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アレが自分の手の内から飛び立つ。

本当は放したくはなかったが、アレに似たモノが二匹近づいてきているので、素直に力を緩める。

たべものか、そうでないか判断できない。

以前、アレは似たようなモノを、いや、同じだったか……。

わからないが、逃がしたことがあったので、どう行動するのか見届ける。


アレが棒を持った。

それは以前と同じだ。


だが、相手に違う点がある。

一つは、二匹いるということ。

一つは、攻撃してきているということ。


考える。

そして、結論を、出す。


自分はアレを守る。

だが、狩りはアレの役目だ、手を出しはしない。


駈けるアレの後ろを、静かに付き従う。


二匹の内、幅広の棒を持つ一匹は、何事かを喚いているが意味がわからない。

ただ、害意があるというのはわかる。


アレが棒を突き出す。

喚いていたモノは、左手に付いている円盤でそれを逸らすと、右手に持っている棒でアレに斬りかかる。

だが、避ける。

かなり余裕をもってアレが避けていたし、以前のこともある。

喚いていたモノは脅威に値しないと判断して、もう一匹の、アレによく似たモノの相手をすることにする。


たべはしない。

ただ、アレの狩りを邪魔させないように、自分が引き受けなければならないだろう。


アレは、どことなく誘導しているような動きで、木々の合間をゆらゆらと、棒を交えながら離れていく。

自分は、アレと似たモノと対峙する。

アレと似たモノは、なにか音を発しているが、やはり意味がわからない。


とりあえず、アレに追いつけないよう足を傷つけておこうと思った。

手を、伸ばす。

指の先を硬質化、尖らせて、少し足に穴を開ければ歩けなくなることを知っていた。

貫く――。


……ん?


避けられた。

大きく後退して避けられた。


もう一度。

手を、伸ばす。


……んー。


また、避けられた。

今度は、身体を半身にしてだ。


アレも持っていたような、細長い棒を突き出してくる。

狙いは、頭。

刺さる。

通り抜ける。

固定する。

抜かれる。


おそらく牙や爪に代わる攻撃手段であろう、それを無力化するために、くわえこむが、スルッと引き抜かれてしまう。

細長く、引っ掛かりも少ないので、保持しずらかった。


続いて胸にたいして浅く切りつかれる。

問題ない。

だが、捕えられない。


左胸を突かれる。

もう一度、固定する。

今度は、身体の中にある骨を噛ませる。

少し、勿体無い気もしたが、次のたべものをたべたときに回収すればいい。


そういえば、あの岩を落としたのはどちらなのだろう。

よもや、あの落石と二匹が無関係というわけではあるまい。


……再び、意識しだすと、ムカムカしてくる。

いっそ、目の前にいるモノを食べてしまおうかと思う。

そいすれば、より正確にアレに似ることが出来る。


手を、伸ばす。


逃げられた。

棒を自分の身体に刺したまま、諦めたのだろう、手を離し、次はあの枝を飛ばすモノを持って、さらに距離を取られてしまった。


問題ない。

いや、むしろ好都合か。


アレの邪魔さえされなければ、いい。

たべるのは……まあ、機会があればにしておく。


枝が飛んでくる。

どんどん、飛んでくる。


刺さってくる。

どんどん、刺さってくる。


しかし、自分には効果がないので、黙ってされるがままにしてる。

アレの方へ行こうとない限り、適当に戯れていればいい。


棒を飛ばしているモノは、なんだか焦っているようだ。

無駄に飛ばしてくる。

そして、無くなった。


飛ばそうにも、身につけていた枝が底をついたのだろう。

次はなにをするのかと眺めていると、腰から、短い棒を取り出して構える。

そして逃げる。


……え?


あ、うん。

走ってる場所が場所ならば、妨害しようと思ったが、アレとは逆方向へと駆けていく。

放っておいてもよかったが、進む先を変えてアレへと向かっていってはいけないと追う。


追う。

追う、追う。


自分は、あまり走りが速くない。

そして、棒を奪うために骨を幾つか使ってしまったので、追いつけない。


だが、ここまで追い立てれば問題はないだろう。

アレが向かった先とはかなり離れている。

踵を返し、戻る。


せめて、アレが対峙しているモノくらいはたべたいなと思いながら。

ふと、足が止まる。

無理をして走ったことで、傷ついた骨が本格的に悲鳴を上げ始めた。

体勢を保てなくなったので、残念だが、元の姿に戻る。


骨は、もう邪魔なので身体の外に吐き出す。

元の姿のほうが速く移動できるので、都合がいいといえば都合がいい。


離れたからか、アレの姿は見えない。

すぐさま岩を落とされた場所まで戻り、アレが向かった先へと急ぐ。



――倒れている。

アレが。

傷だらけの、姿で。


思考が、真っ白になる。

思考が、真っ赤になる。

思考が、出来なくなる。


この状況の原因を探す。

喚いていたモノだ。

八つ裂きにしなければならない。

即座にその命を消し去らなければ、自分は自分でなくなってしまうかもしれない。


探す。

探す。

探す。


見つからない。

ただただ、自分の中で焦燥だけが募っていく。


自分は、ピクリともしないアレの頬を一撫でし、その場を去る。

アレは、たべない。

アレを、傷つけたモノをたべてから、静かな場所へ連れて行こうと思う。

あのようなモノに襲われない場所へ。


そのためには、まず排除しなければ。

あの二匹を。


そのためには、まず探し出さなければ。

あの二匹を。


地面を、見る。

血が、滴っている。


跡を、追う。

後を、追う。


なるべく早く、アレの元へと戻れるように。

なるべく早く、アレを傷つけたモノへと繋がるために。

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