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デウス・エクス・マキナは語る



「いやあ、今回観た劇は中々に良かったな」


「人生という名の劇」


「この機械装置はその終わりを迎える為の存在だから、こうして終わりを観るのが好きなんだ」


「終わりまで観るのが好きなんだ」


「お前達もそうだろう?」



「なあ、観測者」



「ああ、気にすんな」


「この機械装置は全知全能で観測側っつー、そういう存在」


「ゲームとかでも居るだろ?バッドエンド迎えたりするとアドバイスくれたりするキャラみたいな、そういうお助け要素」


「この機械装置がそれだ」


「ゲームのシステム的にも、この世界的にもな」


「物語に終わりが無い」


「それはつまり未完って事になっちまう」


「未完じゃ終わらねーし、それじゃあ締まらねえ」


「だからこそのこの機械装置の出番ってわけだな」


「そういう時にこの機械装置が登場して、物語の風呂敷を畳む」



「まあ要するに、今回がそういう話ってわけなんだけどよ」



「この機械装置による、適当くっちゃべって好き勝手解説するコーナー、ってな」


「よくあるだろ?解説回」


「安心しろ、ここはどこでもない空間だから」


「つってもまあある程度のネタバレをするっつーだけで、そう有用な情報はねーと思うけど」


「だってそれでこそこの機械装置だろ?」


「この機械装置は最後に畳むのが役割であって、進んでる物語には基本的に出てこねーんだよ」


「終わらない場合は終わらせる」


「終わる場合は、手出ししねえ」


「バッドエンド迎えずにルート進んでる場合、アドバイス役が出る事はねーって、そういう事だよな」



「もっともこの機械装置がそれなのに普通に存在して登場してた理由は、この機械装置が攻略対象だからなんだが」



「そう、攻略対象」


「実は攻略対象だったりするんだぜ、この機械装置は」


「とはいえ二週目から攻略可能になるタイプだから、どう足掻こうとリーリカがこの機械装置を攻略するのは無理なんだけど」


「当然だろ?」


「ちなみに増量版云々つってたけど、ま、わかるよな」


「増えた攻略対象」


「一人はこの機械装置、二週目からの隠しキャラ」



「そしてもう一人、カーナ・ノヴィコヴァ」



「今更言うのもアホ臭ぇってくらいにわかりきってる事だから、わざわざ言いたくはねーけど」


「でもこれが事実だ」


「ちなみに今回のルートはカーナルートのトゥルーエンド」


「ハッピーエンドの場合はナージャが一诺(イーヌオ)と駆け落ちしたりせず、屋敷に残る」


「バッドエンドは、さてな」


「あんま言うもんでもねーよ」


「強いて言うならカーナを邪険にするような選択肢を選んだりすると入るルート」


「要するに一番になろうとして、思い出になろうとするんだよ」


「わかるか?」


「カーナは刺客に狙われていた」


「それも命を、だ」


「けれどそれを闇魔法で存在感を消す事で回避していた」


「それを止めたらどうなる?」



「そう、あいつは殺される事でリーリカの思い出になって、忘れられない存在になろうとするんだ」



「ま、これはバッドエンドルートであって、この機械装置が観賞してたトゥルーエンドルートとは何ら関係ねーから気にすんな」


「ただの余談で雑談で閑話休題」


「言うもんでもねーっつってたのはどうしたって?」


「おいおい、この機械装置は今まで言いたくても言えなかったんだぞ」


「システム的にな」


「このシステムっつーのは、ゲームだったりこの機械装置の存在だったり、まあその辺」


「つまりこれでも結構テンションがハイになってんだ」


「表情を動かすような機能はねーから、そこに変化は一切ねーけど」


「ネタバレ知ってるのにネタバレ出来ねえってのは辛くてしゃーねー」


「辛いっつー感情自体この機械装置には存在してねーから、伝播される時くらいしかわかんねーけどさ」


「でもネタバレ解禁ってのは良いよな、楽しくて」


「楽しいっつー感情もねーけど」


「自分で言ってる通り、この機械装置は機械装置でしかねーからよ」



「あ、ちなみにこの機械装置のルートの場合、紆余曲折の末に主人公がこの機械装置と同じ存在になるっつールートな」


「時間の流れとか世界の流れとか」


「そういう全てから切り離されて、ある意味停滞しているとも言えるこの機械装置」


「そんな状態になって、普通は感情なんざ維持出来ねえ」


「それこそ感情豊かな人間という生き物の、目まぐるしい人生を観賞でもしねえとな」


「結果、無表情の主人公とこの機械装置が人の生き死にを無表情で見下ろして観賞するっていう病んだスチルが展開される」


「二週目で何見せんだって話だよな」


「もっとも今回リーリカが至ったルートも病んではいんだけどよ」


「カーナ、あれでヤンデレキャラだし」



「まあ一先ずその辺は終わるとして、何から話すか」



「何が良い?」


「適当で良いよな」


「この機械装置はお前達観測者の存在を認識はしてるが、だからってどういう反応をしてるかまでは知らねーんだし」


「全知全能ではあるけど、全の外にある観測側を知る事なんざ出来ねーのさ」


「そういうモンなんだよ」


「あー、じゃああの辺の話でもするか」


「ゲームでナージャが孕まされるルートの時、何故一诺(イーヌオ)が立ち塞がったのか」



「そして何故、自殺に至ったのか」



「敵に回った理由をわかりやすく言うと、あれは契約によるもの」


「つか、取り引きだな」


「まずナージャが誘拐され、人質状態に」


「逆らえばナージャの身が無事では済まないと言われ、従うしかなくなる一诺(イーヌオ)


