100話「島生まれのエリセツア」
エリセツアが目覚めた時には、もう日が昇り、三人は朝食の支度をしていた。今日はジャンヌから丸一日安静にしているように全員が言われていたので、久しぶりにゆっくり出来ることに三人は喜んでいた。
「スピリア、そろそろ火を止めた方がいいんじゃないかい?」
「わ、本当だ、私のとっておきのフレンチトーストが危うく焦げ焦げになってましたよ、ありがとうございますヴィアレン」
「気にしなくていい。僕はまともな物が食べたかったから注意しただけだからね」
相変わらず、ヴィアレンは素直になれず、スピリアは慣れない料理であたふたしている。そしてまだ眠気が取れていないケイディはあくびをしながら皿を運んでいる。
そんな光景を見て、私は朝から微笑ましい気持ちになっていた。
「皆んなおはよう」
そう言うと三人は当たり前の様に起きてくる私に驚いて、一瞬固まった。しかしそれを当たり前だと受け入れる様におはようと返事を返した。
「それにしてもスピリアとヴィアレンたちはどうしてこんな場所に私を連れて来て、そもそも出会ったんだ?と言うか学園はどうしたの?」
「はあ、エリセツアがあんな状態になっていたのに呑気に授業なんか受けていられませんよ。まずエリセツア、貴方はこの二人に感謝すべきです」
「エリセツアさん俺が説明します」
そしてケイディはキャラミャンでの一件から今日までの事を大体教えてくれた。マリさんの事やホークさんについて疑問は残ったがとりあえず私は納得した。
「大変だったんだね。これは返しきれない借りだよ。本当に三人ともありがとう、」
私は正直、これまでの出来事を何も体験していないから実感が湧かなかったが相当な苦労をした事だけは感じ取れた。何よりも三人の関係性を見ると、共に壁を乗り越えた事が分かった。
「それでエリセツア!朝食も済んだ事ですし、そろそろ貴方の話を聞かせてもらいましょうか。やたら過去が曖昧でしたがもう逃げられませんよ」
「分かったよ。三人はそれぞれ何か知ってるっぽいけど私が全部話す」
そして私は一度終わった物語を振り返りながら話し始めた。
「まず私が生まれたのは、この大陸ではないどこかの島だったんだ。そこには五つの家が存在していて、それぞれ親子三人暮らしの十五人しか存在しない島だった。そしてそのうちの一つが私の家だった」
その時エリセツアの脳裏によぎったのは一番古い記憶である他の四つの家の幼馴染との記憶だった。
「エリセツア、これから君が仲良くしていくのがそこにいるジオルドくん、シェリアちゃん、ヒイロくん、そして今はいないけれどスピカちゃんという子だからね」
「これからよろしく、」
「なんだよ縮こまりやがって。おじさんの子どもなのに穏やかなんだな!」
「ヒイロくん?君のお父さんからはビシバシ教育していいと言われてるんだ。僕の可愛い娘をいじめたらどうなるか分かるかい?あと僕はお兄さんだ」
ヒイロという少年は魔法の才能があった。だから五家の人間の中で一番魔法が得意な父さんがヒイロの親に頼まれて先生をしている。
「僕はジオルドだ。他の皆んなも今日初めて会ったんだから緊張しすぎる必要はないと思うよ。僕も緊張しているし」
「私はシェリアだ!私は緊張なんかしてないぞ。それより早く皆んなで森に行こーよ!私初めて行くんだ!!」
エリセツアの初めての出会いは騒がしいものだった。初めて会った日は父さんが保護者として森に探検に行くという、小さい子どもには早すぎる遊びだったがその時の私は初めての友だちにワクワクしていて危険なことなんてお構いなしだった。
「あ、そう言えば俺自己紹介してなかったな。俺はヒイロ。この中では一番年齢が高い八歳だ!」
「私もちゃんと自己紹介してなかった。エリセツア、六歳です」
「エリセツアちゃん!良い名前だね。というかスピカちゃんって子はどこにいるの?ヒョウセウお兄さん!」
「それがね、スピカちゃんの両親に隠れて森に忍び込んだらしいんだ。だから今日はそのスピカちゃんも探さないといけないんだ」
スピカは好奇心旺盛で、森という普通、未知で危険な場所にも平気で行ける子だった。話を聞いたら余計にエリセツアは仲良くなりたくなり森に入った後、皆んなで必死に探した。
するとエリセツアは木の上で横になっている少女を見つけ、勇気を出して話しかけた。
「スピカちゃんですかー?おーい」
「んーん、何、気持ちよく眠ってたのに、、って誰?ママじゃない人!」
そしてエリセツアはスピカを呼び、ヒイロたちの元へ連れて行った。
「おおエリセツアよく見つけてきてくれたね。この子のピンク色の髪は間違いなくスピカちゃんだよ」
「エリセツアは凄いな。僕の負けだよ」
「私が最初に見つけたかったのに、、まあいいや!よろしくねスピカちゃん!」
そうしてエリセツアと幼馴染四人は初めてそこで対面した。その日からエリセツアたちは毎日のように集まって遊び、雨が降った日も風が強い日も島中を遊び回った。ヒイロとジオルドが喧嘩をしたり、シェリアが崖から落ちそうになって四人で助けたりした。
そんな波乱万丈な生活も四年が過ぎると変化が訪れようとしていた。きっかけは五人が将来島を出て外の世界を旅したいとそれぞれ親に話したことだった。
「なあエリセツア。良かったら友だちと一緒に魔法を習う気はないかい?」
「魔法!?やってみたいに決まってるじゃん!勉強は面倒だけど魔法を使うためなら頑張れる!」
「エリセツアもやっぱり魔法使いになりたいのね。でも魔法使いは大変よ。それでも後悔しない?」
「大丈夫だよ母さん。私だってもう十歳なんだから自分がやりたいことは自分で責任取れるよ」
五家の親はそれぞれの力を持っており、旅をするにはその力をもっていないといけないため、親たち全員で全ての力を教えてくれることになった。五人はそれが何を表しているかなんて何も分からなかったが、すぐに気づくことになった。
「今日からお前たちに影の力を教えるヴィオラよ。私のことは知っている思うけれど念のため自己紹介しておいたわ」
「ママ、何でそんなに上から目線なの、、」
「シェリア!ここでは先生とお呼びなさい!皆んなもこれから私のことはヴィオラ先生と呼びなさい」




