第33話 爆発の跡痕後
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研師【覚醒】LV2
□対象物:魔石炭【マイナス】(S級、不純物除去済み)
□効果時間:スキル対象者が死亡するまで。(現距離において)
□効果:磁力強化(S+級)、傷防止、密着速度強化(S+級)、硬度強化(S+級)、全耐性(S級)、磁力持続(C-級)
□研段階:2
□情報開示段階(効果を発揮できる項目の開示):2
□確認可能ランク:SSS+(最大ランクではない)
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研ぎ終わった後の魔石炭のステータスが眼前に映し出されると、俺はヴァイパーに申し訳なさそうな視線を送って魔石炭を手放した。
というか、こいつの引き寄せられる力が強くなりすぎて、このまま持っていたら手……というか腕を肩から持ってかれるんじゃないか、と思ったから。
――びゅっ……。
風を切る音と一筋の光が遅れて俺の五感を刺激する。
そうそれはそれだけ速すぎるということで……。
「二人とも! 伏せてっ!!」
「え?」
「ツムギさん! いいから伏せなさい!」
仲間でさえ危険だということ。
俺が注意を促すよりも早くそのことを察してくれたのか、ルビーさんはスキルを連発するツムギさんの元にすでに近寄っていて、そのまま頭を掴んで地面に押し付けた。
「ふが、が……ちょ、ここも結構熱――」
そしてそれを受け入れつつも、ツムギさんは地面に伝わった熱さで顔を上げた。
その時……。
――バンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
短く、だけども強烈な破裂音が洞窟内に木霊した。
引き寄せられた魔石炭が着弾したことで衝撃波が押し寄せて、俺はその勢いに負けて尻餅をつく。
「いや……本当にごめん」
さらに目を開けているのがやっと、といったそれは周りにいたストーンバイトやストーンパイソンを蹴散らし粉々にした挙句ヴァイパーを肉片に変えてしまっていた。
壁や床は血で真っ赤に染まり……戦っていた跡というよりは凄惨な殺害現場といった言葉のほうが似合う。
想像を超える威力。俺は咄嗟に謝りはしたものの、罪悪感を感じるよりも先に驚きを感じてしまっていた。
「あ、ははは……。さ、流石レンヤ様ですわ……。熱さも石化の毒もなにもかも吹っ飛ばしてしまうなんて……」
地面に伏せた状態でやや顔を引き攣らせるルビーさん。
その身体は血で赤く染まっていて、せっかくの洋服が台無し。でも、そんなことに当の本人は気にしていない様子。
「う、む……。うむうむむむぅぅうぅ……。……。……。あっ! ちょっ、これまずい……」
そして血で真っ赤に染まった顔を唸りながら擦っていたツムギさんは何とかその場に座り、尻をつけると一瞬惚けた顔を見せたかよ思えば……急に汗を拭きださせ始め、開いていた脚をすかさず閉じて股間を両手で隠すように覆った。
血の赤でよくわからなくなっているけど、あそこだけ水が溜まっているような……。うん、これは気づいてないフリをしよう。
「……。とにかくこれで一件落着かな。ツムギさんの仲間も元に戻ったと思うし。でも……俺、人を殺したのか――」
「いいえ。あれは獣人種ではありましたけどどこかいびつでした。それにモンスターの意識と人の意識の二つを持っていて……その魔力の色は魔族のそれとほとんど同じでしたから多分人の意識もすでに魔族となっていたはずです。だからそんな罪悪感をレンヤ様は感じなくてもいいんです」
「ルビーさん……」
プルプルと自分の手が震えていることに気づきようやく自分のしたことを実感していると、いつの間にか立ち上がっていたルビーさんが俺の元にゆっくりと歩み寄ってきていた。
そしてその両手はそっと俺の手を覆って、優しく握られる。
「勇者様としてのお勤めご苦労様です。これでまた人が救われましたよ」
「……あ、はは。そうですね。ありがとうございます。それと、ルビーさんもお疲れ様です。といっても俺たちの元々の仕事はこれじゃないんですけどね」
「あっ! そうでした! 毒の採取……それをしに来たんでした!」
自分の手のひらの上にぽんっと握り溢しを落とすルビーさん。
でもその毒を持つストーンバイトやストーンパイソンって……もういないよな?