「そんな一诺(イーヌオ)に、分家当主はこう言うわけだ」



「お前が邪魔者を撃退すれば、本家の娘に手出しはしない」



「ま、ウソなんだけどよ」


「わかりやすいトラップだっつーのに、よくまあ信じる事が出来たもんだ」


「信じるっつーか、縋るっつー感じだったんだろうが」


「わかるだろ?」


「要するに分家当主が手出ししねーってだけだったんだよ、これ」


「だから分家の上二人がナージャに手を出した」


「ナージャを守る為に一诺(イーヌオ)が必死に死力を尽くして足止めしてる最中にな」



「つまり、一诺(イーヌオ)はそいつらがナージャを手籠めにするだけの時間を稼いじまったんだ」



「絶望、だよな」


「そう、絶望」


「この機械装置は観賞中の劇で繰り広げられてる感情で、それらを楽しむ」


「感情ってのは伝播するからな」


「だから人間の人生っつー劇が楽しいんだ」


「自分の中には存在しねえのを楽しめるから」


「劇ってのはそういうもんだろ?」


「あ」


「一応言っとくが、この機械装置にも感情が全部無いっつーわけじゃねーからな」


「楽しみたいとか、感情を得たいとか、そういう、何だ?」


「枯渇?」


「欲望?」


「とにかくそういう、欲しいと思う感情はあるっつー話」



「……また脱線した」


「いけねえな、どうにも脱線する」


「この機械装置ってヤツは基本的に一方的に話すように出来てっからよ」


「そこまで会話するような機能がねーんだ」


「好き勝手に話す」


「結果脱線しまくりになるっつーな」


「まあ良いか」



「真実を知った一诺(イーヌオ)は絶望した」


「絶望して、もうナージャの前には出られない、となった」


「だってそうだろ」


「知らなかったとはいえ、見なかった振りをしていたとはいえ、ナージャを穢す事に加担しちまったんだから」


「ナージャを神聖視までしちまってる一诺(イーヌオ)に、それは耐えられる事じゃなかった」



「守れなかった事」


「ナージャを傷付けられ穢された事」


「主人公達を妨害する事でナージャが救われる可能性を潰してしまった事」


「騙されたとはいえ分家の企みに加担した事」


「穢され、心が壊れたナージャを、見てしまった事」



「だから死んだ」



「耐えられなくて、自殺した」


「踏み絵が出来なくて死ぬようなもんだよな」


「全知全能の神であるこの機械装置が言う事でもねー気がするけど」


「とにかく心が壊れたんだ、そのルートの一诺(イーヌオ)は」


「生きていく希望も何も無い」


「だから、懺悔しながら自殺した」


「その時の懺悔先はこの機械装置じゃなくてナージャだったが」


「まあ、あいつの信仰対象はナージャだから、懺悔先としては合ってるんだろうけどな」



「あと、ああ、そうだ」


「逆ハーレムルートでのナージャの笑顔スチル」


「それについても話そうか」



「あれは問答に失敗すればすぐにナージャが自殺するっつーハードモードなんだよな」


「しかし問答を繰り返せば生き延びて、笑顔を見せてくれる」


「もっともこれは、実はちょっと闇が深かったりするんだが」


「増量版の方のファンブックに書き下ろしSSで詳しい裏事情が書かれてんだぜ、これ」


「リーリカはそれを知る前に死んでっけど」



「具体的にどういう事かっつーと、問答の間にナージャは一诺(イーヌオ)に会ってんだよ」


「このルートだとナージャに一诺(イーヌオ)が刺客だとバラした際、一诺(イーヌオ)は立ち去っててな」


「立ち去るっつーか逃げるっつーか」


「拒絶されるかもしれないっつー考えに呑まれて、それを拒絶して逃げる」


「まあ大体そんな感じで一诺(イーヌオ)はナージャから離れるわけだ」


「それもあってナージャは気が滅入っていた」


「置いて行かれた」


「その感情によって」


「だが、一诺(イーヌオ)は帰って来る」


「問答の正解を選んで生き永らえさせる事が出来れば、主人公の知らないところでナージャは一诺(イーヌオ)に再会出来るんだ」


「そうして再会したナージャと一诺(イーヌオ)は、裏で話した」



「駆け落ちをしよう、と」



