表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/50

第34話 便利屋

「――と、いうわけでこれは俺たちが回収させてもらおうと思います。あと、この場所も俺たちの方で管理。そちらでは何もなかったと報告をお願いします」

「それと私に関してだが、こいつのお陰で何者かに狙われている……ということが判明した。故にこのまま国に戻れば他の人たちに迷惑がかかってしまう恐れがあるため1度こちらに残ることにした。お前たちには申し訳ないが私はもうこの世にはいないとお……国知事に報告しておいてくれ」

「ですが……。その真の敵には生存がバレているわけですよね? そうなればベロニア村が危険なのでは?」

「いいや、きっと敵は私が国で活動していることが、上に目を掛けられていることが気に食わないのであって、戻ってくることがない……死んだという体で生きていくことを選んだと知れば落ち着くはずだ。それにレンヤ殿がいれば大丈夫だろうさ」



 あれから俺たちは毒を回収したのち1度洞窟を出てその入口付近で一連の出来事をツムギさんの仲間たちに伝えていた。


 魔道具の中にいる男によれば、他に何か仕掛けがあったり魔族がいたりということはないということではあるものの、ツムギさんはスキルを連発したことと、長時間の洞窟内探索で疲労困憊、ルビーさんと俺も既に予定していた探索時間を過ぎており、村の人たちを心配させないためにも帰還することを選ぶことに。


 ただ、驚いたのはツムギさんが俺たちと一緒にベロニア村でしばらく暮らす、という選択だ。


 理屈は分かるけど、ツムギさんの性格を考えれば『真犯人を取っ捕まえる』とか『国には他にも仲間がいるかもしれん』とか言って早々に戻ると思っていた。


 だけどこの選択……ツムギさんは思ったよりも冷静で、敵をそれだけ厄介な存在と位置付けたようだ。


 魔道具の中にいる男から出きる限り情報を聞き出した結果、俺やルビーさんにはなぜかツムギさんが標的となっている……ってことしか分からなかったけど、ツムギさんにはその原因、黒幕に思い当たる節があるのかもしれない。



「――では私たちは1度国に戻ります。この度のこと、打ち合わせ通り国知事にお伝えさせて頂きます。それと……」



 ツムギさんの仲間たちは強面な顔で互いに顔を見合わせると、全員で頭を下げた。


 あまりに綺麗にそれが揃うもんだからなんだか圧倒されてしまう。



「「ありがとうございました!」」



 そしてその次に大きな声で揃えられた感謝の言葉は清々しくも、こそばゆく俺の心内に届いた。



「いや、そのえっと……」

「うふふ……。素直に喜んでいいと思いますわ。勇者様が得られる最大の報酬、やりがいはこれなんですもの」

「そう、ですね。あはは……そういえば俺、勇者よりも勇者になるんでした」

「うふふ……。シンヤもそうだったけど、いい意味で勇者っぽくないわね」



 そういいながらルビーさんはそっと俺の手に自分の手を絡ませてきた。


 これだけ人が集まっている場所でそういうのは流石に恥ずかしいんだけど……。



「――うむうむぅ……。そのだな、レンヤ殿……これからは私が見張ることも出来るからな。嫌だと思ったらすぐに言うのだぞ。それとだな、その……これのこと、感謝している。あ、洗って返すから心配はしないでくれ」



 今度は反対側の服の袖をツムギさんが引っ張ってきた。


 そしてその腰には俺が貸した上着が巻き付けられていて、恥ずかしい染みが隠されていた。


 立場上その状態のまま外に出るのは難しかったのだろう、なかなかその場から動くことが出来ずにいた俺は何か言うこともなく、一応持ってきていた上着をバサッと投げて渡していたのだ。


 大したことをしたつもりはないのだけど、ツムギさんからすると大きなことだったのだろう、その顔は恥ずかしそうにしているものの、強張っている様子はない。

 というより、大分柔らかくなっている。



「……。ツムギ隊長もしかして……。残ると言う選択は他にも意味があったのですね。いやぁそういえば『私よりも強い男でないと一緒にはなれん』と言って何人もの求婚を断っていましたな――」

「あーっ!! 言うな!! 今はそんな話関係ないであろう!! さ、さっさと国へ報告しに帰るのだ!」



 真っ赤な顔で叫ぶツムギさん。

 それを見て仲間の人たちはニヤニヤとこっちを見ながらそそくさとこの場をあとにした。


 顔はあんなに強面だったけど、中身は気のいい? 男の人たちって感じなのかな?



