やはりあなたは立派な科学者だったようだ!ほら、ウミオチも敬った方が良いぞ」


「え、悪いことしたんじゃないのか?俺捕まりたくないぞ」


「冒険者と言うのは時には法律の危険とも隣り合わせにならなければいけないんだ」


 そうして、私たちはとりあえず仲良くなり、この国の秘密を研究することになった。

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