「そう」


「要するにさっきまで観てたのと同じルートだよな」


「厳密には違うが、似たようなもん」


「裏っかわで、ナージャは準備されていた偽物とすり替わった」


「リーリカも前に言ってただろ」



「そのスチルのナージャにはチョーカーが無かったって」


「ナージャの宝物でもある、あのチョーカーが、だ」



「それはなぜかと言えば、本物じゃないから」


「偽物だからチョーカーが無いし、主人公に微笑みを見せてるんだ」


「笑顔を見せるその時には、本物のナージャは既に一诺(イーヌオ)と駆け落ちしてる」


「立ち絵でもそれまでずっとチョーカーを身につけていたナージャだが、そのスチルのイベント」


「精神回復イベントの時には、もうチョーカーは身につけていない」


「立ち絵ですらもな」


「それは既に偽物だからつけていない、が正解」


一诺(イーヌオ)との別れに吹っ切れたから、想いを捨てる為に髪を切るみたいな、そういう系かと思いきや」


「まったくもってそうじゃ無いっていうな」



「尚、そのルートで主人公がその真実に気付く事は無い」


一诺(イーヌオ)からナージャを守りきれたと思いながら、日常を過ごす」


「偽物と一緒にな」


「これが逆ハーレムルートでナージャ救出エンドの真実」


「逆ハーレムルートだっつーのにナージャに焦点当ててる辺り、どうかと思うけど」


「乙女ゲームは乙女を攻略するゲームじゃねえだろっつの」



「ま、良いや」


「この機械装置にゃ関係ねぇし」



「ちなみに今回の劇でどうしてこうなったかっつーと、好感度だな」


「増量版では好感度が存在してんだよ」


「生きてんだからそういうのがあんのは当然だろうが、な」


「んで今回のは、ナージャの好感度が低く、一诺(イーヌオ)と対立し、尚且つカーナからの好感度が高いとこうなる」


「無印で周回してるやつ程このルートに入るぜ」



「何故って?」


「そりゃカーナが攻略対象になってっからだよ」



「無印版では攻略対象に毎回話し掛けようとすると、好感度低い時はしつこいっつー理由で逆に好感度が減る仕様になってる」


「だからちょいちょい間を開ける必要があるわけだ」


「その為、プレイヤー達はモブキャラクター枠であり好感度が存在しないナージャやカーナに話し掛ける事が多かった」


「ナージャの場合は登場がランダムだからアデリナやラーザリが登場する事も多かったけどな」


「そうしてプレイヤーは雑談的に情報を得たりもしてたわけだ」


「ナージャやカーナについてのな」


「ちなみに周回プレイヤー達は時間短縮も兼ねて場面変更の手間が少ないカーナを選ぶ事が多い」



「で、今回」


「カーナは攻略対象になった」


「無印版では攻略対象じゃないから、何度話し掛けても問題は無かった」


「が、今回は攻略対象になっている」


「そこが問題だ」



「ああ、普通なら好感度は下がるさ」


「好感度低い時ならしつこいって認識になるからな」


「しかし相手はあのカーナ」


「ヤンデレキャラ枠でもあるアイツだ」


「カーナのみ、好感度が低い状態でしつこく話しかけても好感度が下がらないキャラなんだよ」


「寧ろ好感度が物凄い勢いで上がる」



「勿論この世界はゲームじゃないリアルな世界だが、連動はしてっからな」


「ゲームでそういう設定だからこの世界にも反映されてる」


「この世界にそういうルートがあるのを誰かが受信してそういう設定のゲームにした」


「どっちかまではこの機械装置も知らねーよ」


「だがまあ、そういうこった」


「ゲームでもリアルでも、結果に変わりはねーんだよ」



「運命ってそういうもんだろ?」



「さてカーナだが、アイツは誰よりも優先して欲しいタイプだった」


「だから自分を優先して沢山話し掛けてもらえる事を喜ぶんだ」


「そうしてどんどん独占欲が強くなる」


「リーリカを止めるっつー名目で口を塞いだり担いだりとかしてたよな、アイツ」


「ああやってスキンシップを増やして、抵抗だの何だのが無いよう慣れさせた」


「そうすればカーナとのスキンシップに疑問を持たなくなる」


「それこそ、傍から見れば恋人にしか見えないくらいの距離感にも、な」



