第十一節 苦戦
第十一節 苦戦
「ゴシャア‼‼‼」
×2△□×高校の生徒達はドミノ倒しに倒れていった。
「おあぁ‼」
「ぐはっ!」
「ぎゃあー!」
次々と声を上げる×2△□×高校の生徒達。しかし――、
「んだコラァ‼」
無傷の者も居た。
松本を囲う。
「! それなら……‼」
身構える松本。
「オラ――――‼‼‼」
先程担いでいた、もう片方の×2△□×高校の生徒の両足を持ち、振り回して来た!
「わあ!」
「ぐあぁ‼」
「んだコイツゥ‼」
×2△□×高校の生徒達を、×2△□×高校の生徒を使ってなぎ倒していく松本。
しかし――、
「ハァ、ハァ……」
息が切れる。じわりじわりと体力を奪われていく松本。
「重てぇんだよ、ド畜生が‼」
「ぽいっ」
遂には×2△□×高校の生徒を投げ捨てる。カワイソス。
身構える松本。残る生徒は10と数名だった。
「オラァ‼」
スパナで殴りかかって来る生徒。それを――、
「ヒョイ」
避け、そして――、
「ゴッ‼」
顔面に一撃喰らわす松本。吹き飛んで行く生徒。
「ああああああああ‼」
次には素手で殴って来る者が。
「ガッ」
拳を掴む松本。そして――、
「ドッ‼」
腹部へと拳を一撃。
「かはっ」
崩れ、落ちる。
「一人一人で行くな! 一斉に掛かれ‼」
「ジリ……」
松本の正に360度を囲う×2△□×高校の生徒。
「くっ……」
松本も覚悟を決める。と――、
「お前が松本だな?」
×2△□×高校の内の一人が口を開く。
「⁉」
現れたのは×2の男だった。
(なんで高校の時点で×2なんだ……?)
松本は疑問に思う。
「松本かどうか聞いているんだ。答えろ」
「……」
数秒ほど時が流れた。そこで、
「は、ハイ。コイツが松本です」
松本の正体をばらす者が。
「! てめぇは……‼」
延安だった。
「悪ぃな松本。俺は転校して、もう○△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校の生徒では無くなったんだよ!」
叫ぶ延安。×2の男は口を開く。
「ご苦労。お前が松本か。ここ最近、お前とお前の学校は、喧嘩や野球部の試合で活躍している様だな」
「……?」
「俺達は自分より目立つ奴が嫌いなんだよ! 目立ち過ぎているお前は、ここで死んでもらう……! 行けぇええ‼‼‼」
「バッ!」
×2の男の号令で飛び掛かる生徒達。
「ガッ‼」
「ゴシャア‼」
正面の敵は殴打で倒す。しかし――、
「ゴッ‼」
後ろから来た敵にバットで頭を殴られる。
「くらっ」
「くっ!」
多少の目まいが。
「ツ――」
血も流れてきた。
「クソッ! がぁ‼」
松本は吠えながら応戦する。
振り向き、バットを持っていた男に蹴りを入れる。
「ドゴッ‼」
「うあぁああ!」
一蹴りで倒れる男。
「こっちがお留守だぜ!」
今度は左方向から――、
バットが襲って来る!
