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彩旅のエリセツア  作者: 泥竹チャハン
第6章 魔女の国ゼイノカウン編
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99話「向き合いと目覚め」

「答えとは何だ私よ」


「私は決して死んだ人たちを忘れたりしない。それは何よりも死を恐れる私が彼らの気持ちを汲み取れるからだ。つまり死んだ人たちの事で思い悩むのでも目を背けるのでもなく、受け入れるんだ」


 受け入れるとは、私たちのために庇って死んだ人たちの無念や勇姿を記憶する事だ。死んでしまった人はもう戻らない、ならば死んでしまったからこそ今の私があると割り切って考えるのだ。それが私の思想だ。


「私の眷属として合格です。優しくありながらも迷わない。いずれ訪れる私の命令でもこれなら安心して任せられますよ」


「これは今一緒に旅をしているヴィアレンから学んだ事なんだ。ヴィアレンは割り切ってると言うか合理的なんだよ」


 最初、負の感情を目の前にして、本当は怖くて足がすくんでいた。あまりにも多くの嫌な記憶や考えが頭に入って来て考える事を放棄したくもなった。けれど違う。これはいつか向き合わなければならなかった私の試練だったのだ。

 これを越えなければ私は彩旅を続ける資格はないんだ。

 

「まだだ私よ。今の私には共に行動する人間がいる。どいつもこいつも私の足元にも及ばないどうしようもない奴らだ。つまりそいつらを旅に連れて行くと言う事はそいつらをついて来させる責任を持たなければならないとは思わないか?」


「それはおかしいでしょう。エリセツアの周りにいる者は仲間です。共に支え合うからこそ成り立つ関係で、エリセツアが保護しているのではない」


「分かってる私。ヴィアレンたちは十分強くはなったがそれでも外れ値となる様な異常に強い敵には勝てない。だからこそスピリアを学園に置いたんだ。でもな、間違っていたんだ。本当はスピリアの実力を信じていないのではなく自分がいるから巻き込まれてしまうのではないかと言う懸念からの行動でもだったんだ。だから私は責任を持つのではなくスピリアたちを信じる力をもっと強く持つ。これが私の結論だ」


「エリセツア、今までの貴方はどこか自分でやり遂げなければならない様な焦る気持ちを持っていた。成長しましたね。これからは仲間を信じてください」


 私の覚悟は負の感情に更に追い討ちをかけた。しかし私が深く悩む負の感情はまだあった。


「詭弁の様にしか聞こえないがな。では私よ。私は今まで何となく気づきながらも気にしようとしなかった事があるだろう」


「私自身の強さの事か。神の眷属である以前に私は、ラゴスハインに住むボルブロ種の龍王を倒せたり、膨大な魔力を消費するポンポン使え、魔法以外にも力を持つ。何となく単独で国を相手取る事さえも可能ではないかと思う事だね」


「あまりにも私は外れ値の中の外れ値。神が降臨しているのと違いがないだろう。占い師からは世界に嫌われているとも言われた。ならばこの世界にいてはいけない存在ではないか?」


「そうかな?私の力は確かに異常だ。でも私は人間だ。だから周りの人間と共に過ごし幸せを分かち合える。それだけでこの世界に馴染み、世界に住む資格があるよ」


 自分の力は自分の才能と経験から成るものだ。だから私が私をどうするかを決める。そして力は自分のために使う。

 つまり自分が望む事、周りが幸せで快適でいられ、冒険で埋め尽くされる事だ。それならば世界が私を排除しようとする理由もなくなる。


「自分のためでありながら周りのために生きる。理想論でしかありませんが、貴方ならきっとそれが出来るでしょう」


「そろそろ私の陰の心は失せる時間。きっと私を待つ人たちがいる。これでも食らって!!」


 そしてさっきのお返しに私は本気のアッパーを陰に打ち込んだ。すると心が軽くなり、氷神はにこやかに笑った。


「と言うかこれ以上、いなくなったりしないでくださいエリセツア。また眷属を選び直すのは面倒ですからね」


「今回は私の力を制御し切れず魂が引き離されてしまったんです。前回みたいに記憶喪失になった訳ではなかったからまだましですよ。記憶喪失になっていたらあらゆる事が未知となってしまう、あの時の感覚は恐ろしいものでしたから」


「はは、やはり貴方は多く経験したのですね。では目覚めたら仲間たちにモナレンから旅立つまでのエリセツアをしっかり教えるのですよ。これは命令です」


「そうですね。昔を振り返る事は楽しいけれど辛い事も多くあったから話したくなかった。でも今は違う。過去と今、そして未来と向き合うんだ」


 そして氷神による意識の具現化空間はゆっくり閉じて行った。

 エリセツアが目覚めたのは儀式が終わってジャンヌたちによって、スピリアたちが過ごす空き家まで運ばれた後の夕方だった。


「エリセツア、?エリセツア!!エリセツアが目覚めました!!ケイディさんヴィアレンさん来てください!!」


「その声はスピリア?でも何でここに、しかもヴィアレンとケイディ、?」


「はあ、僕たちこれまで本当面倒くさかったんだからね?本当感謝してくれないかい?」


「エリセツアさん!!俺ですケイディです!!仮面は取りましたけど俺って分かりますか!!!」


 スピリアとケイディがあまりにも騒ぐので私とヴィアレンは笑顔で呆れていた。

 そして私はこの場所は魔女の国の空き家で、百人の魔女たちによる儀式によって私が目覚める事が出来たと聞かされて、これまでの彼らの苦労を考えるとたくさん労わなければならないと思い、一旦面倒くさくなって眠る事にした。しかしスピリアの泣き声やケイディがヴィアレンにひたすら嬉しさを伝える声がうるさくて中々眠れなかった。


「スピリアさん。俺たちで明日、エリセツアさんに質問する事を決めておきましょう。命を救ったも同然なんですからそのぐらいは良いですよね!?」


「もちろん良いに決まっています!この国とエリセツアの関係やエリセツアのモナレンから旅立つ前、互いに情報共有しても分からない事が沢山あるのでメモしておきましょう」


「僕もエリセツアの秘密にはちょっと興味があるからね。特にあのとてつもない強さとか聞きたいな」


 三人はエリセツアが目覚めた後の夕食で、眠るエリセツアを見ながら各々質問を考えていた。

 こうしてエリセツアは次の日に何時間もの間、質問攻めになるとはつゆ知らず、ぐっすりと眠っているのだった。

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