109話「神との対話」
「ジャンヌちゃん。これほんとに絶対に上手くいくんだよね?」
「いや分からん。多分いける」
二週間が経ち、アンには信じて欲しいと自信満々に言ったものの、いざ実際その日が訪れると私は不安になってしまっていた。
「何それ!?私は具体的な計画の内容を聞いてないんだよ!?大丈夫じゃないと困るんだけど!」
「ケイディ、ヴィアレン、スピリアたちは国の外に出てもらってるし失敗してもお前らの旅に影響ない。これはこの国の問題だからな」
「じゃあまず計画を教えてくれるかな?多分私の神の眷属としての力を使えば成功確率が上がるのは分かるんだけど、具体的な手段が思い浮かばないんだよ、」
「説明は嫌いなの知ってるだろ。まあいい、簡単に説明するとだな、」
ジャンヌの空中楽園計画はまず、この国を守る結界の真下に構築された術式に魔力を加えることから始まった。これだけでまず十年掛かったらしい。そうする事でこの国と外を切り離し、浮かせる状態にする。
次にこの国自体をいくつかに切り離し、それぞれを順番に浮かせる。切り離すための術式の組み込む場所を考えるのに半年、術式を組み込むのには五年かかった。
そして最後に、ジャンヌが国を浮かすために魔力を用いない力は使う事にした。どう言うことかと言うと、国と言う巨大な物質を浮かすためには常にとてつもない魔力を消費し続け、絶対に継続させることは出来ない。ならば別の力、つまり神の眷属としての力で浮かすための浮力を肩代わりしてもらうのだ。
「でもジャンヌちゃんが神の眷属としての力を使うとして、常に浮かすわけだから、その、辛くないの?」
「いや私がそんな面倒なする訳ないだろう。ティアダインやミロスは誰かが頑張って浮かせてるとでも思ってるのか?あれはな、神が直接浮かせてるんだ。この世界がそもそも神の創った世界なのだから、その設定を少しいじって最初から浮いているものとしてこの世界に認識させるんだ」
「なんか、今からもしかして神話みたいな事をやろうとしてるの?」
「あぁ、懸念点は天上の神々がそれを認めてくれるかどうかだ。この国の神だけの権力でゼイノカウンの在り方を変えて良いものな訳ないからな」
私はふと疑問に思った。ジャンヌちゃんはおそらく自分の主となる魔女の国ゼイノカウンの神とは協力しているのだろうが、それに一国の代表者の私が介入した所で関係があるのか、と。
「今のお前の考えが分かる。ではお前や私はかつて何をした?世界を救ったんだ。その見返りがあっても良いと思わないか?」
「ホワイセン大陸を救った。あの船に乗る一員としてそれは間違いなく事実であり誉められるべき事だけど、まさかそれで神様たちが願いを叶えてくれるの?」
「そうだ!私は正直、ただの船の一員に過ぎなかったがお前は主力メンバーだった。ならば私の願いよりも大きな願いを確実に叶えてくれるに違いない。それこそこの国の神だけでなく大陸全ての神が同意してくれるはずさ!」
また私はふと疑問が一つ思い浮かんだ。仮に神が私の願いを叶えてくれるのなら、こんな場面でその機会を失ってしまっても良いのだろうか、と。
「エリセツア、お前の考えている事が手に取るように分かる。傲慢が過ぎるぞ。何故お前は今生きる事が出来ていると思ってるんだ?」
「そうか、命を救ってもらってるし、仕方ないのか。旅を快適にしてくれる万能の魔道具が欲しかったのに、」
すると大魔女の部屋がノックされ、ジャンヌが許可すると一人の魔女が入ってきた。
「大魔女様、六千五百二十五人、この国に属する魔女のほとんどが計画のための配置につきました」
「ちっ、二百六十三人サボってるじゃないか。寝てるのか?体調を崩してるのか?」
「はい、城の魔女たちが呼びかけには向かったのですが、どの方も怯えている様で、、」
「まあ魔女とは言え、強い訳じゃないし仕方ないよ。ほとんどが参加してる方が凄いと思うよ」
ジャンヌはため息を吐き、覚悟を決めた。
「分かった。それじゃあ五十年にわたって計画してきたこの計画を遂に実行するんだ!エリセツア行くぞ!」
二人はこの国の中心となる、新都アグレイブの時計塔の上にやって来た。そして伝達魔法でジャンヌは合図を送った。
「この計画を成功させるためには君たちの協力が必要なのは分かってるだろう。とにかく魔力を術式に注ぎ込め!始め!!」
国の各地で声が湧き上がり、一人一人の魔力が可視化されて術式に流れ込んでいった。
「アン、私は空を飛べるからもしもの時は捕まっても良いよ?」
「ナトモリ、私はジャンヌを信じるって決めたんだ。心配いらないさ」
「そっか、じゃあ私も信じる」
森林地帯担当のナトモリやアンなどおよそ一千人の魔女たちは魔力を注ぎ込んだ。そして最初に浮かび上がらせる予定の森林地帯の一部が揺れ動き始めた。
すると次の瞬間、可視化された魔力が完全にその場で停止し、揺れ動いていた地のとてつもない迫力の音は全く聞こえなくなり、エリセツアとジャンヌを除く全てが停止した。
「ジャンヌちゃん、どう言う事?」
私が困惑していると、ジャンヌは笑みを見せながらも緊張した様子で天を見上げていた。
「神が来るぞ、」
すると空中から突如、二人の神が現れた。片方は透き通るような白い肌に、身長の二倍ほどある長さの髪を美しく銀色に輝かせる白の少女。もう片方は鋭い目を持ちこちらに悪意を放つ、竜の角を持つ恐ろしい黒の女だった。
「まずは話を聞こう。貴様らは何故、この世界の理を越えようとした?」
「主。私はこの国の存続のために仕方なくこうしたまでです。そんな怖い顔をなさらないでください」
「ジャンヌ。貴様の心の内は見えている。まさかお前ともあろう者が単純に『カッコいいから』と言う理由で国を浮かそうとするとはな、」
するとジャンヌははにかみながらエリセツアを見て、助けて欲しいと目配せをした。
「えっと、まず貴方たちは神なんですよね?白い方は氷の神って分かりますけど、そちらはこの国の神なんですか?」
「エリセツア。異邦の救世主であると聞くが、貴様はこの小娘のくだらない遊びに付き合うために願う権利を使うのか?」
「え、無視か。まぁはい。命助けてもらってますし、ジャンヌちゃんが五十年かけた遊びなら手伝いますよ」