「ガギィン‼」
「ゴキッ」
松本は左腕でガードする。しかし、勢いよく振り込まれたバット、左腕の骨が折れる。
「がはぁっ‼‼‼」
崩れ落ちる松本。
「よぉ、さっきはよくもやってくれたなぁ?」
敵が余裕をこいて話し掛けてくる。
「今度はこっちの番だぜぇ?」
「す……」
「何だぁ? 聞こえねぇぞ?」
松本は何か呟いた。
「……すいませんでした」
「ぎゃはははははは‼ コイツぁいいや」
敵は腹を抱えて笑う。
「もっぺん言ってみろや」
敵は松本に催促する。
「す、すいませんでした」
瞬時に――、
「ゴッ‼」
右腕が唸った。
「――と言うのは冗談だ」
松本は目の前に居る敵を吹き飛ばした。
「な……何だコイツ‼」
「ひ、卑怯だぞ⁉」
「むくり」
敵の声をよそに立ち上がる松本。
そして――、
「ダッ‼」
走り出す。
「お、追え――‼ 逃がすな――‼‼」
敵は群を成して追って来る。
「ハァ、ハァ!」
ダメージの所為か、早くも息が上がっている松本。咄嗟に携帯を取り出す。
「プルルルル、プルルルル」
何者かに電話を入れた様だ。
「ガチャ……もしもし、松本君か?」
「ハァ、ハァ! すいさん‼」
電話の相手は臼井すいの様だ。
「何があったんだい?」
臼井すいは問う。
「し、質問は後だ……まずは話を聞いてくれ。助けてくれとは言わない……アドバイスをくれ」
松本は事態が急を要する事を伝えた。
「……何だ?」
「他校の連中に追われてる……ケガもした……」
臼井すいの問いに、松本は答える。
「敵の数は?」
「今は十数人だ」
「獲物は?」
「バットにスパナ、ナイフもある」
「マズいな……」
「‼」
松本は目を見開く。
「族はヤクザと違ってメンツを気にしない……とことん卑怯な手を使って来る可能性があるぞ……」
「分かった、何かアドバイスは無いのか?」
「……逃げろ。それだけだ」
「……わーったよ。じゃあな」
「ピッ」
電話を切る松本。
(逃げろ、か……)
「待て――‼」
敵の軍勢は追って来る。
「(誰が待つか)よっ!」
逃げ切ろうとする松本。しかし、俊足の敵が現れた。
しつこい様だが、松本の50m走のタイムは平凡で、6.8秒。俊足の敵は5.9秒のタイムを叩きこむ程の実力だった。ナイフを振りかざす俊足の敵。
「くっ!」
瞬間――、
「ビュン!」
何かが飛んできた。
「ゴシャア‼」
俊足の敵の顔面に当たる。
「はでぶ‼」
鼻血を出して倒れる俊足の敵。
「! 何だ⁉」
「ビュン!」
再び何かが飛んできた。
「ゴッ‼」
「ひでぶ!」
「ゴシャア‼」
「はでぶ!」
次々と倒れる敵。
「コロコロコロ」
飛んできた物体は地面に転がっていた。少しだけ後ろを見る松本。
「アレは……硬球⁉」
突如として飛んで来たモノ、それは硬球だった。
「! アイツ……」
物陰に身を潜める者が。
タカマサである。
(俺が出来る事はこれまでだ……松本、生き残ってくれ……)
松本は笑みが零れながら走る。
(恩に着るぜ……タカマサ!)
「待てコラ――‼」
しかし追手は勢いを緩めない。ひたすら走る松本――。
いつしか工場地帯に辿り着いていた。
「ハァ、ハァ‼」
松本は遂に足を止めてしまう。
(ここまで――、か……?)
「観念したか?」
「手間掛けやがって」
敵の軍勢もまた、工場地帯に辿り着く。
(サナギさん……)
サナギとは、松本にとっての伝説の師匠である。闘いのイロハ、礼儀作法、子供のしつけ方等、様々な事をサナギに教わった松本は、そのサナギを心から崇拝していた。
「け……喧嘩の……」
「なんだコイツ?」
「何かぶつくさ言ってるぞ」
様子のおかしい松本に、敵の軍勢は動揺していた。
(喧嘩の基本は自分に最小限のダメージが加わる様に攻撃する事。後はビビらせた奴が勝つ……)
サナギの教えを思い出す松本。
と、その時――
「ブーブーブー」
携帯が鳴った。
「ピッ」
電話に出てみる。
「よお、松本」
「さ……サナギさん……!」
サナギからの電話だった。
「いや、な。何となく電話したくなって。今、アメリカに居るんだけどな」
「何だ何だ?」
「電話を始めたぞ?」
ざわつく周囲。
「サナギさん……。今、ピンチです。ケガもしてます。相手は、十数人」
「そうか……」
「……」
沈黙の後、サナギは口を開く。
「『抗え、そして戦うな』そんなトコかな。電話している暇も無いだろ? 切るわ、またな」
「失礼します」
「ピッ」
電話を切る松本。
「やっと終わりやがったか」
「待ってやったんだから、落とし前は付けてもらおうか?」
敵の軍勢は口々に言う。
(『抗え、そして戦うな』……か)
「キッ」
目を鋭くさせる松本。そして――、
「ダッ!」
ダッシュで逃げ出した。




