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118 嵐のあと


 大騒動の冬季休暇前試験が終わり、三日ほど経った後。

 

「や、や、や……! やったぁぁ!!」

「……っ! やりました……!」

 

「にゃー!」

「おめでとー!!ございます!!」

 

 中庭に面した外廊下には、「冬季休暇前試験 通過者一覧」と題した紙が貼り付けられていた。

 

 その中には、当然私と側近達と、何名かの後期加入者。

 そしてローリエ様と、……不安をずっと抱えていたレティシア様の名前が載っていたのである!

 

 その頑張りをずっと見てきた私や側近たち、そしてケモっ子は盛大に歓声を上げた。

 

「行くぞっ!勝利の遠吠え!」

 

 フレッジ様がいつになく興奮した様子で天を仰ぎ、ぐっと両手を握って、オーン……!と遠吠えをした。

 それに続いて、わうわう、あおーん!おーん!と遠吠えを始める金狼達。

 校舎のそこかしこからもチラホラと遠吠えが返ってきた。先輩方かな?

 

 それに対抗しようとしたイヴァン様と黒猫達だったが、そもそも大きな鳴き声を出す種族じゃなかったのでへんてこな声を各々上げて「なんか違う……!」という顔をしていた。……可愛いかよ??

 

「ありがとうございますぅ!」

「……嬉しいです」

 

 てれっと照れて花のように笑ったレティシア様、そしてこの派手なノリが照れくさかったらしいローリエ様が真っ赤になって照れ照れしながらそう言うと、みんなほっこりした。

 

 ……さて、そんな平和な今であるが、決闘終了直後は凄まじかった。

 

 まず、魔力を暴走させた皇子。

 

 なんだかんだ言って複雑な気持ちを抱かされた彼は、突然現れた「側近」を名乗る隠密のような男二人に気絶したまま回収されていった。

 オルテンシア様が止めるのも聞かず、「皇族にふさわしい療養所にお連れする」と言ったきり、言葉を発さずに皇子もろとも消えてしまった。それをどうすることもできずに見送ったのだ。

 ……「皇族にふさわしい療養所」が、果たしてどう言った意味の場所なのか。

 それはまだ分からないが、あまり良い結果には繋がらない気がして。

 私はなんとも言えず、不安な気持ちになった。

 

 そしてもう一つの大きな不安の種であり、今回の騒動に大きな影響を与えた存在である算術学のユリエラ先生は、いつの間にか姿を消していた。

 

 しかし……その消え方は、あまりに不自然で。

 

 先生の私室にもなっている算術学の準備室は、荒らされた形跡もなく、ただ飲みかけの温かい紅茶が湯気を立て……。

 先生自身のアサメイや外套は部屋に置かれたまま、先生だけがぽっかりといなくなっていたという。

 その異様な光景から、誘拐や殺害など事件を疑ってこれから捜査が行われるそうだけど……私はあまり結果が出ないんじゃないかとうっすら思っていた。

 

 そして、ガブリエラと薔薇の会。

 

 お神輿にしていた皇子のピンチに尻尾を巻いて逃げ出した奴らは、嵐が治まったあとでちょろちょろと戻ってきて、こう叫んだ。

 

「皇子の魔力を吸い取り、暴走を治めるための魔石を取りに行っていたのよ!!」

 

 ……もはや、ああそうかい。という感想しか出てこない。

 まぁ、既に水面下で違和感を感じていた皇子が戻ってきた時、その言い分にどれだけ耳を貸すかは分からないが……。

 

 そんな不穏すぎる案件の数々に不安を覚えながらも、私は集まった黄金の夜明け団の面々の前で背筋を伸ばし、胸を張った。

 

 混迷を極めた敵対者達について、情報収集はこれまで以上に行うつもりだ。


 ……今の私には、背負っているものが沢山ある。

 

「アリス様。全員集まりました」

「ありがとうございます、ヴィルヘルム」

 

 しかし私が頭を働かせ、第一に力を注ぐのは、目の前にいる彼らだ。

 

「えっと、自由研究について、だっけ?」

「じゆーけんきゅーってなに??」

「自由研究よ、フルニル。お休みの間に好きなことを沢山勉強するんだって」

「ふぁ……。好きなこと……?」

「じゃあかっこいい遠吠えの研究しよー!あおーん!!」

「おいやめ、あ、あおーん!!」

「おいやめ……あ、あ」

 

 そんなわちゃわちゃした喧騒の中で、私は笑顔で大きな声を出した。

 

「それでは、この冬の自由研究の統一テーマを発表します。テーマに関連するものならなんでも大丈夫、思いつくなにかしらの研究をしてみてください。……これは来期からの研究活動の、大テーマでもあります」


 

「て、てーま」

「それは……?」

「おいしい……?!」


 

 ごくりと息を飲んだ彼らに、私は高らかに言い放つ。


 

「空を飛ぶ、です!!」


 

……にわかに騒然とした青空のもと。



私は、にんまりと笑ったのだった。



 

ひとまず第三章、終了です!


たくさんのメッセージを、本当にありがとうございます……!

早めに第四部を始めますので、今しばらくお待ちくださいませ。


そしてそして、活動報告にて詳しく書いておりますが、書籍化が決まりました!

KADOKAWA/エンターブレイン様から2018年9月29日に発売予定です。

製品版には作者の「好き」をより一層ぎゅむぎゅむと詰め込んでおりますので、是非お手に取って下さいませ~!

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