死んだ彼氏を生成システムで復元します②
ユグドラシルによって復元されたジョナサンは、とてもリアルだった。表情や仕草、喋り方に違和感はあるものの、噂通りのクオリティだ。ほとんどは不自然なく、かつて一緒に過ごした日々と変わらず、私に接してくれる。
「そうだ、ジョナサン。昔行った、あのお店に行かない?」
「いいね。俺はあそこのグラタンが本当に好物なんだ」
これも昔と変わらない。ユグドラシルは、私が入力した通りに、ジョナサンを復元してくれたのだ。
「ジョナサン、今とても幸せを感じているわ」
「俺も幸せだよ」
微笑んでくれるジョナサン。ユグドラシルのおかげで、私は幸せを取り戻したのだ。一度死んでしまったジョナサンは、職場に復帰できるわけがなく、近所の飲食店で働き、家計は主に私が支えることになったが、それで十分に幸せだった。だけど……。
「どうして僕の言うことが聞けないんだ!」
半年もしないうちに、ジョナサンの感情が荒れる日が多くなった。
「仕事で忙しい日々を送る必要なんてないよ! 僕たちは幸せに暮らしていける!」
ジョナサンは時間を持て余しているせいか、私が仕事から帰らない日が多いと、苛立つようだった。
でも、私が仕事をやめてしまったら、二人の生活を支えられないではないか。
「仕事を放り出すわけにはいかないの!」
しかし、私が反論すると、ジョナサンは目の色を変えた。そして、手を振り上げる。
「いい加減にしてくれ!」
パチンッ、と乾いた音が、私たちの部屋に響く。ジョナサンが私の頬を打った。驚いて固まる私にジョナサンは再び手を振り上げる。
どうして……。かつてのジョナサンは一度だって私に手を出したことがなかったのに。
「貴方は誰なの……?」
彼がジョナサンだとは思えなかった。姿形は同じなのに……別人に思えてしまったのだ。ずっと優しかったのに……。復元方法が間違っていたのだろうか。
いや、もしかしたら、手を上げたのは一度きりの過ちかもしれない。そんな期待もあったが、彼は感情的になると、やはり暴力を振るった。
仕事の帰り道は、一人になれる。このときだけは、私は自分の気持ちに素直になれた。
「失敗した……」
本音が零れる。きっと、復元する際に、入力したプロンプトが間違っていたのだ。あんな復元個体は、ジョナサンじゃない。
やっぱり、ユグドラシルで生成したモノなんて、偽物でしかないのだ。私は頬にできた痣に触れながら思った。
「失敗作は……廃棄しないと」