「あー、何の話だったか」


「そうそう、今回の劇だ」



「独占欲が強いカーナの好感度が高く、ナージャからの主人公への好感度が低いとこの劇になる」


「このルート、か」


「ちなみにナージャの好感度についてだが、まあ、わかるよな」


「言うまでもなくわかりやすい」


「大声で挨拶だのぐいぐい行く選択肢だの、そういうアレ」


「無印版では好感度が無かったが、今回は好感度が存在してんだ」


「そしてプレイヤー達はナージャが怯えるその仕草や声が可愛らしいからっつってその選択肢を選ぶ」



「さあ、どうなる?」



「簡単だよなあ」


「ナージャからの好感度が当然減る」


「何せ苦手な部類の対応なんだから、そりゃ当然だ」


「そうして苦手と認識されると、めちゃくちゃ避けられる」


一诺(イーヌオ)との対立イベントも発生する」


「そこで出る選択肢でカーナの呟きに言及したり、聞き直したりすればもうちょっと違うルートに入ったかもしれないが」


「ま、無理だよな」


「アイツの性格じゃ」



「だがこの劇」


「じゃなくてルートだと、ナージャはとても幸せになれる」


「何せ駆け落ち出来るからな」


「ナージャにとっては一诺(イーヌオ)だけなんだよ」


「世界に存在してんの」


「観測者であるお前達も、ナージャとリーリカと一诺(イーヌオ)の視点を見ただろう?」


「ナージャの視点、碌に一诺(イーヌオ)以外出てねーんだよ」


「リーリカは出るけど、認識してるかっつーと微妙」


「そもそも苦手な対象だしな」


「だからナージャの視点だけ見ると、よくわからんまま凄い勢いで事が進んでるんじゃねーかな」


「リーリカ視点の場合は正統派に主人公らしく色んなヤツと関わったり行動したり」


一诺(イーヌオ)視点の場合は内側でめちゃくちゃ悩んでる面倒臭さが如実に出てる」


「三者三葉」



「あ、増量版をプレイしたプレイヤーだけどよ」


「大体がこのルート入るんだよ」


「無印通ってるヤツは特に」


「何度も言うけど」


「んで、これはナージャにとって幸せなのでは?ってなる」


「まあナージャからすりゃ好きな相手と一緒に居られる上、しがらみとか全部捨てる事が出来たわけだしな」


「作者インタビューとかのアレ」


「アレでも作ってるヤツが言ってんだよ」



「全部のルートの中でも、これが一番ナージャが幸せになれるルートですね」


「他にはヤバいバッドエンドがあるのもそうですけど」


「まず、家に居る事自体が彼女にとって苦痛なんです」


「でも彼女は耐えれちゃうんですね」


「耐える度量がある」


「ただしこのルートだと精神的に負荷が強いというのが合わさり、耐えられなくて、爆発する」


「その後色々あってしがらみ全部捨てた彼女はめちゃくちゃ吹っ切れるんです」


「多分、これが素なんでしょうね」



「ってな」


「実際前世の色々を考えると、吹っ切れた姿の方が素なんだろうけどな」


「ナージャの前世である筑流は、大人になるしかない子供だった」


「でも、子供なんだよ」


「ずっと」


「頑張って大人になってるだけで、本当は子供なんだ」


「ちなみに一诺(イーヌオ)は無理して大人になったタイプな」


「子供ではねーけど、大人としては歪なヤツ」


「どこか足りてねーんだよ、アイツは」


「だから一人じゃ生きていけねえ」


「ま、それでも祖母の教えと思い出があるお陰で、芯だけはしっかりしてんだけどな」


「その分芯以外が酷い脆さなのが難点だ」



「ちなみに無印勢でこのルート入ったプレイヤー、一诺(イーヌオ)とナージャのカップリング作品を大量生産してたりするぜ」


「普通のルートで幸せになるやつだったり、その後を描かれてたり、な」



「んで、あとは何を話すか」


「駄目だな」


「この機械装置は基本的に会話なんてしねーもんだから、好きに喋るのだけでも脱線し過ぎちまう」


「何話したかも覚えてねーや」


「わざわざ会話するような相手もいねーしな」


「この機械装置、普通見えねーし」


「だってのに可能だったリーリカとの会話については、主人公補正によるもの」



