117 嵐の中の葛藤
「ひ、ぁあ……!」
地面にへたりこみガクガクと震える皇子に向けて、つる草を引っ掴んで半分風に飛ばされるようにしながら近づいていく。
「んんもぉぉ……!落ち着け馬鹿皇子!!」
思わずそう叫ぶと、揺れていた皇子の焦点が少しこちらに向かう。
手の届く範囲に迫ったその体を抱き寄せて、強引に引き寄せる。
「っ、ぁ……」
「落ち着きなさい」
嫌っている私に抱き寄せられたからって落ち着きはしないだろう。でも、それでも引き寄せる。
……なにしろ、試験に持ち込み許可されていたユーダ石を五、六個懐に持っているのでね!
うん、まさかこんな所で役に立つとは思わなかったんだけど……。
「すぐに魔力は吸収されて落ち着くから。少しっ、く、待ちなさいっ」
暴風に巻き込まれた小石や葉が肌を傷つけていく。弱まったり強烈になったりと荒ぶる風に飛ばされないよう、しっかりと皇子を抱き締める。
……憎たらしくて馬鹿で救いようがない皇子の体は、六歳の子供らしく小さく柔らかくて。
どんな手を使われたのか知らないが、盲信していた相手であるガブリエラは皇子の危機に真っ先に逃げ出した。その事実も、私の中の何かを刺激した。
でもこの子は、私にとって大切な人達を害した側の存在で。有力者でありながら考えなしにハイメよりエドムンドに決定的に近づいてしまったアホで。
それでも理性だけなら、優しい言葉をかけるべきだと感じてはいる。きっと情状酌量の余地があるのだろうと。
たとえ敵対していても、何倍も歳の差のある目の前の孤独な子供を、ただ導いてあげるべきなのだと。
でも、いざこういう時になると思うのだ。
前世だって年齢を重ねただけで。アラサーだアラサーだと自負してきたが、私は自分が思っていたよりもとても未熟な人間だったのだ、と。
……私の中のどこかで、意地悪な部分が、救済なんてしなくていいと囁くからだ。まるで裁判官か神様にでもなったようなつもりで。
そんな風に、大切な人達が関わると途端に理性的でなくなってしまうことが……私の未熟さを証明していた。
そんな人間が、偉そうに何を告げるのか。
そんな葛藤から、どう声をかければいいのかも、諭せばいいのか慰めればいいのかもわからないまま……ただ嵐がやむのを待って抱きしめていると。
「にぃ、さん……」
そんな微かな声と共に、腕の中の力がガクンと抜けて。
同時に嵐が、ピタリと止んだのだった。
ここの後書きには、ちょっと作者が心折れかけていた時のなさけなーい後書きが載っていたのですが……
その当時、感想欄でたしか50件近い、怒涛の、しかもめちゃくちゃ熱い応援をいただきまくりまして、メンタル完全回復したというエピソードがございまして、ここはその跡地でございます(笑)
流石にその情けな~いあとがきは消しますが、もし読み返しでここを通りかかった当時の読者様がいましたら、改めて、厚く御礼申し上げます。
真摯な読者さまがいるから、楽しんでくださってる人がいるから、その人たちを楽しませたくて発信してるということを思い出しました。
新しく通りかかった読者様も、なにとぞよろしくお願い致します(´ヮ`*)




