119 冬季休暇の予定
冬季休暇前試験が終わって、少し後。
皇子とか、ユリエラ先生とか、ガブリエラとかその他諸々気がかりはあれど、ひとまず事態は沈静化し。
越冬式……前世で言うところの終業式が開かれた。
冬の厳しい時期を、帰省や穏やかな年越しに当てるための冬季休暇。その区切りとして「無事に越冬出来ますように」という意味を込めて行われる式は、このローヴァインだけでなく、民間でもあちこちで開かれているらしい。
いつも通り型破りな挨拶をしたオルテンシア様に面食らいつつ越冬式が終わり、大広間から解放された私達は、主に夜明け団メンツで集まって別れの挨拶を交わしていた。
「冬季休暇の間は、アリス様に撫でられ……じゃなかった、お会いできないんですよね……」
くすん、と涙目なのはイヴァン様だ。
他の黒猫や金狼達も、ふにゅんと耳を垂れさせている。
その愛らしい姿に全員まとめて拉致したい衝動に駆られつつも、なんとか抑えて声をかけた。
「冬なんてあっという間ですよ、イヴァン様。お土産もいっぱい選んできますから、ね?」
「うぅ……」
垂れた耳をさりげなく撫でくりまわしつつよしよししてあげると、しっぽがピピーンと立ってきた。どうやら元気を取り戻したらしいが、顔は何故かまだ悲しげだ。
そこへすかさずタックルをかましたのはフルダルとニルファル。
二人に吹っ飛ばされたイヴァン様は「ぐはっ!!」と呻いて仲間の群れに突っ込んで行った。
「ちょ……!?」
「イヴァン様ばっかりずるいの!」
「そうなの!」
そう叫んだ白猫双子が私に向かってにゃごにゃごと擦り寄ってくる。その自由さに触発されたのか、他のケモっ子達も一斉に集まってきて。
いつぞやのいい子いい子スペシャルな日を思い出した。
あぁ……! 至福すぎる。
あまりの愛らしさに思考停止しながらひたすら皆をモフりまくっていると、ユレーナとマチルダ、そしてヨハンの笑いと耳打ちが聞こえた。
「ふふ、アリス様。そちらだけに夢中でいいのですか?」
「んあ……はっ!」
そうだった! と目を見開く。
夜明け団はもう側近とケモっ子だけの集まりではなく、人族の、それも他派閥の子すら集まる集団となっている。
繋がりはまだ少し薄い感じがするが、彼らも私を頼ってきた可愛い子達だ。
見回すと、少し離れたところでそわそわしながらこちらを見ている三人が見えた。
アウルムのマリア様、プラティナのアーサー様、ディアマンテのシン様だ。
「御三方も、お元気で。また新学期にお会いしましょうね」
前に進み出てふんわり笑いながら丁寧に礼をすると、三人とその周囲の子達が安心したように笑った。
皇子の魔力暴走により決闘の勝敗の印象は薄れた。
だが私が強気に攻めたことで、ガブリエラが中心となって撒いた「アリスは根暗卑怯令嬢」の噂は、かなり鳴りを潜めていた。
それもあって、決闘終了後は特に同学年の子に受け入れられた印象があった。
「皆さんもお元気で。また春にお会いしましょう」
そう言って全員と握手やハグを繰り返してしばしのお別れをしてから、わいわいお喋りして寮へ入る。
部屋が近いローリエ様&レティシア様の学友コンビとも喋りながら部屋の付近へ戻ると、側近に先駆け、オーキュラス上屋敷の使用人達が帰省の準備を進めてくれていた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。旦那様と奥方様から“早く会いたい”と言伝されておりますよ」
「……!」
そう笑顔で伝えられて、お父様とお母様の笑顔が浮かんで顔がほころぶ。この冬はオーキュラスの領地とハイメの領地で過ごす予定だから、たっぷり時間を取れるはずだ。
「あ……あの、アリス様」
ローリエ様がそう言ったので振り向くと、やけにモジモジしていた。
「その……。年越しの瞬間、領地の城の近くからとても良い景色が望めるのです。その……あの……。え、と」
「アリス様アリス様、レティシアも行くのです。ご一緒にいかがですか?」
こ、これは。
もしかして、年越しを一緒に過ごさないかという、お誘い……!?
珍しくモジモジし続けるローリエ様とそれをサポートするレティシア様の二人というタッグにノックアウトされた私は、気づけば詳細も聞かずに「行きますうう!!」と即答していた。
……後で側近達から「お気待ちは分かりますけど、予定を確認せず即答はダメですよ!?」と怒られたのは、言うまでもない。