「とは、違うかもな」



「一回死んでるから観測可能だった」


「もしくはゲームでこの機械装置というデウス・エクス・マキナの存在を認識していたから見る事が出来た」


「こういう姿としてな」


「神なんざ基本的に不定形だから、見るヤツのイメージで変わるもんだ」


「先にこの機械装置という存在を認識してたから視認出来た」


「っつー事かもしれねーな」


「ま、知らねーんだけど」


「興味ねーもん」



「あ、そうだ」


「あれも話すか」


「リーリカの前世である紡が死んだ後の話」


「まあ、あれで紡は死んでんだよな」


「強盗にやられて」


「ちなみに姉である筑流も寝てる間にさっくりやられて死んでる」


「だからナージャには死んだ時の記憶も無い」



「さてその後どうなったかだが、死に際だったせいでリーリカの時にゃ記憶として残ってねーが、紡は一応動いてたんだ」


「意識朦朧になりながら、強盗の姿をスマホで録画して友人に送ってた」


「カメラに血がついていた為、友人はドッキリか何かかと思った」


「そう返信もした」


「が、返答は無い」


「ドッキリならともかく本当だった場合、放置するわけにはいかない」


「一人で行くわけにも、な」


「というわけで友人は近所の交番でお巡りさんに付き添いを頼んだ」


「万が一があったら大変だからな」



「その結果、丁度家を出て来た強盗と鉢合わせ、強盗は逮捕された」



「だが死が覆るわけじゃねえ」


「玄関に転がっている死体」


「それも親しくしていた友人の死体だ」


「寝室にも姉と思われる死体があると伝えられた友人は、相当にショックだっただろうぜ」


「かなりのトラウマも抱いてたしな」


「ああ、勿論それもこの機械装置は観測してる」


「リアルタイムでその感情の伝播が来たわけじゃねーから、具体的な感情は知らねーけど」


「とはいえその時のお巡りさんが親切にしてくれて」


「心の拠り所になって」


「そのまま恋人関係になってもうすぐゴールインするらしいからよ」


「トラウマが過去の記憶になるのも、時間の問題じゃねーの」


「良い事だ」


「別れがある分出会いがあって、あとは生き残ってる奴らが減った分以上に増やせば良い」



「そうすりゃ世界は回ってくぜ」



「んな事を言えるのはこの機械装置が人間じゃなくて」


「色んな人間の生き死にを劇として観てきて」


「別れに悲しむとか、そういう感情を知らないからだろうけどな」


「人間ってのは、色々複雑でいけねえや」


「面倒臭ぇし」


「劇が終わった時同様、人生の閉幕だって拍手で締め括りゃ良いだろうによ」


「そう言うこの機械装置は腕がねーから、拍手する手もねーんだけど」



「そういやこれも余談だが」


「いやここで語る全ては余談だが」


「ラヴィルはヴァレーラんとこで保護されたぜ」


「養子縁組してラヴィル・マショーになった」


「その後も普通にゴーシャ含めた攻略対象三人組で仲良くやってる」


「カーナとしても自分が一番っつー自負があるからか」


「それともそいつらが自分より優先される事は無いってわかってっからか」


「リーリカがそいつらと交流するのを止めたりはしてねぇ」


「普通に仲良くやってんぞ」


「ま、カーナとリーリカで正式に婚約したっつー安心があるのも理由かもしれねーけど」


「リーリカは逃げらんねーだろうぜ」


「逃げようとか思わねーだろうがな」


「逃げるような理由も、カーナは見せねーと思うし」


「アイツはゼッテェに尻尾を掴ませないタイプだ」



「あん?歯車の音?」


「ああ、アイツらが時々聞いてた方の歯車の音な」


「お察しの通り、この機械装置の歯車の音」


「テンションが上がったり、劇を見る事で伝播するその感情を得た時なんかに音がデカくなるんだよ」


「わかりやすく言うなら興奮か?」


「ま、この機械装置からすりゃ劇だしな」


「劇見て盛り上がってる証拠、だとでも思ってくれりゃそれで合ってる」


「盛り上がりどころで盛り上がるのは当然だろ?」


「特にこの機械装置は人間の感情で巻き起こる劇が好みだからな」


