50話「呪われたワイバーン」
森に足を踏み入れてから結構時間が経った。時刻は昼を過ぎた頃だろうか。ここに来た時は日が登り始めたときだったから相当歩いたはずだ。
「ウミオチー、そろそろ休憩しないか?私にはかなりハードなんだが、、」
「確かに大分歩いたな。でもワイバーンの気配がずっとあるんだ。休憩はするが、気は緩めずにいこう」
私は朝早くから列車に乗り、そこからたくさん歩いたため、サンドイッチを食べた後、疲れて横になった。それを見ていたウミオチは呆れていた。
「おっ、珍しい!魔力を持った石じゃないか。ウミオチ!魔力を蓄えられる石は珍しい。これは売れるぞ」
「おいおいそれ埋まってたやつだろ?何だか禍々しくて危なそうじゃないか?」
「確かに埋まってるのは変だな。しかしたまにはそう言うのがあってもいいじゃないか。このサイズだとザッと五千レットと言った所だな」
ウミオチはそれを聞いてもあまり反応してくれなかった。どうやら五千レットの価値を分かっていないらしい。それからしばらくした後、ウミオチが何かを察した。
「おい、エリセツア!この先からワイバーンの気配を感じたぞ。早く起きて行くぞ」
「ふぁあ〜、ごめんごめん。今行くよ」
それから私たちは急いでウミオチの感知した場所へと走った。すると目の前には何やら古い建物があった。
「どういうことだ?確かにここで気配を感じたんだが、、何もないどころか家があるぜ」
「ウミオチ、ここは危険だ。私の直感がそう言ってる。私の後ろに行け」
「何言ってんだよ、魔力が少ないこの場所でお前が前に出たらダメだろ。それに俺は油断していない」
その瞬間、私たちの目の前を何か巨大な物体が通り過ぎた。それは油断していなかったウミオチでさえ反応できないほどの速さで移動したため、私たちはすぐに戦闘体制に入った。
「ウミオチ、私は魔法以外にも様々な力を使える!だから私に任せて伏せておけ!」
そして私は魔法や聖なる力とは異なる、記憶を取り戻す前には忘れていた力、時間魔導術を発動した。それは自分に流れる時間を速くすることで周りの世界がゆっくり動くようになるものだ。
「なるほど、やはりそう言う事か。今目の前を通り過ぎたのはワイバーンだ。しかし、とてつもない速さを持つ事で誰も討伐出来なかったんだな。まあ私と出会ったのが運の尽きだ」
そして今度は呪いの呪文を唱え始めた。
「呪いの主を讃え、その力を借りる。『切断』」
ワイバーンの首をしっかり切ったことを確認すると時間魔導術を解き、息をついた。
「お、おい、何か降ってくるぞ!あれは何だ!?」
ワイバーンを空中で切ったから落ちてくるのは当然だがウミオチからすれば何もないところから突然肉塊が落ちてきて、理解不能だろう。
「まあこれが私の本気だ。速いだけのワイバーンなんて面白みに欠けるな」
「お前って、本当にすげぇんだな。師匠に会わせてみたいぜ」
「それよりこんなとこに家があるなんておかしくないか?それにさっきのワイバーンだって速さが異常だ」
「秘密が隠されてそうだよな。行ってみるか」
誰もいなそうだが念の為、玄関をノックした。案の定誰もいなかったため、中にお邪魔させてもらった。
するとウミオチはすぐに何か珍しい物を見つけたのか近寄って取り、左手に乗せた。
「これって鍵じゃないか?玄関は鍵が取り付けられてなかったし、どこかへ通じてるのか」
「とりあえずしまっておけ。それよりここの空気はおかしいぞ、魔力の密度が他の国の平均以上まで達している。発生源を探してみよう」
この森自体もそうだが、魔力が多い。まるでポリスイナの魔力がここに吸われているようなイメージだ。だからこの森はポリスイナの魔力の薄さの根源を握っている気がする。
「この本棚から怪しい魔力が流れてる。おそらく裏に何かあるはずだから、どけてくれ」
「わかった!力仕事は任せとけ」
ウミオチが本棚をササっとどかすと、私の予想通り謎の扉が現れた。そして私たちは息を呑んで、その扉の先にある地下室へと足を運んだ。
しばらく階段を降りていくと何やら実験場のような場所に出てきた。しかもその場所には人の気配があった。
「き、君たちは誰だい!?ここは私の研究部屋なのにどうやって入ってきた!?」
突然そう叫び出したのは髭を整えてないロン毛のおじさん?いや、老けて見えるだけで若い青年だった。
「待ってくれ!俺たちは怪しいやつじゃないんだ。俺は冒険者のウミオチだ」
「同じく冒険者のエリセツアだ。まさかこんな所に人が住んでいるとは思わなかったから突然入ってしまった、邪魔をしてしまったなら申し訳ない」
「冒険者ってことはあのワイバーンを討伐しに来たのか?」
それから私たちがここに来るまでの経緯を話して、怪しい人の警戒を解くことに成功した。
「でもまさかあのワイバーンを討伐する人間が現れるとは思わなかった。あれはとても目で追えるような速さじゃないはずなんだがな」
「それだけ私たちが強いんです。それよりここに来たのは魔法使いである私がこの魔力の薄いポリスイナで濃い魔力を感知したからです。それについて教えてくれませんか?」
「まあ君たちになら教えても良いだろう。まず私はポリスイナのクローリー科学院の元研究員であるシューガイゴと言う者だ。ここでは君が言ったように魔力について研究している」
クローリー科学院と言えばこの国で科学を発展させるのに大きな影響を与えた、ポリスイナで一番重要な組織だ。まさかその元研究員だったとは、
「まずあのワイバーンのことなんだが、あれがあそこまでの速さを持ってしまったのは私のせいなんだ」
するとシューガイゴは過去について話し始めた。数年前、科学院の研究でここに訪れた時に彼はワイバーンを発見した。魔物の習性をよく知っていたため持っていた特殊な餌で手懐けることに成功したらしい。
そしてワイバーンの筋肉について研究していく途中に異常に翼が発達したとんでもない魔物が生まれたのだ。
「それが原因で科学院を追放されたんだが、誰もあのワイバーンを討伐することなんて出来なくてね。科学院はそれでギルドに依頼を出したんだろう」
「でもあなたが手懐けたワイバーンだったのでしょ?私が殺してしまって申し訳ない」
「気にしてないさ、今の私はそんな魔物のことよりこの国の未来に関わるとんでもない研究をしているのだから」
「おっさん、それってやっちゃいけないことだったりするのか?それだったら俺はあんたに敵対することになるぜ?」