「はぁ……。こうなったら今からでも別の洞窟に行くしかありませんね。ルビーさんもうちょっとだけお付き合いを――」
『――いいや。その毒についても興味があったから……多分机の引き出しに数瓶しまってあると思うぞ。結構面倒な上、それの価値は結局戦闘でしか見出せなかった……と思うけどよ』
「え!? ほんとうですか!? だったら混入する魔力を清浄化して、毒としてではなくて凝固させる薬として用いてあげれば……ってこの男の声は」
ルビーさんとの会話に自然と割り込む男の声。
音が籠っていて、音量もこのくらいだと少し聞きにくいけど……確かに、あの男の声。俺が殺したはずの男の声だ。
「そんな!? 私のレベルですら魔力は見えない上に気配だってなにも感じ取れません!! レンヤ様、まだ強敵は残っているとみたほうがよさそうですしここは……ここは私がすべてを解放してこの洞窟ごと――」
『ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ、待ってくれよ! こっちは丸腰! もう攻撃を仕掛けることもあんたたちに触れることだってできないっての! その証拠にほら! さっきまで隙だらけだったあんたたちに攻撃は仕掛けてねえだろ!』
確かに攻撃を仕掛けるのであれば少し前に不意打ちをするのが最善だった。
この男が言ってることは正しいのだろう。でも今の戦いのあとでそんな風に話しかけられてもそんな簡単に心を許せるわけがない。
「というかおまえどこから声出してるんだよ」
辺りを見回してもそれらしい男は見つけられない。
そもそも、ヴァイパーは間違いなく破裂した。
男がその辺にいるだなんて考えられない。
『ああ、それならここだよ。ここ。あーそっちじゃねくてこっち。机のほうにいるから一回こっちにこい』
必死にごしごしとハンカチでズボンを拭いているツムギさんのその奥を見つめていた視線を机のあるほうに戻した。
でも男の姿はない。
だから不思議に思った俺とルビーさんは顔を合わせて首を傾げつつも机の元まで歩いていく。
すると……。
――ぱっ。
俺がボタンを押して無効化していたはずの魔道具に明かりが灯った。
ぱっと光ったそれには白い空間が映り、それ以外には何もないように見えるが……まさか。
『――よっ。まさかあの状態になっていた俺を倒しちまうとは思わなかったぜ。お前たちみたいな存在がくるってわかってたなら魔石炭を独り占めなんて考えもしなかったのによ。あー、あの時の俺は浅はかだった……。って、やっぱし記憶が欠如してやがる。その時の光景が……。どうしてここにこれたのか……。全部吹っ飛んじまった』
四角い形の魔道具、そのほとんどを占める明かりの灯った面の端から髪の長い男が現れた。
そして魔道具の中、その画面の中で男は頭を抱えて苦しそうにして見せる。
「考えにくいことだけどまさかさっきの一撃で意識が、その情報がこの魔道具に吸われたのか?」
『いいや、正確には俺からこの中に逃げ込んだんだよ。俺のスキル、電波操作を利用してな。いやぁ、まさか糞の役にも立たねえと思っていたスキルが俺の命を繋ぐなんて思いもしなかったぜ』
そう言いながら男は画面の中央で座って俺たちを見る。
「ルビーさん、これどうしましょうか? 万が一のこともありますし、壊します?」
「うーん、そうですねぇ……。それが賢明だと思います」
『お、おいおいおいおいおい! それはないだろ! 俺は便利だぜ! この魔道具を利用していろんなことを教えてやれ――』
――ジ、ジジ……。
突如画面に黒い線が。それに変な音も……。
これちょっとまずくない?
『やば! 損傷が……。欠けたことでこの力を維持するのが難しい! お、お願いします! 助けてください! お稼ぐも何もない環境になっちまったけど……だらだらこん中で暮らしたいのよ!! 頼む、何でもするから!』




