103話「ジャンヌとエリセツア」
次の日、私たち四人は目覚めると、城から手紙が送られて来ていた。中身を確認すると、大魔女ジャンヌが私たち四人に対して伝えたい事があるから城に来いとの事だった。
「ジャンヌか。ジャンヌってどんな人なの?」
「ジャンヌさんは面倒くさがりな人ですよ。何やかんやでそこまで悪くない人ですし、」
そうして私たち一行は大魔女の部屋まで、やって来た。ケイディとヴィアレンはよっぽど会いたくないらしい、何故なら私とスピリアのだいぶ後ろを歩き、今にも逃げ出しそうな勢いだからだ。
「入れ」
そう部屋の中にいる魔女が言うと、扉が開き、椅子の後ろの窓から見える景色を眺めるこじんまりとした少女がいた。
「彩旅の魔女エリセツア。はじめましてだな。私はジャンヌだ」
「え、やっぱジャンヌちゃんだよね、えでも何でこんな所に、」
そう私が言うとジャンヌは目を瞑って、深呼吸をして、スピリアたちに向かって話し始めた。
「この通りエリセツアはまだ完全に完治していない。記憶が混濁しているんだ」
「なんと言う事でしょう、エリセツアがおかしくなってしまっているなんて、」
「いや間違いなくジャンヌちゃんだ。だって私と一緒に戦った魔女の一人だから忘れる訳がない。見た目があの時と変わらないのはよく分からないけれど、間違いなくジャンヌちゃんだ」
大魔女ジャンヌ。名前を聞いた時から何となく察していたが、少女のままの姿を見て確信した。かつてホワイセン大陸で私と共に切磋琢磨した魔女だ。
「一緒に私と城に攻め込んだよね!それに二人で秘密を教え合ったの、覚えてないの?」
「妙に具体的ですね、どちらが正しいのか、、お二人はどう思いますか?」
スピリアがヴィアレンとケイディにそう聞くと、
「俺はエリセツアさんが正しいと思う。今までエリセツアさんが間違った事なんてないからな」
「莫迦なのかいケイディ?このババアは千年生きてるって言ってたじゃないか。それなのにちゃん付けで呼ぶとかあり得ないだろう」
「うーん、ではエリセツア。その秘密と言うのは教えてくれませんか?」
スピリアはジャンヌに聞こえるようにそう言った。もし仮にジャンヌがエリセツアを知っているなら秘密はバラされたくないはずだ。だからスピリアはジャンヌを試しているのだ。
「いいよ。実はねジャンヌちゃんは私のとうさ、、」
「あぁ!もうやめろ!私が悪かった。お前を試してただけだ」
「やっぱりジャンヌさんはエリセツアを知ってたんですね。まあ校長との関係があったので何もないと言う事はなさそうでしたが、」
ジャンヌは机にひれ伏して、叫んだ。そしてエリセツアに向かって声をかけた。
「久しぶりだなエリセツア。お互い姿は全く変わってないが、千年ぶりだぞ」
「、、え?」
さっきもヴィアレンが口にしていた千年と言う単語。大魔女ジャンヌは千年生きているとスピリアが言っているのは聞いたが、一体どう言う事だろう。
「そうだ、お前は千年眠ってたんだ。一年半前、やっと目覚めたんだ」
私は理解出来なかった。旅に出てから一年と少しが経った。それまではペルファ村で村の人たちと過ごしていた。
そこで私は気づいた。自分がホワイセン大陸にいた頃とこのシローナ大陸に来てからの境目の記憶が全くないのだ。思い出そうとするとモヤがかかったようにイメージが途切れ、何故か今まで納得していた。
「やはりそうだったか、ヒョウセウは何も伝えてなかったんだな」
「あはは、まじで意味が分かんない。ジャンヌちゃん私について教えてくれない?」
「仕方ないなエリセツア」
そうして私は本当の意味で記憶を取り戻した。ジャンヌちゃんの話を聞くたびにどんどん思い出して来て、思わず目が潤んだ。ジャンヌちゃんはほんのちょっとした記憶もしっかり思い出させてくれた。
それを聞いていたスピリアたちも驚きの連続で、話に聞き入っていた。
キリが良いところでジャンヌは話を終わらせ、パンと手を叩いた。
「よし、過去に浸るのはこのぐらいだ。本題に入らないといけないからな」
「え?私たちの健康状態を確認したかっただけじゃなかったんですか?」
スピリアがそう言うと私たち三人も頷き、疑問に感じた。
「はぁ!?なんで私がそんな面倒くさいことを。私がお前らを呼んだのはこの国が危機を迎えつつあるからだ」
「危機、ですか、、それって本当に危機なんですか?この国の人たちは普段と変わらないですし、ジャンヌさんだっていつも通りじゃないですか」
「いやマジだよほんとに。誰にも言ってないから魔女たちはいつも通りだけどこの国ヤバいんだよ」
「まあジャンヌちゃんには助けてもらったからそのくらいの恩返しはしないとね。三人も良いでしょ?」
ヴィアレンはだるそうにしていたが、他の二人はしっかり頷いてくれた。
「それでだな。危機と言うのはこの国の結界についてだ。知っての通りこの国は千年前から結界を維持し続けている。だから先日のエリセツア復活儀式のせいでガタが来た」
「待ってください、、それってすごく大変なのでは?ドーウェンでも一回結界が破られましたが、その時はエリセツアや私、騎士団や魔法団が総出でなんとかおさまったんです。しかしこの国の結界は私の国よりも広い範囲かつ危険な魔物から守ってます。つまり結界が壊れれば、、」
「滅亡だね。それで、私たちは何をすれば良いの?」
「エリセツアは何故そんなに冷静なんですか!?結界が破られるんですよ!」
しかし誰もそこまで重大な事に感じていなかった。そしてスピリアもしばらくボーッとしていると気づいた。
「そっか、この国に住む人たちって皆さん魔女でしたね。別に街が破壊されたとしても魔物に殺される事はない。私うっかりしてました!」
「そうは言っても危険な事には変わりないよな。それで、ジャンヌさんは俺たちに何を任せようとしてるんですか?」
「まずは、この国をどうするかについて話さなきゃならない。結界の張り直すのは今の若い魔女たちじゃ不可能。かと言って国を捨てるなんてあり得ない。ではどうするか、私は天才的で面白い事を思いついた。それも五十年前に」
「い、一体どんな事なんですか、、」
私たちは息を呑んだ。そしてジャンヌは目を見開き、大きな声で叫んだ。
「聞いて驚け。私はこの国の領土全てを空へ飛ばす!!そして理想の空中楽園にするのだ!」
「えぇ!!」




