110 魔術学と結果発表
連続投稿中なので、未読話にご注意くださいませー!
「それでは、始め!」
常に困り眉なフェリエン先生のそんな声とともに、魔術の試験が始まった。
魔術の試験はスーライトお姉様とヴィル兄様による猛烈なスパルタで鍛え上げられた私だ、1年生レベルの問題なら半分寝ていても全問正解である。
夜明け団の子供たちもそんな私の影響を受けて魔術には力を入れているため、かなり成績は上がっていた。
「どうでした?」
「空欄もないですし、八割以下ということはないはず……ですぅ!」
試験後、結果が張り出される中庭に面した外回廊で、状況を確認し合う。
するとレティシア様はぎゅっと拳を握ってそう断言した。
それにおおっ!とぱちぱち拍手をしつつ、そわそわと試験結果を待っている私たちだ。
ちなみに、魔術の実技試験は圧倒的に私たちの勝利だった。
初日にレイ先生が言っていた通り、実技の試験は校庭に一年生全員を集めて行われた。
そこでの周囲の驚きようは胸がすっとしたものだ。
♢
「“かたわらの雪、白い鋼。今ここに形作れ~!”」
ケモっ子の愛らしい声に応じて空気中から集まりだした水分が、キンと鋭い音を立てて10センチほどの塊になると、それだけでディアマンテクラスはざわめいた。
なにしろ夜明け団の団員は、全ての属性の魔術を一通り、ごく小規模ではあるが発動させられる。魔術が苦手な獣人でも二、三属性はなんとか発動させられるようになった。
……逆に言えば、きちんと勉強させれば元々できるのだ。
なぜ教育機関は彼らが「出来ない」ことを大前提として、今まで放置してきたかの方が……大きな疑問である。
続々と風を起こしたり小さな炎を灯したりしている私達の様子を見て、案の定ガブリエラは吠えた。
「先生!! 今すぐにあいつらの不正を止めてください!! 絶対になにか魔道具を持っています、もしくは……」
「ええと、ヴィランデルさん。それがね……」
「にゃー!」
「がおがおー!」
視線の先には、アサメイの先端から指先サイズのちっちゃな炎を吹き出させ、お互いを追いかけ回してきゃっきゃしているケモっ子達。
「普段の授業で見ていたけれど、段々できるようになっていたからおかしくはないのよ。あまりに不思議な光景だったから荷物も見せてもらったんだけれど……なんにも持っていなかったし……」
「は……っ?! なによそれ!?もっとちゃんと調べなさいよ!!」
教師相手にガチなタメ口&命令口調なガブリエラに聞いてるだけで変な汗が出たが、フェリエン先生はほとんどそれを聞いていなかった。
「うふ、うふふ。それにしても……獣人は魔術が極端に苦手だなんて学説は嘘だってことがハッキリわかったわ。それならどんどん教えていけば将来は……うふふふ」
「せ、先生……?」
なにやらスーライトお姉様化しそうなフェリエン先生に、遠くで見ていた私はちょっと引いてしまったのだった。
♢
「それにしても、流石に皇子や一部の高位貴族は実技が出来ていましたね……連日お茶会しかしていないと思っていましたが」
「見栄を重視するものは、パーティーなどで行われる見せものの決闘にも力を入れますからね。一部の魔術は既に親から教わったりしているのでしょう」
「あぁ、なるほど」
シン様とマリア様のそんな話を聞きつつ、ふと私は考え込んだ。
この国の「魔術」に対する複雑怪奇な姿勢は、どこからくるのだろう……と。
お父様やお母様に聞いて、ラーミナ教の教えにより一般市民は魔術の使用を自粛させられており、その余波がどういう訳か貴族にも及んでいるという話は知っていた。
魔術や生活に直結しない勉強にかまけていると、一次産業を疎かにする悪扱いされるというトンデモ理論。……しかしパーティーでは、「国民を守る者としての義務を忘れないために」として、未だに剣舞や決闘が行われる。
形式だけ残るしきたりなんてのは腐るほどあるし、そもそも武力足りうる能力……魔術を完全に放棄するなんてことは、普通の人間ならありえない事だ。だからそれ自体はそれほどおかしいとは思わなかった。
