第十二節 決着
第十二節 決着
「ダッ!」
ダッシュで逃げ出す松本。
(戦わずに抗うなら、コレしかなかろう)
「待てやゴルァアアア‼」
「落とし前付けんかいィイイイ‼」
敵も追って来る。その時――、
「とーう!」
「!」
「?」
「‼」
「⁉」
イブキが現れた。
「マツモーン‼ 私は死なないわ、アナタが守るもの。間違えた、アナタは死なないわ、私が守るもの」
「何だ? コイツ、馬鹿か?」
「死にてぇのか?」
「(マズい!)イブキ――‼ 逃げろ――‼‼‼」
瞬間――、
「ピュオォ――‼」
笛を吹くイブキ。
「⁉」
そして――、
「スキャンダルの音がしたぜ?」
パパラッチャーバカアキが登場した。
「おっ! やってんねー。片や、傷だらけの松本、もう片や、獲物持ちの集団。いい画が撮れそうだぜ」
「ぱっ!」
AIBOOの一眼レフカメラを取り出すバカアキ。
「パシャパシャパシャ」
そしておもむろに写真を撮るバカアキ。
「ヤメロぉおお‼」
「見世物じゃねぇんだ、やめろォオオ‼」
抵抗する×2△□×高校の生徒達。
「ここで撮った写真を、警察に知らせてやれば、と」
「逃げろォオオ‼ 皆、顔は隠したな⁉ 一時撤退だ‼‼‼」
×2の男は生徒達に撤退命令を出す。
逃げ出す×2△□×高校の連中。
(た……助かった……!)
松本はバカアキに結果的に助けられた。
そう、結果的に――である。
「ちぃっ! もう少しのとこだったのに」
バカアキは不満そうだった。
「ありがとよ」
「!」
松本はバカアキに礼を言った。
(何がなんだろう?)
バカアキは疑問に思う。
「ほれ。今はこれだけしか持ってないが、後で必ず礼はやる」
「サッ」
バカアキに諭吉を差し出す松本。
「ひぃふぅみぃよ、……5枚⁉ 5万もくれんの⁉」
「ああ、自由に使ってくれ。それと、イブキ。ありがとな、助かった」
「‼ マツモンがアタイに礼を言った――‼ 今日は雹が降るぞ――!」
叫ぶイブキ。
(スキャンダルを撮ろうとしただけなのに……こんな……)
疑問を抱くバカアキ。
二回目になるが、松本はバカアキに結果的に助けられた。
そう、結果的には――である。そこに思いやりや情は無かった。
松本は一息ついて、物思いに更ける。
(今日は色々と散々な日だったな)
「ぷーわぷーわぷわぷーわぷー」
イブキは鳴いている。
(左腕と5万を失ったか……しかし――)
「ふ――」
ため息をつく。
(真の恐怖は、コイツを失う事だ)
「ぷーわぷわぷ、ぷー」
松本の心配をよそに、奇声を上げ続けるイブキ。
「イブキ、暫く学校を休む。代わりに片手でできるゲームは付き合ってやる!」
「おっおっおっおっ。乗り気だねぇマツモトキ〇シ?」
「俺は松本だ」
「そうと決まれば、レッツ帰宅だぜよぉ!」
「やれやれ(人の話聞いてんのかコイツ?)」
松本とイブキは家路を辿る。松本はとりあえず学校を3日間休んだ。
4日目――、
満を持して学校へ通う松本。廊下に差し掛かる。すると――、
『松本ぉおお‼』
セキズとフタエが現れた。
「ケガの調子はどうだ⁉」
「左腕は痛んで無いか⁉」
セキズとフタエは口々に言う。
「ちょっと待て、いっぺんに言うな。それと、どうしてそんなに元気なんだ?」
松本は動揺する。
「どうもこうもねぇさ」
セキズが話し始める。
「×2△□×高校の連中、お前のお陰で撮れた写真を気にしててなぁ」
フタエも口を開く。
「あの写真は削除してくれ、警察にだけは言わないでくれの一点張りでな、これでもう俺らを襲う事は無さそうだぜ?」
「ハ……ハハ(こんなに上手く事が進んでいいのか……?)」
驚きを隠せない松本だった。
「松本……」
「!」
誰かの声が。振り返る松本。
