111 学園長のススメ
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「不正……のう?」
ゆらりと動いた学園長が、ピラりと一枚の紙を取り出した。
「のう、ガブリエラ。そなたは随分と、算術のユリエラ先生と仲が良いようじゃのう」
「っ!」
む? 学園長、まさか……。
「何がおっしゃりたいのです、学園長? ユリエラ先生の実家は古くからヴィランデルと交流がある家なのですから、仲が良くて当然ではないですか」
皇子が呆れたように言う。それに対して、ガクガクと頭を振って肯定を示すガブリエラ。
……ん?
「まさかガブリエラが不正を働いたとでも? そんなことは有り得ませんよ。確かに結果には驚きましたが、新貴族の多い高貴なる薔薇の会では、実家の商売の手伝いになる算術は出来る者が多いのです。……そうだったな、ガブリエラ?」
「えっ、え、ええ。ええそうですわ!」
めちゃくちゃキョドるガブリエラだが、その返事を聞いて皇子は安心した顔をした。
……んん??
え、もしや、ガブリエラ独断でやったのか、不正。この反応って……。
その様子をじっと見ていた学園長は、ふむ……と呟いてから、懐に紙をしまい込んだ。
「なっ、なんですの。なんですの学園長。まさかわたくしが不正を働いたとでも仰りたいの?! それなら、この黄金の夜明け団とかいう集まりの方がよっぽど疑わしいですわ!」
ガブリエラが甲高い声を上げ始める。なるほど、痛いところを突かれると相手に同じ容疑をかけて論点をズラそうとするタイプだな。
その言葉を聞いたローリエ様が応戦する。
「私達は、コツコツと頑張っただけ」
その堂々とした姿に一瞬たじろいだガブリエラに代わり、皇子が一歩前に進み出た。
「しかしおかしい。君たちはまだ良いが、獣人の子供があんなに魔術を使えるだなんて聞いたことがないぞ!」
「ふむ……。そこまで言うか。それならば、試してみるか?」
そう言った学園長に、え?と間抜け面をした皇子。
「うむ、それが良い。せっかくじゃし、薔薇の会と夜明け団の決着をつけるためにも三回戦でどうじゃ? 場所はここでよかろう!」
「え?え?」
「まさか、学園長」
そばに来ていたレイ先生が青くなる。
「うむ」
にんまりと笑った学園長の瞳が光る。
「決闘じゃ!」
「え……、えええ?!」
どよめきが広がる。騒ぎを聞きつけて集まってきた人だかりが「決闘だって!」「え、ほんとに!?誰と誰が?」とザワザワしだした。
「ちょちょちょ、学園長。それはまずいですよ! 大体、せっかく引き分けになってモメずに済んでるんですよ?!」
「なにがモメずに済んどるじゃ。しっかりモメとるわ。こういうのは早めにガチンコ勝負して解決するに限るのじゃよ?」
「が、ガチンコ」
「ハッ。学園長、いけませんよ。弱い者いじめをするわけにはいきません。……大体、長いこと幽霊みたいに引きこもっていたアリス様にそんなことできるんでしょうか?」
「っ!」
しゃしゃり出てきたニコラスがそう言うと、私の後ろに控えていたヨハンがキレた。
「……貴様、何も知らないくせに! もう許しておけん!」
「っ! 駄目、ヨハン!」
アサメイを抜きそうになったヨハンの手を掴んで慌てて止める。
すると、ニコラスがちっと舌打ちした。
「お前は引っ込んでいろ、ヨハン。……それとも、また昔みたいに殴られたいか?」
急に目の色を変えてギラギラとヨハンを睨みつけ始めるニコラス。
「もうあんたには喧嘩で負けないさ……。兄さん」
こちらもギラギラとニコラスを睨みつけるヨハン。
……うん。デュカーというファミリーネームが示すところでうっすらとお察しだとは思うが、この二人。
―――兄弟なのだ。