「悪い人たちではないみたいですね」

「同じ隊に配属されたのは元々冒険者であった者たちがほとんど。だから上っ面は固そうでも内面はあれだ。まぁレンヤ殿が言うように悪い奴らではない。むしろ高貴な身分の奴らの方が取っつきにくくて……。だから……」



 ツムギさんは何かを思い出したように顔を暗くさせて俯いてしまった。


 命を狙われる理由……その背景がなんとなくだがその表情から読み取れたようなそんな気がした。


 だけど俺は何も言わずそっとその頭に手を乗せて、髪が崩れないよう優しく撫でた。



「レンヤ殿?」

「なんかさっきのやり取りを見ていたらツムギさんって見た目よりも妹みたいな可愛さがあるなって思って……すみません、嫌でしたか?」

「……嫌、じゃない」



 ツムギさんの顔から暗さが抜け、その頭は俺の身体に寄りかかった。


 辛いことがあった時、誰か隣にいてくれるだけで気持ちが楽になる。

 その経験は俺にもあって……ま、それと違ってツムギさんは俺なんかどうとも思わないだろうけど――




「――レンヤ様……私もいますよ」




 反対側から俺の顔を覗き込むルビーさん。


 身長は俺とほとんど変わらないのに、わざと頭を低くして見上げてきている。


 これ、撫でろってことかな?



「あの……私みたいな人妻の頭なんて触りたくないですか? 私子供もいるからたまには誰かに甘えたいって……。我が儘だったかしら?」

「そ、そんなわけないです! ……。じゃあ、すみません失礼して……」




 ルビーさんの意地悪すぎる質問を受けてしまったから、俺は大袈裟に否定せざるを得なかった。


 そして俺はツムギさんの時と同じようにぽんっと頭に手を乗せた。



 嬉しそうに猫なで声を漏らすルビーさんと、服の端を掴む力を強くさせるツムギさんと……。



『――いいなぁ。俺も金持ちになってやってみたかったぜ、ハーレムってやつをよ』



 それを羨ましそうに見つめてくる魔道具の中にいる男。


 こいつを通じて情報を見聞きされる可能性……それはちょっとした脅しと、こいつの目的から完全に断てるはず。


 

でも……だからってこんなちゃらんぽらんを連れていくのは中々にしんどい。


 あんまりうるさくされないように基本別部屋にしておこうかな。

 



『っと、それよりもさっさとここから離れようぜ。国に報告が済むまでは洞窟の様子を見に来る奴らが……。もしかしたら既にこの辺りに潜んでいる奴らがさっきの騒動で向かってきてるかも知れねぇからな』

「それもそうだな。お前に言われるのは癪に触るけど」

『お前……。あのさぁ俺にも名前があるわけだからそれで呼んでもらってはくれませんかなぁ? 仲間でしょ? これからはさ』



 こいつ、よく殺そうとした相手に平然と仲間なんて言葉を吐けるよな。


 そういった常識もあの一撃で吹っ飛んだか?



「私を殺そうとしていたのだ、当然仲間とは認めていない。ただし名前を知らないのは不都合だからな。名前と……お前に出きることを教えてみろ」



 俺が否定するよりも早くツムギさんが怒気の籠った声で返答した。


 俺に頭を寄せたまま、股間が濡れたままじゃなければ凄く頼もしいんだけど……。



『はいはい。えー、俺はディン。研究家で電波や磁力を操つるスキル持ち。そんでもって……この魔道具を介することで、触れた対象者の魔力を電波スキャン。いろんな情報をこの画面に映し出すことが出きる。例えば記憶の中にあるマップの具現化とか……。イメージした武器や防具の設計図と作り方なんかも……こうして簡単に映し出せるってわけ。それと道具の収納とかも出来たり……どう? 凄くない俺?』 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