104話「理想郷ゼイノカウン」
「一体どうやって国を浮かせるの?」
「よく聞いておけよ?私が五十年かけて考え計画してきたんだ」
まず魔女の国、正式名称ゼイノカウンは結界と城壁により、外界と遮断された一種の別世界であり、領土の九割が森林地帯だ。残りの新都アグレイブ、旧都ディーズガーズ、レインガーデ祭壇はモナレン王国のドーウェンやポリスイナ水上国のナイガトピンと同じくらいの広さだ。
それを浮かせるにはとてつもないエネルギーが必要であり、いくら魔女でもできる事ではない。しかしシローナ大陸には空に浮かぶティアダイン空国や神聖ミロス学園があった。ジャンヌはそこに目を付けて、考えた。
「お前らティアダイン空国がどうして空に浮かんでるのか知ってるか?」
「確かに、何故なのでしょう。私はあの国が浮かんでいるのは必然で疑う方がおかしいと思ってました」
「そもそも、俺は国さえ知らない、、」
「待ってよ。どうしてジャンヌちゃんはあれに疑問を持てたの?あれって、その、疑えないようになってるのに」
すると全員が私の方を怪訝な目で見つめた。私がジャンヌに聞いた事は普通は理解できない事だからだ。だからこそジャンヌは理解した途端、勝ち誇った表情を浮かべた。
「そうか!エリセツアはそっち側の視点を持つ者なんだな。確か寒国の龍を倒したと聞いたし納得だ。エリセツア、そう言う事だ。私はお前と同じ視点で生きる者だ」
「あのエリセツア、どう言う事ですか、?私には理解できません、」
「言ってもいいのジャンヌちゃん?」
「いや知らないな。私は契約の際に何も言われなかったから許可なんて必要ないと思うぞ。と言うか隠し事はなしだ、そう、私とエリセツアは神の眷属だ!」
ヴィアレンとケイディは「神の眷属」と言う単語を知らないため理解していなかったが、神の眷属に会った事のあるスピリアは驚いていた。
「いや隠すつもりはなかったと言うか、私はラゴスハイン寒国の氷神の眷属なんだ。つまりラゴスハインで一番偉いんだよ」
「待ってください、と言うことはあの龍の後を継いだと言う事ですか!つまりフローラさんと同じ立場なんですね」
「エリセツアさんまで高貴なお方なんですか、俺これからどう接すれば、、」
「神の眷属ねぇ、僕が見る限りエリセツアはその身分を実感していないと思うよ。だから僕は知らない事にする」
そしてしばらく身分について話した後、ジャンヌがパンと手をたたき、本題に戻した。
「それでだ、まずミロスはティアダインの一部だった。初代校長が凄い魔法使いだったらしい。どうにかして運んだそうだ。それで、ティアダインが浮いている仕組みと言うのは、、」
私たちは息を呑んで、この世界の秘密を聞く準備をした。
「ない!仕組みなんてないんだ!はっはっは驚いただろ?つまりあれは最初から空に浮かぶ国として生まれたんだよ」
「え?実は前文明の凄すぎる技術とかじゃないんですか!?」
「はぁくだらない。つまり神がそう創ったって言いたいのかい?」
「まあ神だからね。ルールなんて神が創るものだし、例え仕組みがそこにあったとしても人間に理解できないようにしてしまえばそこまでだ。つまりジャンヌちゃんは神の眷属としての力を使うって言いたいんだよね?」
私はジャンヌの言いたい事を完全に理解し、言語化するとジャンヌとヴィアレンは悔しそうにしていた。
「まあそれで本当はあと数年は魔力を貯める予定だったんだが、良い魔力源が見つかったからな。二週間後に実行したいんだ。エリセツア、助けてやったんだから恩返ししてくれるな?」
「いや待ってよ、具体的に何をすれば良いのか分からないんだけど、」
「分かった。少し三人とも出て行ってくれ。それについては二人で話さなければならない」
それから私はしばらくジャンヌの話を聞き、納得し、三人の元に行った。
そうして二週間、私たちは魔女の国での日々に戻った。
「エリセツアさん、スピリアさん、俺これからどう接していけばいいですかね。お二人がそんなの気にしない事は分かってるんですけど、俺、どうすればいいか分からなくて、、」
「ケイディ、君って実はとても偉いんだよ。君はラゴスハインで二番目に偉い事にする。そしてスピリアの護衛騎士となれば、それはもう立派な身分だ」
「そうですよ。エリセツアがそう言うんだから間違いありません。もっと自信を持ってください!」
そんな新たな関係性を決める朝食が終わると、ヴィアレンはまたふらっと何処かへ消えて、スピリアも城で働く契約の魔女のお手伝いがあるからと、出かけてしまった。
「じゃあ今日は二人で遊びに行こうか」
「良いですね!新都には色んな店があるらしいので興味があるんです。そこに行きませんか?」
「気が合うね。私も興味があったんだ。それじゃ準備して出発しよっか!」
ケイディは内心ドキドキしていた。今まで女の子と二人きりになった事がなかったからだ。昔は幼馴染のワイカがいたが、共に成長して戦う仲間として見ていたため、異性として見る事はなかったのだ。
(落ち着け俺。こう言う時はヴィアレンみたいな余裕のある姿を思い出すんだ。落ち着いて、普段通りに、)
「ケイディ!私の帽子見てない?部屋にないんだけど、」
「それならスピリアさんが夜被って遊んでましたよ!だからスピリアさんの部屋にあると思います!」
(びっくりしたぁ、と言うか今、この家に俺とエリセツアさんしかいないんだよな)
そう悶々としながらケイディは普段は着ない、お洒落な服を選び、エリセツアの元へ向かった。
「お、今日はオシャレな服だね似合ってる。それじゃ行こっか」
「はい!行きましょう!」
ケイディは服を褒められた事に嬉しくなり、思わず声が高ぶっていた。しかしそんな事エリセツアはつゆ知らず、一緒に家を飛び出して行った。
その頃、ヴィアレンは森林地帯の森へ足を踏み入れ、とある家を訪問していた。
「僕だ、ヴィアレンだ。勝手に入らせてもらうからね」
「いつもありがとう。私なんかのために、、大魔女も人が悪いわね」
「はぁ、毎回毎回そう言うのいらないんだ。僕は別に嫌なのに来てる訳でもない。ただの暇つぶしさ」
ヴィアレンと話すのは、少しやつれている小雨の魔女パラキースだった。