しかし皇子は一通りの魔術を私達と同程度にやってみせたし、ガブリエラ……はまぁ出来てなかったけど、ニコラスやキルシェも同じように出来ていた。ラーミナ教を重んじているはずの彼らがである。
うーん。……ラーミナ教に限りなく近い彼らは、出来ているのである。魔術が。
これって、もしや魔術が出来なくなっている人間は、実は…………。と思ったところで、ドバンと外回廊の扉が開いた。もうその登場で誰が来たのか分かる。
「諸君! 結果発表じゃ!!」
やたらにでかい声を出した学園長と、この三日間の試験監督とスピード採点で若干やつれた先生方が廊下に現れた。
レイ先生なんてハチマキに赤羽根ペンを刺している。競馬場のおっさんか。
「さて……それにしても面白い結果になったの。のう、アリスや」
試験結果を見に行ったレティシア様やローリエ様達と入れ替わるようにして、やたらニコニコした学園長が寄ってきた。
「な、なんですか先生。何の話ですか」
「ふふふ……私が何も知らないと思ったか?」
「うっ」
まぁ思わなかったけどさ。なにしろレイ先生が知っていたんだ、今回の賭けの話は全職員が知っていると見た方がいい。
「先に結果を教えてやろう。魔術学では圧倒的にそなたらが勝っておるが……五大教科全ての平均点は、同点じゃ」
「え……ええ?!」
くそ、絶対に余裕で勝てると思ったのに……!!
意外と薔薇の会の活動内容がテストに影響していたことと、恐らく不正が働かれた算術の影響だ。これじゃ、あの馬鹿皇子とガブリエラ達を殴れたことにはならない。
「あらぁ、学園長。そのお話は本当ですの?」
「ガブリエラ様……」
ちっ。嫌なところで出てきやがった。後ろには薔薇の会もいる。
「ふふ、あはは! あんなに机に齧り付いて、みっともなくガリガリと勉強をしていたというのに……同点ですって皆様! つまり、勉強していなければ……わたくし達に大敗していたのではなくて?」
そう大声で言い放ったガブリエラの声に、薔薇の会が同調して笑い声を上げた。
「是非ともオーキュラスに臣下のキスをして欲しかったんだがな、残念だ。気品をかなぐり捨てて勉強していて……良かったなぁ?」
「く……!」
ニヤニヤとした腹黒皇子に一瞬で顔が赤くなる。テンプレドS野郎は引っ込んでろと蹴っ飛ばしてやりたいが、相手が悪すぎだ。
騒ぎを聞きつけた側近たちや友人が傍に戻ってくる。そして、レティシア様とローリエ様がザッと私の前に出た。
「アリス様、そんな言葉は聞かなくていいですっ。私達、アリス様に感謝してるんですから!」
「そうです……! 頑張るのは楽しいことだって、アリス様と一緒にいて初めて思えたんです……!」
そう言ってくれる二人に、一瞬うるっと来た。
これは勉強を共にしているうちにわかったことなのだが。
レティシア様は実家であまり期待されておらず、寂しい思いを。
逆にローリエ様は期待されすぎて、頑張りすぎて窮屈な思いをしてきたというのを知っていたからだ。
そんな二人の嬉しい言葉にメンタルを回復されるも、すぐさま邪魔が入った。
「何を感動ごっこしているのかしら? どうせ不正な行いをして点を稼いだんでしょう。そうでなければ我ら高貴なる薔薇の会に並べるはずありませんもの」
「なにを……!」
カッと怒りに火がつく。今の言葉は許せない。
不正をしたのはあんたらだろう!と叫びそうになった所で、学園長が口を開いた。
一気に駆け抜けております。
長いスパンで話を考えているので、現時点で不思議に思うことや違和感を覚えることはあるかと思いますが……後々解説や解消回があると思うので、耐えてくださいませm(。>__<。)m
あ、でも明らかにおかしい所はドシドシコメント下さい。多分考えられてない点やすっぽ抜けてる部分は沢山あるのでw
……できれば、豆腐メンタルな作者への優しさと共にソフトな感じで、だと嬉しいです_:(´ロ`」 ∠):_
感想欄が高度な意見に埋め尽くされていて、しっかり読んでくださる皆様の愛とムチに瀕死ですw
そしてそして、第3部終了までコメント返信は遅くなると思います……!すみません!




