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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第6章 魔女の国ゼイノカウン編
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110話「旅の休憩」

「異邦での事は知らないが、貴様らは硬い絆で結ばれているのだな。何ともくだらない」


「エリセツア。この大陸に仕える氷の神として言えるのはジャンヌだけでは決して叶えられない願望です。貴方の願いで叶えて上げたいですが、そもそもこの世界のルールを途中変更するのはかなり難しい事です。やってみれば世界のバランスが崩れてしまうかもしれないのです」


「面白そうじゃないですか。貴方たちが神とは言え俗世では私たちの権力が上です。貴方たちの苦労などは知ったこっちゃないので国を浮かせてください!」


「主、この千年、貴様に頼まれてからというもの実に長く退屈をしてこの国を統治して来た。少しは褒美をいただけないだろうか?」


 すると、魔女の国の神はため息を吐き、ジャンヌに向かって話し始めた。


「私たちを顕現させたのは誰だと思う?私たちの意思じゃない、大陸そのものだ!つまり今この瞬間大陸と言う名の上位神はお前らを時間と空間から切り離し、こうして直接私たちに出向かせたのだ。これがどう言う意味か分かるか?」


「えっとー、多分、大陸がびっくりしちゃったんじゃないかな?」


「エリセツア、私もそう思った」


 すると魔女の国の神は私たちのふざけた回答に対し、怒鳴った。


「この問題を私たちに出向かせてでも解決させなければならないって事だ!お前らと言う変数を処理させようとしたんだ!私は忙しいのにだ!そもそも予言の魔女に失敗する予言を見せたのに何故諦めなかった!?」


「予言なんて、主からの注意としか思ってませんから。あの子は自分の力と思い込んでましたが私には主からのメッセージって事ぐらい分かります。私は怠惰癖がありますがつまらない生き方をしたくはありません。貴方に反抗してみたかったんですよ!」


「話にならん。氷神、帰るぞ。失敗させろ」


「いえ、その、もう過半数の神が賛成しているのでルールを書き換える事になりました。変数はいくつか現れる予定ですが、何とかなるそうなので」


 氷の神は私にウインクをして、にっこり笑った。そうして魔女の国の神は悔しそうにすると虚空へ消えた。そして氷の神もそれを追いかけるように消えた。

 時間と空間に切り離され、灰色だった世界は元に戻り、何故か閉じていた私の目を開くと、ジャンヌは嬉しそうに飛び跳ねた。


「やったぞエリセツア!見たか!?主とか言う尊敬もしてないやつを負かせたぞ!それに見ろ!今私たちは空を飛んでいる!!」


「わあああ!!何が起きてたの!?国が浮いてる!!」


 エリセツアとジャンヌは相変わらず同じ場所にいたが、国中から歓声が湧き上がっていた。ゼイノカウンは空へ浮かび上がり、地上には影も映らないほどの高さにあった。


「因果律の関係で、おそらく私たちは国を浮かせ始める瞬間から、今の状況までスキップされたのだろう。おそらくあの子達の視点では私たちの力で国を浮かび上がらせた様に認識されているはずだ」


「とりあえず成功って事だね。良かったー、どう?ジャンヌちゃんは満足した?」


「あぁ、満足した。お前とこうして話していると昔を思い出してしまう。千年という月日が流れていても、あの記憶だけは保存できるようにしたからな。エリセツア、ありがとうな」


 ジャンヌはエリセツアに面と向かって感謝した。ただの遊びでしかないが、その遊びのためにかけた時間と労力は果てしない。だからこそこの計画の要となったエリセツアには最大限の敬意を払ったのだ。


「にしてもこの計画って私がいないと無理だったんでしょ?何でやろうと思ったの?」


「覚えていないか?昔はいつだって絶望の状況でも仲間がタイミング良く助けてくれていた。だからこの遊びと言うのは、この国の存続のためでもあり、私の希望のためでもあり、お前を待つためのものだったんだ」


「はははまさか、こんな事をすれば誰かと再会出来ると思ってたの、、?でも私が眠ってた時、私を助けるのには積極的じゃなかったって聞いたけど?」


「それはお前が私を救う者だとは思わなかったからだ。そもそも計画はあと五十年先の予定でまだまだ術式は試行段階に過ぎなかったしな」


 相変わらず自分勝手なジャンヌの様子に呆れと懐かしさを感じ、結局笑い合った。


「それじゃあジャンヌちゃん。しばらくここで休ませてもらったし、私は旅に戻ろうと思う。それが私だからね」


「その事なんだが、ヒョウ、グランバスが昨日私に伝言を送って来た。私は無視しても良いと思うが聞くか?」


「そりゃ聞くでしょ。父さんは私を助けるために色々頑張ってくれたらしいからね」


 ジャンヌは手元から手紙を取り出してエリセツアに渡した。それをエリセツアは開いて、じっくりと読み始めた。


「君は旅をすることをずっと続けて来た。ミロスの時は少し例外だが、それでも常に未来に向かって常に続けて来ただろう。それは何故だい?『私は旅をしたい。自由に見たり聞いたり、そうして感じる事が好きだから。何にも縛られずただやりたい事をやってるだけ』と答えるかもしれないがそれではダメだ。人間には休みが必要だ。自分のやりたい事をやると言うのは大事だが、それに縛られてしまっている。そうなれば後戻りできなくなり、心が持たない。何事にも休憩は必要なのさ」


「はぁ、説教かぁ。それもこれって旅をするなって事だよね、、」


「そうだ。でも決めるのはお前だ」


「うーん、まあとりあえずは考えるよ」


 そう言ってエリセツアは歩いて空中都市となった旧都の借り家を目指して歩いた。その過程で様々な事を考えていた。


「私はいつからこんな風になったんだろう、」


 旅の休憩。それは今の私にとってあまり理解出来ないものだった。

 ミロスで記憶を取り戻しても、それを引き出すためには思い出すためのきっかけが必要だった。そうして記憶を取り戻していくうちに私の言動や考え方は変わっていっただろう。

 つまりかつての自分に戻ろうとしているのだ。それは休みを取る必要性を感じない、戦う私と言う事だ。ミロスやモナレンでは一日二日休む事はよくある事だったがミロスを出て以降、それはなくなっていった。


「あ、エリセツア!おかえりなさい!」


「エリセツアさんおかえりなさい」


「やっと帰ったか。遅かったじゃないか」


 三人は先に借り家に帰っていた。そして帰って来た私を歓迎した。


「ま、こんな生活もしばらくは悪くないかもな」


 そうして私はしばらく旅の休憩をする事を決意した。

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