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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第6章 魔女の国ゼイノカウン編
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108話「魔女の茶会」

 時はケイディが去り、ナトモリも席を立った頃だった。


「エリセツア。予言は口に出しちゃいけないんだよ?それくらい分かるだろう」


「やっぱりそうなんですね。でも私はジャンヌちゃんの友だちです。助けを求められたなら恩は返さないと」


「はあ、空中楽園計画がどれほど危険な賭けなのか分かってるのかい?もし仮に失敗すればこの国は破滅するんだよ?」


 私は悩み、考えた。この国の魔女数千人は誰もが変化を恐れている。変わりゆく世のあり方から離れたくて流れ着いた者がほとんどの魔女の国では、いくらジャンヌの計画とは言え耐えられないものなのだ。


「アンさん。ジャンヌちゃんは五十年前から計画してきたんですよ。誰よりもこの国を愛してるんです。だから協力してくれませんか?」


「分かってるさ。でもね、私は自分勝手なジャンヌが許せないんだ。ちょっとぐらい私たちの思いも汲み取ってくれるぐらいしてくれたって良かったのにさ」


「つまり貴方だけじゃなく色んな魔女たちはビビってるんですよね。なら絶対に失敗しないと証明させれば良いんじゃないですか?」


「確かにね。でもどうやれば良いんだい?私からすればそもそもジャンヌの一人の魔女としての力すら測った事がない。そしてその未知数のジャンヌが協力を頼むあんたもだ。国を浮かせるという神の権能に等しいレベルの所業を出来る事を一体どう証明するってんだい、」


 証明、そもそも私でさえ国を浮かす事が可能なのかは分からない。それでも私の直感や経験則からして出来ない事ではない。じゃあジャンヌちゃんはどのくらい成功を確信しているのだろうか、、

 そこで私は思い出した。こんな議論の意味がないことを。


「いやすみません。証明なんていらないです。貴方たちが心配してようと関係ないんです。だって大魔女ジャンヌが失敗する事は絶対にあり得ませんから!」


 不意のその言葉にアンは驚き、ポカンとしてしまった。私も自分で何を言っているのか分からない。でもこの直感は今まで築き上げて来たジャンヌとの絆によるものだ。


「なるほど、一寸の狂いもないその眼差しと言葉。何も論理的ではないからこそ私たちに勇気を与えてくれるのかもね」


「はい。少なくとも私から送れるのはこの励ましだけです」


「じゃあひとつだけ約束しておくれ。ジャンヌだけじゃ計画は成功しない。だから誰かが手を差し伸べなければならないよ」


「それはもちろん!ジャンヌちゃんはまだまだ一人じゃダメダメですからね」


 アンは大魔女ジャンヌに対してまるで年下の子どもを相手にするような態度のエリセツアにクスッと笑い、アイスティーを飲んだ。


「私からすればあんたはまだまだ子どもに見えるのにね。どうも察しが悪い所とかもね、」


「え、なんか配慮に欠けてました?気を遣ってたつもりなんですけど」


「ケイディとか言う少年がいたろ。私のせいでわざと退出したはずさ。行ってあげな。それと、この話の詫びとしてこれを受け取っておきな」


「ありがとうございます?これって、何です?」


「ピアスさ。大人の階段を登ってみるんだよ」


 私は耳に穴を開けた事がないので、想像すると身震いしたが、子どもっぽい扱いをされるのも嫌なので覚悟を決めた。そして紫の魔女アンに挨拶をしてケイディを探す事にした。


「あの時多分、ナトモリさんがケイディにちょっかいを掛けようとしてた気がするんだよなぁ」


 ケイディがどこかへ行った後、ナトモリはそれを見て笑みを浮かべながら着いて行ったように見えた。


(危ない魔女で、ケイディを襲ってたりしないよね、?)


 私は箒に乗り、アグレイブの各地を探したがなかなか見つからず、とりあえず腹ごしらえをして考えることにした。


「これ美味しい!これどうやって作ってるんですか!?」


「うふふ。良かったわ。これは揚げパンと言うものよ。パンを揚げてココアパウダーをまぶすだけ。大陸の方じゃまだ開発されていないと思うわ」


「じゃあ、もう二つください!友だち用と後で自分で食べる用です!」


 ケイディに会ったら謝ろう。せっかく遊びに来ているのに真面目な話に巻き込まれて喫茶店を楽しめていなかった。仕方がないとは言え罪悪感があるなら謝った方が良いのだ。

 そしてしばらく日が橙色に輝くまで探し続けた後、やっとケイディを見つけた。


「ケイディー、何してるのー?」


「あ!エリセツアさん!俺お姉さんに色々助けてもらってたんですよ」


「お姉さんってあのナトモリさんとか言う魔女の事?」


「はい!とりあえず話したい事があるのでどこかで休みましょう!」


 妙に明るいケイディを見ると、今日楽しませてあげられなかった事をそこまで気にしてない様で少し安心した。

 二人は近くの噴水広場に行き、その横にあるベンチに腰掛けた。


「まずはケイディ、ごめん。今日は結局私の服選びに付き合わせただけになってた。ケイディを楽しませるのを忘れてた!」


「まあ、正直まだ気にしてますけど、仕方ないですしね!それよりも楽しい話をしましょうよ」


「良かった。それじゃまずはさっきまで何してたのか聞かせて!機嫌が良いみたいだし色々あったんでしょ?」


 ケイディは喫茶店から離れた後、微睡の魔女ナトモリと買い物に行くことになり、最終的に宝石の魔女の店でブレスレットを買った事を私に教えてくれた。


「へえ、でも宝石の趣味とかあったんだ。意外だねえ」


「いや、これは実は、エリセツアさんに渡すために買ったんです!日頃お世話になってるし、恩返し出来てないと思うし。なのでこのブレスレットを受け取ってください!」


「まじ!うれしい!これは何の宝石なの?水色だね。しかも細部までしっかり凝ってるオシャレなデザインだ!」


「ヘミモルファイトって言う宝石なんですよ。まあ高価な宝石ではないですけど、エリセツアの氷魔法に似てたから気に入ってそれを選んだんです。どうですか?」


「ブレスレットのアクセサリーは普段身につけないから嬉しいよ。ありがとう!じゃあ私はこの揚げパンをあげる。これ美味しいんだよ食べてみて」


 無理やりケイディは口の中に揚げパンを咥えさせられ動揺したが、その味を確かめると一気に頬張り始めた。


「そう言えば今日全然食べてなかったんですよ。これほんとに美味いです!」


 そうして二人は笑顔でデートを終える事が出来た。ヴィアレンとスピリアは二人が一緒に帰ってきた事に驚いたが、心の中に留め互いに目配せをした。


「ケイディさん、エリセツア、おかえりなさい!」


「もう夕飯は作っている。早く席に座りな」


 ヴィアレンは別れを経験し、ケイディは自分と向き合い成長した。そうして長い一日は終わった。

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