「感情が渦巻いてたりする時、つい盛り上がっちまう」


「伝播するその感情の影響を受けてるから、っつーのもあんだろうけどよ」



「あと何かあったか」


「あー」


「カーナと一诺(イーヌオ)の違いについても言っとくか」


「一途過ぎる程に一途なのは似てっけど、あいつら全然違ーんだよな」


「具体的には、大事なヤツへの対応が」


「例を言うなら、看病?」



一诺(イーヌオ)は立てないヤツが自力で立てるようにと協力するタイプ」


「立つ事が出来るようになったら自分が不要になるかもっつー事、理解してんのにな」


「なのに一诺(イーヌオ)は相手が立てるようになりたいと思う限り協力するし、実際に立てたら喜ぶんだ」


「そういうヤツ」



「対するカーナは立てるヤツを立てなくさせた上で看病するヤツ」


「それこそ根本的に、足を潰すなり切り落とすなりして立てなくさせる」


「バレないようにな」


「そうして自分に頼るしか無いんだと囁いて、看病する」


「そういうヤツ」



「どっちもその結果に至るまでの、その為の苦労は惜しまない」



「だが決定的に違うんだよ」


「自分で立てるようにと協力する一诺(イーヌオ)


「自分で立てなくさせて依存させるカーナ」


「相手に尽くそうとする辺りは似てっけど、真逆なんだよな」


「方向性とか、思い遣りとか、そういうのが」


「ま、重要視してる部分が違うっつーのもあるんだろうけど」


「進行形の現在を重要視するか、結果的に訪れる未来を重要視するか」


「結果良ければ全て良しなのか、進行形が良くなければその先に良しは無いと判断するか」



「性別が同じで性格的にも似てるように思えるが、全然違う」


「考え方もな」


一诺(イーヌオ)は他人の価値観に押し潰されがちなネガティブ思考」


「カーナは自分の価値観と他人の価値観をすり合わせた上で自分を押し通すゴーイングマイウェイ」


「だからこそ、色んなヤツの劇を観るのが楽しいんだけどよ」


「それだけ多種多様な人間が居るからこそ見れる劇だ」



「さて、これで大体話したか?」


「ああ、アイツらが転生した理由についても語っとくか」


「それは単なる偶然だよ」


「これに関しちゃこの機械装置は関係してねえ」


「多分他所の神が筑流を連れていこうとしたけど、そん時に人違い起こしてたからじゃねえかな」


「同姓同名のヤツ間違えて連れてってたせいで、筑流の魂が横に弾かれた」


「一緒に居た紡の魂もな」


「で、結果似た性質を持ってたんだろうナージャとリーリカにIN」


「とか、そういう事じゃねーの」


「多分な」


「正直言ってこっちの世界が先かゲーム世界が先かによってその辺変わる気がするが」


「似てた器か用意されてた器かとか、そういうのは考えるもんじゃねえ」


「理由はどうあれ、現実で良い劇が観れた」


「この機械装置はそれで良い」


「手が無いから拍手も何も出来ねーけど、楽しめたしな」



「さて」



「それでは神であるこのデウス・エクス・マキナの話は」


「物語においての難しい部分だの終わらない空白部分だのをどうにかする舞台装置」


「基本的に何でもありな存在でもあるこの機械装置による解説は」


「これにて終わり」


「これにて終わる」



「ここからは後日談」



「映画のエンディング中に流れるヤツ、あるよな」


「アニメの最終回のエンディングや、エンディング後に流れるのもある」


「後日発売のファンディスクとかでもあるんじゃなかったか」


「この後はそういうもの」


「そういう後日談」


「ただの日常」


「ナージャと一诺(イーヌオ)のその後っつー、これまでを見てきた観測者用のおまけでしかない劇」


「それでもまあ、そういうのはまた楽しくて良いよな」


「本当はそっからまた山あり谷ありだと面白いんだが、残念ながらアイツらのその後にそういうのは無い」


「が、楽しいのもまた事実だ」


「何度でも言うけどさ」



「つーわけで、楽しもうぜ」


「すぐに終わる、おまけでしかないその後をよ」



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