タカマサだった。
「タカマサ……」
「グッ」
拳を交わす二人。そこに言葉は要らなかった。
「へへ……」
鼻をこするセキズ。
「はは……」
笑みが零れるフタエ。
こうして、○△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校と×2△□×(バツ2さんかっけぇ死角無し)高校の学校間抗争は終焉を迎える事となる。
季節は流れ、7月――。
松本達は期末試験も終わり、夏休みを迎えていた。
夜――、
「エイサァァーイ、ハラマスコ――イ」
イブキは浴衣姿で踊っていた。少し早めの夏祭りである。松本は踊るキャラでは無いので、遠くからイブキを見ていた。
(夏……だな……)
どこかの夜空の下で――。
「ビュン! ビュン‼」
夏祭りに目もくれず、タカマサは一人、シャドーピッチングをしていた。
「はぁ……はぁ……、もっと速くならねぇと……ランニングで下半身も強化するか……?」
タカマサは秋の大会を見据えて、トレーニングを欠かさない様だ。
「ヒュ――……ドドン」
遠くでは花火も咲いていた。
「ドドン……」
舞台は変わってここはシゲミの病室。ここからでも、花火は見える様だ。
(キレイじゃのう)
シゲミは花火に見惚れていた。すると、
「カリカリカリカリ」
同病室内で呪いの文章を書く者が……。
(こんな夜なのに……!)
口をすぼめるシゲミ。すると、
「びゃぁぁあああ」
大胸筋矯正サポーターを付けた男が目を覚ました。
(恐ろしや……)
シゲミは珍しく気弱になっていた。目をそむける。すると視線の先には、ひたすら眠っている男が……。
(キサマはええのう……。気楽で)
その時のシゲミは、優しい目をしていた。そこに、
「ガラガラガラ」
見回りの看護師さんが来た。
「あー、花火見えますねーここの部屋。良い光景が見えて、良い傾向だ。皆、しっかり観賞してから寝ましょうねー。ただしシゲミ、てめぇはダメだ」
「‼」
シゲミは目を丸くする。
「これ、訂正せい、訂正するな! 訂正するな、訂正せい!」
看護師さんはすごく悪い顔をして言う。
「シゲミさぁん? 主治医の今井さんから、アナタには厳しくしろって言われているんでさぁ。因みにこの縛りが解ける、予定は未定、未定は予定、ですから。じゃ」
「! ……」
シゲミは右の拳をフルフルと握りしめていた。
(今井め……! 忌々しい今井め……! ワシを相撲部屋へ入れる気じゃな……?)
シゲミの怒りは収まらなかった。
その夜、シゲミは一睡もできなかった。
夜が明け、朝――。
シゲミは徹夜明けのテンションで、最っ高にhighってヤツになっていた。
(もうワシを止められる奴は居らん……‼)
すると、
「あらっ、シゲミさん」
看護婦のBBAが現れた。シゲミは衝撃を受けた。
(こやつ、毛ほどの油断も、微塵の余裕もかましておらん……‼)
BBAは話し始めた。
「この前ね、私の子が試験で90点をとってねぇ」
(このBBAに……子が……‼)
シゲミは衝撃を受けた。BBAには、子が居たのだ。
(つまり……アイツと誰かがセッ……ヤメロ……! 想像するな)
「モヤモヤモヤ」
想像してしまうシゲミ。
(想像するな! 想像するな‼)
陥ったな。
「じゃあね、そういう事だから」
BBAは去って行った。
(ワシを止められる奴は居らんハズだったのに……)
「くぅん」
シゲミは悲しみに満ち満ちていた。
「ああ、そうそう」
BBAがUターンして帰って来た。
「私の年齢、18だから」
「! ! ‼ ⁉」
シゲミは言葉を失った。
「jk」
「⁉」
「女子高生」
「! ! ‼ ⁉」シゲミはブラックアウトした。




